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薬剤師の仕事でやりがいを感じる瞬間・辞めようと思う瞬間

薬学教育が6年制になり、6年制で卒業した薬剤師1期生も就職してからしばらく経ちました。中には管理職やマネジメント・経営にかかわるなど、順調にステップアップしている人もいるのではないでしょうか。

 

6年制への移行の時に騒がれていた薬剤師不足も、一時期よりは落ち着いてきています。そのため、これまでの薬剤師不足による売り手市場も一転、薬剤師の資格を持っているだけでは転職活動で苦戦を強いられる時代が来るとも言われています。

そんな中、薬剤師に関する調査を実施しているネグジット総研が2010年に行った「就労意識に関するアンケート調査」では約70%の薬剤師が「転職経験あり」と答え、3回以上の転職経験者が全体の30%にもなっていました。

また転職理由は給与、仕事内容、通勤時間、労働時間などが上位を占めていますが、「自分の経験や能力が発揮できるか」「責任ある仕事ができるか」など、やりがいを求めて転職する薬剤師も全体の約30%いることが同調査からわかっています。

 

そこで、今回は薬剤師という仕事で『やりがいを感じる瞬間』と、その逆で『仕事を辞めたいと思う瞬間』について、それぞれの職種ごとにインタビューしてみました。

薬剤師の仕事でやりがいを感じる瞬間はどんなとき?

薬剤師の仕事は決して楽なものではありませんが、他の仕事では味わえないやりがいがたくさんあるはずですし、そのやりがいは職種によっても異なります。

まずは、薬剤師のそれぞれの職種ごとに『やりがいを感じる瞬間』について見ていきましょう。

1. 調剤薬局で働く薬剤師の『やりがいを感じる瞬間』

  • 薬剤師としての調剤スキルを磨ける
  • 病院薬剤師に比べ、比較的ゆとりをもって業務を行える
  • 患者さんの健康に直接関わることができる
  • 患者さんと信頼関係を築くことができる
  • 患者さんからお礼を言われるとき
  • 患者さんの病気が回復したとき
  • 患者さんから色々と質問をされたとき
  • スタッフとの連携がうまくいって、お待たせせずに業務を行えたとき
  • 患者さんの紹介でほかの患者さんが自分の薬局を選んでくれたとき
  • かかりつけ薬剤師になれたとき
  • スタッフと楽しく働けているとき
  • 店長や経営を任せてもらったとき

調剤薬局に勤務する薬剤師 N子さん(女性・30代後半)がやりがいを感じる瞬間

調剤薬局で働くやりがいは何と言っても“患者さまとコミュニケーションがとれること”です。
内科に隣接している薬局で働いていますが、慢性疾患の患者さまも多く、患者さまと長いお付き合いになることも多くなります。
長い間病状に悩んでいた患者さまが、自分が調剤したお薬でよくなっているのを知ると、薬剤師になってよかったなと思います。
それに、お薬に合わせて食事のアドバイスをさせてもらったり、常備薬のチェックを任せてもらえたりしたときは、患者さまからの信頼を得られていると実感でき、薬剤師として活躍できているような気持ちになります。

 

2. ドラッグストアで働く薬剤師の『やりがいを感じる瞬間』

  • 給料が高いこと
  • 患者さんの症状に合わせ、薬剤師自身の判断でOTC薬を選んであげられる
  • OTC薬の知識が豊富になること
  • 薬に関することを色々と相談してもらえたとき
  • お店の中でも頼りにされていると感じたとき
  • 選んだお薬の説明をキチンと聞いてもらえたとき
  • 面処方でいろんな処方箋を調剤できたとき
  • 患者さんがお店に来てすぐOTC薬の相談に来てくれたとき

ドラッグストアでは、医師が処方したお薬を飲んでいる方が、風邪や頭痛などの症状でOTC薬を購入しに来店された場合、服用中のお薬との飲み合わせなども含めて薬を選ぶことが大切です。

