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2022年度 オーディエンス賞― まいづるゆう薬局に聞く、薬局が地域活動をおこなう上で大切なこと

第6回 みんなで選ぶ薬局アワードでオーディエンス賞を受賞した、京都府のまいづるゆう薬局。『まちへ出て、地域と人と健康を繋げる“ゆう薬局カフェ” ~社会的処方/健康サポートの実践事例としての5年間+α~』というテーマで、地域と人と健康を繋げる薬局カフェの取り組みを紹介していただきました。

そんな、まいづるゆう薬局の魅力に迫るとともに、薬局が地域活動をおこなう上で大切にすべきことは何か、プレゼンターの船戸一晴さんにお話を伺いました。

船戸一晴さんのプロフィール
ふなと・かずはる ゆう薬局グループ 株式会社ゆうホールディングス取締役、ラジオパーソナリティ、DJ。京丹後市網野町生まれ(43歳)。熊本大学薬学部卒(2002年)。新卒でゆう薬局グループへ入社し、薬局薬剤師として現在20年。京丹後市での新店舗開局に併せて2008年に京都北部地域へUターン帰郷。2010年からFMたんごへ参加し、現在はFMたんご/FMまいづる2局で番組を担当。DJとしてはライブハウスやクラブの他、地域イベントなどで音響+DJプレイをおこなっている。音楽・映画・本・ラジオ好き。

 

薬局アワードについて

——オーディエンス賞の受賞おめでとうございます。

船戸:

ありがとうございます。業務時間内にスタッフがカフェでの活動をいきいきとおこなう様子、介護経験された一般の方や小学生が教える側になるなど、地域共生社会と社会的処方に繋がる取り組みを実践している様子が、一般の方々にしっかりと伝えられたことが評価の上で大きなポイントとなったのではないかなと感じています。

——「地域共生社会」「社会的処方」というキーワードは、一般の方々にとっては聞き慣れないものだったと思いますが、とてもわかりやすくまとめられていましたよね。当日のプレゼンでは端的に紹介いただきましたが、取り組みが軌道にのるまで苦労もあったのではないでしょうか。

船戸:

振り返ってみれば、総じて理解・協力してもらえることのほうがはるかに多かったように感じますが、社内での調整に時間が掛かってしまうなど、丁寧さが必要な場面もありました。

あと取り組み初期ですが、じつは現地で管理栄養士を雇用できていなかったんです。同じ会社内ですが、京都市内の管理栄養士に協力してもらいながらの運営は少々大変でしたね。しかし、半年ほど経って、現在のコアメンバーである管理栄養士スタッフが現地で加わってからは、取り組みが進めやすくなり、質も大きく向上しました。

——取り組みを進めながら、素敵なスタッフとの巡り合わせもあったのですね。
そんななか今回、薬局アワードエントリーから、予選、本選と進み、見事オーディエンス賞を受賞されました。周囲の反応はどうでしたか?

船戸:

そもそもエントリーしたのは、まいづるゆう薬局で中心になって運営している社内スタッフや連携・協力していただいている方々のために、取り組みをもっと多くの方々に知ってもらいたいと考えたからなんです。薬局アワード本選の前日には、ゆう薬局カフェでのミニ講座後に残ってくださった方とスタッフに、事前にプレゼンを聞いてもらいました。参加者の方やスタッフの反応がとても好意的で、前日に力強い応援をいただくことができたと思います。

舞鶴市職員の方々も、まいづるゆう薬局が代表薬局として薬局アワード本選に参加する際、「応援しましょう!」と事前に自治体のSNSで告知をしてくださり、受賞報告のときにも大変喜ばれました

薬局アワードに参加して、これまでゆう薬局カフェに関わってきてくださった方々に出場や受賞を喜んでいただけたのが、私にとっては何より嬉しかったです。

——たくさんの方々の応援があったのですね。地域で力強い信頼関係が築けているからこそだと思います。薬局アワードでオーディエンス賞を受賞し、約3か月が経ちましたが、取り組みの方で何か変化はありましたか?

船戸:

大きな変化はまだ特にありません。

ただ、関わっている方々に「この取り組みは評価される内容なんだ」という肯定的な空気感が生まれているように感じています。また、薬局アワードを見て「見学に行きたいです」と連絡をくれた薬学生さんが複数いらっしゃいました。

そういえば、薬局アワード本選にてプレゼン後の質疑応答で回答したことについて、自分自身の考えが当時から変化した部分があるんです。審査員の方に「今の内容でも100点だと思いますが、これを200点にするには何をしていきたいか、課題などはありますか?」と問われたことなのですが、覚えていらっしゃいますか。

——はい。遭遇設計の広瀬さんが質問されていましたよね。

船戸:

当時は、地域広報の重要性についてをお答えしたのですが、アワード終了後あらためて「今の内容を200点にするに課題」について、自分なりにしばらく考えてみたんです。そして、やはりゆう薬局の地域活動では「共創」をいっそう進めていくことがより大切だと考えました。

そのためには、社会的処方を構成する3要素のひとつ「参加者自身も役割をもって場を共に作る」といった部分を一層増やしていきたいと思っています。

昨年5月、隣町の京丹後市弥栄町(きょうたんごし やさかちょう)で、薬局前のオープンスペースを地域に開放し活用してもらうという、新コンセプトの薬局をオープンしているのですが、そこでいろいろと実践するようにしています。

若年性認知症のカメラマンの方の写真展をおこなったり

キッチンカーで販売してもらったり

地元高校生が作った野菜や加工品を販売してもらったり

船戸:

今後もこうした地域の方々が主体的に「これをやりたい!」を実現するスペースとして、トライアルを重ねていきたいと思っています。

——どれも素敵な企画だと感じます。地域の方々が、やりたいことを主体的に実現できるという薬局スペースは、とても楽しそうですね!

