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【後編】2023年度 薬局アワード最優秀賞―ナカジマ薬局 特別インタビュー

第7回「みんなで選ぶ 薬局アワード」で最優秀賞を受賞した ナカジマ薬局の佐々木剛さんと、薬局支援協会 代表理事の竹中孝行さんの特別インタビュー【後編】です。

薬局DXが進むなか、薬局薬剤師の仕事の存在意義が日々問われています。そんな2024年以降の薬局・薬剤師の未来について、佐々木さんと竹中さんにお話を伺いました。

※薬局アワード当日の様子。写真左は、一般社団法人 埼玉県薬剤師会 副会長 池田和久 氏

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より注目度が上がっている在宅医療。薬剤師が対人業務にシフトするには

竹中:
佐々木さん。唐突ですが、薬局・薬剤師にとって今後目指すべき方向性、重要となってくる取組みはどんなことだと思いますか。

佐々木:
私としては、非常にシンプルなのですが、医療従事者としての自覚を持ち、患者様の健康を守ることに対して真摯に向き合うこと。このような思考を持てる薬剤師であれば、アフターフォローや処方に対する介入・提案等の行動につなげることができるはずと考えます。

竹中:
確かにそうですね。2024年度の診療報酬改定の内容をふまえても、薬剤師には患者様に投薬してお終いではなく、よりかかりつけとしての意識を持ち、副作用のモニタリングを含め服用中のフォローを行なっていくことが求められています。

また、地域における在宅医療の需要が伸びているなかで、薬局は、多職種との連携をとおして、より専門的な知識を必要とされる、医療度の高い対応を行うことが求められてきています。これには、在宅医療を受けられる体制づくり薬剤師の教育もあわせて重要になってきていますよね。

佐々木:
確かに、在宅医療に対する注目度は年々高まってきているように感じますし、今回の改定で一層、注目度が上がったと感じます。

※薬局アワード当日の様子

竹中:
一方で、やはり少子高齢化。患者様は増えていくなかで、働き手は減っているという流れにどう立ち向かっていくかというのが課題に感じます。とくに、服薬フォローや在宅医療に力をいれていくためには、薬剤師が対人業務により時間を割けるような体制が必要となります。また、在宅医療においては、24時間365日体制なども求められてきます。

これらに対応するためには、事務員の補助、設備投資、システム導入などにより対物業務をより効率化すること、業務フローや情報共有の煩雑さをよりスマートにできるように日々頭を捻り出して改善をし続ける必要があると思ってます。

佐々木:
そうですね。それを踏まえると、ここから数年はまだまだDXへの注目度が高くなりますね。オンライン診療も、今後、新興感染症が発生した場合や医療資源の乏しい地域において必須の対応になるはずです。

コロナ禍で急速に発展したオンラインによる医療対応は、駆け足で進めたこともあり、ソフト・ハード面のみならず、制度面でも不十分でした。しかしながら、現在までに浮き彫りとなった問題点は少しずつではありますが、改善されてきていると感じております。

オンライン診療は医療機関の受診率向上につながる可能性も秘めていると考えており、これは国民の健康を守るという観点において非常に重要な意味を持つのではないでしょうか。

竹中:
オンライン対応が必須となる日も遠くないですね。ただ、人間は初めてのことや慣れない事に対して拒否反応を示すケースが少なくないです。

佐々木:
薬局側も同様ですね。仮にオンライン対応が主流となった場合、準備していなかった薬局は職員教育から始めることになります。その準備に追われるうちに事前準備していた薬局に追いつけなくなってしまうということは現実的に起こりうると考えます。

今回の改定における「医療DX推進体制整備加算」の施設基準には、そういったメッセージが含まれていることを理解した上で、先行した準備が必要だと考えております。

竹中:
薬局において、オンライン診療はもちろん、在宅医療にも対応できるよう、薬局の体制づくりや人材の研修などにも力を入れていますね。また、今後、先をみると社会保障費をどのように抑えていくかが大きな課題ですので、そもそも病気にならないよう予防の分野で薬局が活躍できる体制を整えたいと感じています。