また、症状や服用中のお薬によっては、副作用なども考慮し“売らない”という選択肢を選ぶなど、調剤薬局とは違ったやりがいを見出すことができます。

ドラッグストアに勤務する薬剤師 Y男さん(男性・20代後半)がやりがいを感じる瞬間

調剤併設のドラッグストアで働いています。処方箋を調剤することもありますが、OTC薬を買いに来るお客様も多くいらっしゃいます。OTC薬はたくさんあるので、どれを買えばいいのか悩むお客様は結構多く、相談に乗ることも多いです。
お薬手帳を持ってこられるお客様は少ないので、普段使っているお薬を正確に知るのは難しいのですが、話の中から適切なアドバイスをしたり、おすすめしたOTC薬を「これを使ってみるわ」と買って帰ってもらった時は嬉しくなります。商品の陳列やレジ打ちなどの作業もあり、仕事の幅は広いです。大変さを感じることもありますが、OTC薬について、たくさん学べるのはドラッグストアのいいところだと思います。

 

3. 製薬会社で働く薬剤師の『やりがいを感じる瞬間』

  • 自社の薬で患者さんを救うことができる
  • 薬の最前線で働ける
  • 治験がスムーズに進行できる
  • 創薬に関しては、新薬の開発成功や国から認可が下りたとき
  • MRであれば、医師と信頼関係を築くことができたとき
  • 友人や知人が自社の薬を使っていると知ったとき

製薬会社でMRとして勤務する薬剤師 R治さん(20代後半・男性)がやりがいを感じる瞬間

製薬会社のMRとして働いて4年になります。自社製品にも詳しくなり、新しい薬を広める仕事はとてもやりがいがあります。医師との信頼関係もできてきて、先生が自社の新しい薬を使ってくださると言ってもらった時は嬉しくなりますね。ドラッグストアやスーパーで自社のOTC薬を見つけた時も、「この薬を広めてるのは自分」と思うと、製薬会社で働けていることを誇りに思います。

 

4. 病院薬剤師で働く薬剤師の『やりがいを感じる瞬間』

  • 薬剤師に必要とされる総合的なスキルを磨けること
  • 多岐にわたる薬に触れられること
  • 製剤や注射薬など、幅広い調剤ができること
  • 患者さんや医師と信頼関係を築くことができたとき
  • 医療チームの一員として薬剤師の存在感を発揮できる
  • 自分が提供した情報が治療に役立ったとき
  • カルテを見て患者さんの状態も確認でき、スキルアップにもつながる
  • 患者さんやそのご家族から感謝されたとき

病院薬剤師としての勤務の場合、患者さんのカルテを閲覧でき、患者さんの病状や症状など、多くの情報をもとに薬を出すことができるのが特徴です。処方箋から患者さんの病状を予測するのではなく、カルテを見て、なぜこの患者さんにこの薬が出されているのかを確認できたり、患者さんの症状や体調などもよくわかるので、薬剤師としてのスキルアップにはとてもよい環境です。

病院に勤務する薬剤師 Y美さん(女性・30代後半)がやりがいを感じる瞬間

病院では、外来患者さんの調剤業務だけでなく、院内製剤ができるのは特徴的です。患者さんはもちろん、医師や看護師も近くにいるので連携しやすく、自分が医療チームの一員だと実感できることが多いですね。カンファレンス、勉強会、委員会など、とにかく勉強できる機会がたくさんあります。薬剤師から医師や看護師に新薬の説明をすることもあるので、学んだことも活かせ、とてもやりがいはあります。

 

5. 行政機関で働く薬剤師の『やりがいを感じる瞬間』

  • 法令を遵守し、不正を正すことができる
  • 自分が対応した住民の不安・不満を解消してあげられたとき
  • 国民の健康を守っているという自負
  • 子育てしながら働く環境が整っていることが多いので恵まれていると感じたとき
  • 大学で学んだことやこれまでの知識を活かして問題解決できたとき
  • 地味な仕事だけど社会にとって必要不可欠

保健所に勤務する S雄さん(男性・40代前半)がやりがいを感じる瞬間

保健所の薬事衛生部門で働いています。地域のドラッグストアや調剤薬局への立ち入り検査をしたり、新規の開設許可を出したりする仕事に携わっています。
一般の薬剤師のイメージとは違った仕事内容だと思いますが、地域の方々が安心して薬局・ドラッグストアを利用することができるようにするのが、自分の仕事だと思っています。地域の人たちの安全・安心を守れると思うと、とてもやりがいがあります。

 

職種が違うとやりがいもさまざまですね。ここに挙げたものは一例ですので、他にもその職種ならではのやりがいがあります。

薬剤師の仕事を辞めようかと思う瞬間はどんなとき?

