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【最優秀賞】OGP薬局荒川店の取り組みとは -第5回 みんなで選ぶ薬局アワードのプレゼン紹介

今回は「第5回 みんなで選ぶ 薬局アワード ONLINE」で最優秀賞に輝いた、OGP薬局荒川店(東京都) 鈴木怜那さんのプレゼンテーションをご紹介します。

※薬局アワード受賞当時の内容です。お取り組みの最新情報については各薬局へご確認ください

鈴木怜那さん「地域の女性と子どもの健康と未来をサポートしたい!」


地域で困った女性を救えない。そんな事態に私は出会ったんです。対応の難しい祝日に緊急避妊薬の相談を受けました。お医者さんを探すことが、私1人ではできなかったんです。なんとかしてお薬をお渡しすることはできたんですが非常に苦労しました。

私自身こうなる前に緊急避妊薬をスムーズにお渡しできるキットをあらかじめ作っておいたんです。今スライドに写っている写真です。女性ヘルスケアの講座で緊急避妊薬のことを伝えたり準備を万全にしてきたんです。いつでも来い!と思っていました。でも実際は…1人では何もできなかったんです。

何もできない自分が歯がゆく感じました。もし自分が逆の立場だったら不安を感じたに違いありません。私は「これではいけない、これでは地域で困っている女性を救えない。この出来事をきっかけに改めて女性ヘルスケアに力を入れなければならない」。どうやってサポートをしていくかを考えるようになったんです。1人だけで解決していても駄目だ。地域にもっと伝えて、今の現状を変えなくてはならないと思ったんです。

地域の人にもっと届けたいこと。それは自分の体と心が健康でいるために、女性ヘルスケアと性教育、この2つがめちゃくちゃ大事ということ。「緊急避妊薬」という言葉や避妊についての正しい知識を知ってほしい。一刻も早く地域の方、荒川区の方へ情報を届けたい。この2つの情報を届ける場として私にとって最適だったのが薬局です。

薬局でやる理由、それは薬剤師法第一条の中に「公衆衛生の向上」という言葉があります。薬剤師として、病気の予防や健康な体づくりに関わっていかねばならないんです。また、薬局はコンドーム・月経用品・排卵日検査薬・妊娠検査薬を販売することができます。薬剤師も事務の方も女性が多く、安心感があります。

私の薬局では女性ヘルスケア講座、性教育の講座を行っております。ここまでたどり着くのに、本当にめちゃくちゃ苦労しました。

会社が性教育や女性ヘルスケアというものに対して、どのような反応をするかが不安でした。だから、どうしたら伝わるかを考えたんです。私は会社員であって、しかも平社員です。権限もなく、予算も捻出してもらえないかもしれないです。どうしたら会社で進めていけるか。辿り着いたのは性教育や女性ヘルスケアとは全然違う「認知症カフェ」でした。でも、これで事例をつくれば私の思い描く女性ヘルスケアや性教育への道が開けると思ったんです。

時間はかかりましたが、1年後やっと自分たちの手で講座を開くことができました。思春期から老年期までをカバーする、世代別で行う女性ヘルスケア講座と、幼少期から始める性教育講座を行っています。

この中で、性教育講座といえば誰でもできるんですよね。資格もないです。だからこそ、しっかりした情報を与えないと、子どもたちに間違った認識を与えてしまって、多大な影響を与えてしまいます。

性教育といえば性交や性器のことを思い浮かべる方がいるかと思うんですが、それも正解です。ただ、そこだけに特化はしていないんです。性教育には広い意味があります。

自分自身を守るため、相手を傷つけないための手段を知ることなんです。そして人権教育にもつながります。

講座では、プライベートパーツ(水着で隠れる部分)と口は人に見せたり触らせたりしない、自分だけの大切なものだよと伝えたり、防犯意識を高めることで自分の体を守る方法を知っていただきます。

いろいろな声をいただきました。「親子で学べるなんて、願ってもないチャンスでした!」、「照れなく事実を捻じ曲げないで子供に伝えることの大切さを知りました」、「性のことを隠すより、子供が相談しやすい環境をつくるには親子でちゃんと知識をつけることが大切だとわかりました」という参加者の声をいただきました。学校ではなかなか親子で聞くことができないので、薬局という場所が役に立ったんです。

私が考える性教育の項目です。たくさんありますよね。皆さん、性交だけではないっていうことが伝わりましたでしょうか。どうでしょう、皆さん。一つ一つ、説明できますか?…そうなんです。大人自身が知らないことばかりなんです。