私自身では、一般社団法人スマートヘルスケア協会のなかで、その活動を支援しておりますが、検体測定室、心電図測定、子宮頸がんのHPV検査などの予防医療のための取り組みを行っているんですよ。

佐々木:
薬局で、病気を早期発見し、早期治療につなげられる、素晴らしい取り組みですよね。

竹中:
ありがとうございます。しかし、自治体との協働はまだまだでして…。ナカジマ薬局さんの「地域見守り活動」のように自治体と協働していくには、どんなことに注意して進めていけばよいでしょうか。

佐々木:
そうですね…。これは自治体や取り組み内容によって異なるとは思いますが、当薬局の事例で言いますと、職員や自治体に、その活動自体の意義と実務的な流れを知ってもらうことがまず重要だと考えております。どういった基準で、どのような人に対して声掛けを行うべきか理解をしないことには、適切な説明を行えず、本来対象とするべき人の取りこぼしが発生してしまいますので。

竹中:
活動に対する理解が得られず、お断りされてしまうケースや取りこぼされたしまった人が最終的に不幸な結果になってしまっては、確かに意味がありませんよね。

佐々木:
その通りです。この活動は当該自治体に住まう人に安心と幸せを与える活動であるという前提を理解した上で、適切な声掛けを行い、意味のある見守り活動を継続できるよう自社職員や自治体をサポートする必要があるんです。

薬局・薬剤師の創意工夫や自治体と協働する際に重要なこと

竹中:
いきなり自治体と協働しようとすると、なかなか難しいこともありますよね。

新たな薬局の価値創造のためには、勤務薬剤師や薬局経営者は、まず、現状を知ることが大切なのかなと思います。診療報酬制度の仕組みもそうですし、今後の薬局の方向性を行政がどのように考えているかなど知ることで、自分たちに今何が求められているのか、ということが分かってきます

また、先駆的な取り組みをされている薬剤師や経営者と会って、実際に話を聞いてみることも大切です。これなら自分たちもできそう、こういう薬局を目指したいなど新たな目標像がみえてきます。

佐々木さんは、新たな薬局の価値創造のためには、どんなことから取り組んだらよいと思いますか。

佐々木:
私は、医療の主役は患者様であることを念頭に置いた上で、患者様の視点・思考を理解することが肝要だと考えてます。患者様目線に立たない医療を提供したところで、それは独り相撲になってしまう可能性があるからです。

患者様の立場に自身を置き換え、どのような態度で、どのような話をして、どのように共感して欲しいのだろうか、といった思考を巡らせ、実践することで本当の意味のサービスを提供することにつながると考えます。

※薬局アワード当日の様子

竹中:
なるほど。前回のお話で、薬の説明を行う際にも、相手がどういった点に疑問を持っているか、どう話したら分かりやすいかを考えて対応されている、と仰っていましたね。とても一貫されてます。

薬局の創意工夫に挑戦する際の心構えについてはどうでしょう。私は、まずは真似から始めてみるでもいいと思います。ゼロからイチを始めるのは大変ですので、すでにある好事例をそのまま横展開して自薬局で行ってみる。そこからご自身の地域に合うような形で進化させていく、というイメージを持つと始めやすいのではないかと思います。

今までの薬局アワードの受賞者をみていると、行動までのスピードがはやいことと、PDCAをまわすのがはやい、2つの特徴があるように思います。とくにPDCA、やってみて、新たな課題をみつけてさらにやってみる、この繰り返しによってとても素晴らしい取り組みに発展しているイメージです。

重要なこととしては、ひとつの取り組みもやっていくなかで、より良いものに進化していく可能性があることを念頭において、最初のスタートをいちはやく切ることに感じます。

佐々木:
まずは真似から始めてみて最初のスタートをいちはやく切ることというのは、大事なことかもしれません。

私から、薬局の創意工夫に挑戦する際の心構えとして、とくに薬局経営者の方や管理職の方にお伝えしておきたいことは、否定から入らないことではないでしょうか。せっかく想像したアイデアに対して否定から入ってしまうと、提案者の意欲を著しく削いでしまいます。まずは提案内容の優れた点を探した上で、その後に問題提起を行うという流れが、意外と重要と考えてます。