では、逆に薬剤師としてのやりがいを感じられなくなって『仕事を辞めたいと思う瞬間』とはどんなときでしょうか。

こちらも職種別に聞いてきました。

1. 調剤薬局で働く薬剤師の『仕事を辞めたいと思う瞬間』

  • 言われた通りの調剤しかできなかったとき
  • 機械的に調剤だけをやっているとき
  • 患者さんからのクレームを受けたとき
  • 仕事の幅が狭く、人間としても視野が狭くなってしまう
  • 必要以上に薬を処方する医師の在り方に失望したとき
  • 患者さんとのコミュニケーションがうまくできないとき

調剤薬局に勤務する薬剤師 N子さん(女性・30代後半)が仕事を辞めたいと思う瞬間

仕事が忙しいときは辛いなと感じるときは時々ありますが、それ以上に辞めたいと思ってしまうのは、職場の人間関係がらみですね。調剤薬局はスタッフが少なく、一人の雰囲気が悪くなると一気に職場の雰囲気に影響します。それをカバーできるスタッフばかりならいいのですが、ぶつかってしまうスタッフもいて、安心して職場で働けません。近くの薬局を覗くと楽しそうに働いているように見えて「いいな」と思ってしまうこともあります。
調剤薬局の仕事に興味のあるかたは、調剤薬局に転職する薬剤師のための基礎知識のページをご覧ください

2. ドラッグストアで働く薬剤師の『仕事を辞めたいと思う瞬間』

  • 調剤をする機会が少ない
  • レジ打ちや商品の陳列など、薬剤師でなくともできる仕事ばかりしなければならないとき
  • お客さんから「薬が効かない」など、クレームを受けたとき
  • お客様に薬剤師だと思ってもらえなかったとき
  • お店の店長が薬剤師でないとき
  • 疑義紹介などで医師とうまくコミュニケーションが取れなかったとき
  • 長時間勤務や日曜勤務が多いとき

ドラッグストアに勤務する薬剤師 武Fさん(男性・30代前半)が仕事を辞めたいと思う瞬間

調剤併設のドラッグストアで働いていますが、一日の調剤件数は少ないのに、OTC薬品の陳列や品出し、レジ業務などが多いので、いつまでこの仕事を続けたらいいんだろう、このままでは薬剤師としてスキルアップできないんじゃないかと焦りを感じています。それに陳列や品出しは体力的にも楽ではないので、いつも腰痛に悩まされてます。私の場合は体力に限界を感じたときが辞め時だろうと思っています。
ドラッグストア勤務の薬剤師の仕事に興味のある方は、ドラッグストアに転職する薬剤師のための基礎知識のページをご覧ください

3. 製薬会社で働く薬剤師の『仕事を辞めたいと思う瞬間』

  • 創薬担当の場合は開発した薬の認可がおりなかったとき
  • MRはいつでも医師の言いなりにならなければならないとき
  • 待ち時間が多いとき
  • 訪問したら医師の機嫌が悪いとき
  • 治験において薬の効果が思うようにでなかったとき
  • ただの営業職のような扱いをされたとき

製薬会社でMRとして勤務する薬剤師 T之さん(男性・20代後半)が仕事を辞めたいと思う瞬間

自社の薬をいかに先生に処方してもらうかが成績に大きく影響するので、とにかく先生との信頼関係を築くまでは大変です。先生の空き時間を見計らっての訪問になるので、待ち時間も多く、せっかく準備して訪問しても先生に会えない日もよくあります。仕方のないことかもしれませんが、そういう時にMRのつらさを感じます。
企業(メーカー・卸)や治験関連の薬剤師の仕事に興味があるかたは、意外と多い企業薬剤師の職種と、その主な仕事内容についてのページをご覧ください