子供へ伝えることと同時に、相談できる場所の提供、そして、大人へも伝えていく活動が必要だと感じました。大人にも伝えていく講座の一つである「あらかわ生理部」では、月経・性交・妊娠・避妊・緊急避妊薬・性感染症・性暴力などのところを薬局がサポートしていきます。

性感染症の正しい知識を身に着けてもらうために薬剤師ができること、私が思いついたのはHPVワクチンのことでした。HPVワクチンについて知る機会って、本当にないんです。自分から取りにいかないと出会えない情報なんです。

HPVワクチンっていうのは、子宮頸がん・咽頭がん・陰茎がん・肛門がんを予防するワクチンなんです。その講座の内容は、接種の有無でメリット・デメリットがそれぞれあること、副反応が起こったときに、どういうふうに対応したらいいか。そして、本人の意思を尊重して、保護者はサポートしていただくように伝えました。

この講座を通じて、私の心に残った2人の高校生がいます。注射なんて絶対打ちたくないと思っていた子が、私の発信する情報を聞いて、1年ぐらい悩んでやっと講座を聞きに来てくれたんです。講座を聞いて、接種を自分自身で決めてくれたんです。もう1人は、母親からの勧めで、どのようなワクチンかを知るために聞きに来てくれました。接種をしたのですが、副反応の頭痛がひどくてサポートを行いました。

地域で困っている女性をやっと救えた、そんな実感を得ました。こういった活動が少しずつですが、地域やその外へ広がってきています。

講座をきっかけに、女性の健康に関する地域イベントに呼ばれたり、荒川区で影響のあるブログに掲載されました。HPVワクチンをきっかけに、荒川区の若手区議会議員さんの勉強会で講演したり、衆議院会館で行われた緊急避妊薬の勉強会で、緊急避妊薬のアクセスについて薬局側の意見を伝えさせていただきました。あの悔しい緊急避妊薬の対応から時間はかかりましたが、薬局で高校生のサポートを体験し、このような私の活動につながっていったんです。

そして、今後私が挑戦していきたいところは、この3つです。

まず「女性ヘルスケアの増進」、「思春期のサポート・セーフティネットの構築」。この2つは、地域と一緒に考えていかなければなりません。

この2つにつながる課題、それは緊急避妊薬の問題です。

①価格が高い
②アクセスが悪い
③地域で完結できない

特に思春期の子たちにとっては、値段が高すぎます。オンラインではクレジットカードでないと決済ができないので、オンライン診療ができなくて、めちゃくちゃハードルが高いんです。緊急避妊薬へのアクセスをどうにかしなければならないという使命感が現れたんです。

地域で完結できるような仕組みを作りたい。いや、作ります。この仕組みを作るには、1つの薬局が頑張っていても駄目なんです。

なので、3つめ「全国へ広める」につながります。性教育を薬剤師がやる必要はないかもしれないんですが、薬局という場所が使えるんです。

OGP薬局で地域の方に伝えていくことも、もちろん大切なんですが、それだけでは私の欲張りな気持ちが抑えられません。もっともっと広まってほしいんです。全国に広めて、性教育や女性ヘルスケアを国民の当たり前の知識にするんです。

全国各地の薬局でやってほしい。薬剤師、薬局だけじゃなくて、地域を巻き込んでみんなで取り組んでいきたいです。地域の困った女性を救えない…こんな状況をみんなで変えていきましょう。ぜひうちの薬局に見学に来てください。もちろん男性も大歓迎です。男性の力も必要ですので、よろしくお願いします。ご清聴ありがとうございました。

審査員からのコメント

司会:

鈴木さん、ありがとうございました。それでは、さっそく審査員の方からコメントを頂戴したいと思います。まずは、平井様、よろしくお願いいたします。

兵庫県赤十字血液センター 所長 平井 みどり 氏

平井:

平井です。素晴らしいご発表、どうもありがとうございました。非常に感激いたしました。緊急避妊薬のことって今話題になっていて、ご存じだと思うんですけど、遠見先生。一緒に活動されています? (※ 産婦人科医 遠見才希子先生)

鈴木(怜):

実は、この一番初めのエピソードなんですけれど、遠見先生に緊急避妊薬をオンラインで出していただいたんです。そこにつながるまでが本当に何時間もかかってしまって。すごく不安にさせてしまった、という思いから現状を変えなければと考えるようになりました。

平井:

そういうことだったんですね。でも、遠見先生みたいな方は、今もう極めて少ないじゃないですか。ほとんどいないっていう。だから、まずはそういう産婦人科の先生を増やしていくような方策があったらいいなと思うんですけれども、何かそういうアイデアってあります?