挑戦するという前提にもかかわらず、後ろ向きになってしまうと挑戦するという気概が消えてしまうかもしれません。重要なのは、決して、後ろ向きにならないことです。挑戦すると決めたのであれば周囲の人とひたすら前向きに歩き続けるくらいの気持ちでいるほうが良いのだと思います。みんなで歩けば少しくらいのことで後ろ向きになることもないはずです。

竹中:
確かに、薬局はもちろん、関係者を含めて力を合わせて前向きに取り組むことができれば、問題解決も短期間で実現できそうですね。

おわりに

※薬局アワード当日の様子

竹中:
今年で8回目を迎えるみんなで選ぶ薬局アワード。毎年、想像を超えるような薬局の取り組みに刺激をもらっています。どの薬局の発表も大変素晴らしいもので、私自身もこんな薬局を目指したいなど、目標像が更新されていくのを感じます。

佐々木さん。最後に、薬局・薬剤師の方々へ応援メッセージをお願いできますか。

佐々木:
昨今、薬剤師が活躍するフィールドは大きな広がりを見せており、その注目度も上昇しております。そんな今だからこそ、皆様がその職能を存分に発揮し、薬剤師という職種をアピールしてください。皆様の活動一つ一つが薬剤師の価値を高めます。そして、より多くの人の健康を守り、より多くの人に必要とされる薬剤師を目指してください。

ちなみに、私の座右の銘は「為せば成る、為さねばならぬ何事も」でして、否定から入ることが嫌いな性分であるため、難易度が高い目標だったとしても、行動する前に諦めるという事はしません。行動してみないと本当に難しいのか判断できないですし、行動へ移し、それでも難しいなら、そこから別な手法を検討すればよいという考えのもと、日々業務を行っているからです。

引き続き研鑽を積み重ね、私自身も規範となれる薬剤師を目指して精進してまいります。

竹中:
素晴らしい応援メッセージをありがとうございます。ところで、今更ですが、今回の薬局アワードでは、佐々木さんはどの薬局の発表が印象に残っていますか?

佐々木:
ほかの薬局の取り組みを聞いたときは、正直、予選会を含めて発表されている薬局の取り組みは甲乙つけがたく、いずれも素晴らしい取り組みであると感じておりました。よく考えれば当たり前の話で、自社の取り組みをこういった場にて自主的に発表する薬局の取り組みに悪いものなんてあるはずがないのですが…。

そのようななかでも、とくに目を引いたのはモリ薬局さんの外国人対応でしたね。発表を聞いた後に調べたのですが、北海道においても在日外国人は非常に多いことが分かりました。

そして、モリ薬局様の活動において救われている外国人の方々が多くいることが印象的で、こういった素晴らしい活動を北海道でも継続できたらと考えさせられる発表でした。

竹中:
ありがとうございます! 薬剤師の皆さんにも、このように、ご自身の目指したい薬剤師像、薬局像と出会いに薬局アワードに参加していただきたいですね。

また、素晴らしい取り組みをされている薬剤師の皆さん、ぜひ薬局のエントリーをお待ちしております。

佐々木さん。ありがとうございました!

<プロフィール>
佐々木剛 ささき・たかし ナカジマ薬局、薬剤師。1982年生まれ、北海道函館市出身、北海道医療大学薬学部卒。卒業後は北海道函館市にある函館脳神経外科病院へ就職後、北海道札幌市へ移住し、小笠原クリニック札幌病院(現:真駒内札幌病院)の薬局長を経て、現在のナカジマ薬局へ勤務となる。ナカジマ薬局では在宅専門薬局の薬剤師として勤務し、現在は在宅部門の統括を行っている。
竹中孝行 たけなか・たかゆき 株式会社バンブー 代表取締役、一般社団法人薬局支援協会 代表理事、薬剤師。1984年生まれ、静岡県出身。共立薬科大学卒。外資系製薬会社に勤務後、調剤薬局勤務を経て独立。薬局事業、介護事業、エステなどの美容事業、コラム執筆・監修などのメディア事業などを手がける。

取材/ファーマシストライフ編集部
写真提供/薬局支援協会・ナカジマ薬局

みんなで選ぶ 薬局アワードとは? 】
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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