4. 病院薬剤師で働く薬剤師の『仕事を辞めたいと思う瞬間』

  • 患者さんや医師からの問い合わせに答えられないとき
  • チーム医療で医師や看護師と意見が合わないとき
  • 夜勤や当直もあり家庭との両立が大変
  • 外来調剤がある病院だと調剤薬局と業務内容が変わらない
  • 患者さんからわがままばかり言われたとき
  • 給料が安い

病院で働く薬剤師 K子さん(女性・20代後半)が仕事を辞めたいと思う瞬間

チーム医療の中にいながら、医師や看護師の意見を聞いて調剤することがほとんど。そんな時は病院で働くメリットを生かせていないなと感じます。そして、病院は何と言っても当直がとても大変なんです。新人の頃から当直は当番制で回ってきました。緊急で薬を用意することが多く、幅広い知識がないとすぐに対応できません。迅速な対応ができなくて、医師や看護師に怒られたこともあります。自分のスキルのなさに情けなくなりスキルアップしないとという気持ちはありますが、それ以上に当直がつらくて辞めたいと思うことは多いです。
病院薬剤師の仕事に興味のある方は、病院に転職する薬剤師のための基礎知識のページをご覧ください

5. 行政機関で働く薬剤師の『仕事を辞めたいと思う瞬間』

  • 不正が改善されてなかったとき
  • 自分の意見や提案が採用されなかったとき
  • 力不足で相手の間違いを正せなかったとき
  • 明らかに違反や不正をしているのに立証できなかったとき
  • 給料が安い
  • 薬剤師らしい仕事をする機会が少ない ※配属先による

保健所に勤務する S雄さん(男性・40代前半)が仕事を辞めたいと思う瞬間

地域薬局やドラッグストアの監査や指導が中心の仕事だと、そこで働く人たちの対応が非協力的だったり、煙たがられていると感じた時は、やはりいい気はしないですね。
また、監査の時だけ証拠を隠されたりするのは、やりきれない気持ちになります。「正しい方法で、まっとうな仕事をすればいいのに」と思ってしまいます。
公務員薬剤師など、薬剤師の希少な職種について詳しく知りたい方は、希少求人に転職する薬剤師のための基礎知識のページをご覧ください

 

職種だけでなく、職場によっても薬剤師の役割はさまざまなので、今回ここに紹介した内容は薬剤師の仕事のうち、ほんの一部です。

とはいえ薬剤師という共通点から、やりがいや辞めたい理由も似ているのかと思いきや、職種によって、やりがいや辞めたいと思う理由は実にさまざまでしたね。

薬剤師が仕事を辞めたいと感じたときにすべきこと

仕事にやりがいを感じている間は、仕事に対するやる気もあってよいのですが、辞めたいと感じてしまった時はどうしたらいいのでしょうか。

まずは、意識して視野を広げてみる

そんなときには家族や友人に相談したり、異なる職種や業種で働く人の話を聞いたり、興味のあることを実際に体験してみたりするなどして、自分から意識して視野を広げることが大切です。

薬剤師の仕事は、調剤薬局、病院、ドラッグストアでの調剤や製薬会社のMRだけではなく、食品メーカーや化粧品メーカー、介護の現場などあるので、薬剤師としての経験薬学の知識を磨いていけば、まだまだ活躍の場はあるはずです。

薬剤師が活躍できる場がどんどん広がっていけば、とても面白い業界になると思いませんか。

「転職」という選択肢があることを知っておく

それでも、今の職場がどうしても自分に合っていない、どうしてもやりがいを見い出せず、辞めたいと思うこともあるかもしれません。そんなときは、思い切って転職をするのも選択肢の一つです。

「転職」は薬剤師としての新たな一歩を踏み出すことにもなりますが、いざ踏み出してみると描いていたイメージと違っていた…というケースも少なくありません。

そうならないためにも、転職のプロたちのいる マイナビ薬剤師ファルマスタッフなどの薬剤師向け転職サイトを利用することをオススメします。

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まとめ

そもそも自分の仕事にやりがいを感じなくなってしまうことは、社会人であれば薬剤師でなくともよくあることです。

「辞める」「転職する」ことは、その気になれば、いつでもできます。

もし薬剤師という仕事にやりがいを感じられなくなってしまったら、まずは家族や友人に相談してみたり、異なる職種を体験したりするなどして、自分から意識して視野を広げてみることが大切だと思います。

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