鈴木(怜):

私の体感では、おそらく遠見先生のような考えを持った産婦人科医の先生って若手の方で結構たくさんいらっしゃる印象があるんですよね。そういった方々と、これは我々医療人、薬剤師としても一緒に盛り上げるというとか、活動をしていかないと、なかなか進んでいかない問題なのかなと思います。

やっぱり薬局の役割っていうところで、不安感とか不信感を持たれている先生もいらっしゃるので、こういった薬局がありますよ!ということを、もっとたくさんの方に知っていっていただくのと同時に、これを本当に真似していただいて、全国各地でそういう薬局が地域で1つでもあると全然変わると思うので、本当に学区内で1つ、こういう薬局ができるように頑張って活動していきたいと思います。

平井:

ありがとうございます。やっぱり物事を決める方は、かなりシニアの人が多いので(苦笑)、そういう方々の頭の中には薬局でこういうことをしているっていうのはなかなか入っていないんですよね。だから、やはり先生方の活動をもっと増やして、全国的にこういうことが望まれているし、やっているんだっていうことを産婦人科医の業界に伝えていくことがまず大事で、それから厚労省の検討会とかがありますけれども、そういう所に伝えていくのは大事だなと思いました。ぜひ今後とも頑張ってください。

鈴木(怜):

はい。ありがとうございます!

司会:

平井様、ありがとうございました。もうひと方、岸田様、お願いいたします。

NPO法人がんノート 代表理事 岸田 徹 氏

岸田:

岸田です。本当にすごい良い取り組みだなと思って聞かせていただきました。HPVワクチンについても、今月から厚労省のほうで積極的に推奨していこうというような議論が再開されたこともあって、本当に今、波としてもマッチしているなということを思いました。

また、OGP薬局さんは土・日・祝も営業されているんですよね。

鈴木(怜):

そうなんです(笑)。

岸田:

だから、何かあっても緊急で駆け込んで相談できる、みたいな、そういう仕組みとしても素敵だなということもすごく思いました。そんな中で、ちょっと質問があるんですけれども。

最初、自分がやりたかった、こういう女性のヘルスケアだったり、子どものためにということを、回り道をして認知症カフェを開いた、とおっしゃっていたじゃないですか。なぜそう思ったのか。それから、どれくらいかけてこうした形で開けるようになったのか。

今、発表を聞いている薬局さんでも、ストレートにはいかないかもしれないけれども、回り道をしたらいけるかもしれないので、参考にちょっとお伺いできたらなと思っています。

鈴木(怜):

認知症カフェについては、薬局に届く雑誌でそうしたものがあるということを知ったんですよね。地域でも認知症カフェっていうのが開かれていて、この地域の薬局で認知症カフェをやっている所がないなっていうのが、まずピコンと頭に入っていたというのがあります。

なぜ自分がそんなやる気になったかというと、子どもを産んで育休明けで、やりたいことが何だか定まらなくてモヤモヤして…そこにフォーカスしつつ、女性ヘルスケアのことも独自で学んでいました。

会社というのは、事例があるものだと受け入れてくれることが多かったりとかするので、認知症カフェで健康講座を開いて、パッケージを作って、そちらのほうで実績を作れたらと思いました。実際に認知症については私もすごく興味があって、おじいちゃんとおばあちゃんを元気にしたいという思いもあって、健康講座を開いたときには大反響でよかったんですよね。

「あっ!これはいけるかもしれない」となって、すぐに講座をやろうと計画していたんですけれど、ちょうどコロナ禍となってしまい、1年ぐらい間をあけてから女性ヘルスケア講座は3講座をいきなり3つバンッとやり始めた、というような形です。

岸田:

なるほど。ちなみに、認知症カフェって具体的にどんなものなのかを簡単に紹介していただけますか。質問があったので。

鈴木(怜):

「オレンジカフェ」ともいわれるんですけれども、認知症の方に来てもらうというわけではなくて、認知症を地域に広める場です。「認知症にはこういう症状がありますよ」とか、どうしても認知症を知らなくて高齢者の方に対して誤解を招いてしまうこともあるので、その症状だったりを知っていただいたりとか。あとは、認知症を介護されている方々のほっとするような場所っていうので、お茶をしながら過ごしていただくっていうような感じのカフェです。当時は薬局でお茶もできたので。

岸田:

ありがとうございました。女性のヘルスケアや性教育は大事だと思いますし、がんのことも「がん教育」っていった形でHPVも含め、高校生から中学生や小学生も今後、学校でも授業が入っていくので、ぜひ広めていってほしいなということを思っております。ありがとうございました。

鈴木(怜):

ありがとうございます。

みんなで選ぶ 薬局アワードとは? 】
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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