船戸:

ありがとうございます。現時点では、地域の一般の方や他職種の方、行政など連携している方々と協力して、こうした取り組みの継続に重点を置くようにしています。

ゆう薬局について

——あらためまして、まいづるゆう薬局について教えていただけますか。

船戸:

まいづるゆう薬局は1998年に京都府舞鶴市内で開局し、2008年に平野屋商店街という古き良き商店街の近くにある、現在の所在地へ移転しました。薬局の構造としては建坪17坪ほどの、田舎にある一般的な薬局です。

移転当初から近隣医師と連携した診療同行や、地域包括支援センターの事業への協力、一般の方向けの出前講座などをおこなって地域連携のHUBになるような取り組みに努めてきました。

現在は舞鶴市で唯一の健康サポート薬局として地域住民の方々の健康づくり支援をおこなっており、「ゆう薬局カフェ」もその一環の取り組みとして位置付けています。

地域ケア会議が一般的になる前の2013年から「舞鶴在宅ケアスタッフ交流会」という草の根の情報交換会を地域包括支援センターの方々と協働で運営し、そこでの経験やネットワークがゆう薬局カフェの基盤となっています。

——地域連携のHUBになるような取り組みに努めたからこそ、現在の「ゆう薬局カフェ」があるのですね。今後はどのような展開を考えているのでしょうか。

船戸:

舞鶴市のある京都府北部(舞鶴市や京丹後市)は京都中心部からかなりの距離があり、医療資源も限られている地域です。だからこそ、地域に根差した薬局が健康サポートの拠点・HUBのひとつとなることで、地域の方々と繋がり合うことで地域住民のQOL向上に寄与できると考えています。

医療介護福祉の関係機関はもちろんですが、それ以外のインフォーマルサービスも含めて地域資源をしっかり理解し、必要な時に紹介したり相互理解を促進するような取り組みを薬局として担っていきたいです。

インフォーマルサービス…公的機関や専門職による制度にもとづく支援(フォーマルサービス)以外の支援、つまり「制度にもとづかない支援」のことを指します。具体的には、家族、近隣、友人、民生委員、ボランティア、NPO(非営利団体)などによる支援が挙げられ、インフォーマルケアとも呼ばれます。
参考:かながわ福祉サービス振興会用語集(https://rakuraku.or.jp/kaigo/w10/wpDicView.aspx?TERMID=73)より

船戸:

薬局は、薬剤師という医療専門職がいながら、営業時間なら誰でも入って来て相談ができる、地域に開かれた場所です。医療を提供する施設の中で、相談対応におけるアクセス面のハードルが圧倒的に低いからこそ、薬剤師が地域共生社会・社会的処方の考え方を身に付け、地域を知り、繋がり合うことができたならば、大きなポテンシャルを秘めることになると考えます。

また、近い将来に薬局が社会的処方を実践する場のひとつとして認知される可能性も十分にあると思いますので、そのための実践を今後も積み重ねていきたいですね。

社会学的な視点から、ゆう薬局の取り組みを評価していただけるような大学や機関などがあれば、共同研究等をおこなって成果をきちんと世に出せたらという目標を持っています。もし興味のある方などいれば、ぜひご連絡いただけると嬉しいです。

薬剤師として、薬局運営する立場として、大切なこと

——まいづるゆう薬局で、スタッフの働き方や薬局運営で何か工夫していることがあればお聞かせください。

船戸:

ゆう薬局全体では行政区単位で4~6店舗をひとつのブロックとして責任者を配置し、マネジメントをおこなっています。舞鶴ブロックも4店舗で薬剤師・一般職合わせて20名以上の職員が常時おり、ひとつの行政区内なので何かあった時にも相互にフォローしやすい体制を整えています。

店舗ごとでは、薬剤師と非薬剤師の業務をしっかり整理した上で、薬局の在り方と全体の業務を相互に理解してもらうことで協力し合えるよう運営しています。

また、アワードでも発表しましたが、ゆう薬局カフェの運営については、薬剤師・管理栄養士・一般職ともに勤務時間内でおこなってもらうようにしています。このような地域活動はボランティアになりがちですが、ゆう薬局カフェ当日や準備含めて、あくまで業務と位置付けて役割を持ってもらうことで、主体的に取り組んでくれているように感じています。

——業務としてやるなら、スタッフもより主体的に取り組みやすそうですね。
そんな、ゆう薬局で薬剤師として、また薬局運営する立場として、船戸さんご自身が働く上で大切にしているのはどんなことでしょうか。

船戸:

私自身、薬剤師としてずっと大切にしてきたのは「主体性」と「寛容さ」です。

「主体性」は、薬剤師として関わる方々は「自分の患者さんなんだ」という姿勢で、「プロとしてどう思うか」をしっかり提示する姿勢です。

一方で、他者に対して「寛容」であることは、より一層大切だとキャリアを重ねて感じるようになりました。患者さんに対しても連携する方々にも自分自身にも「完璧を求めない」という姿勢を維持しておくことで、寄り添った提案が生まれたり、協働する際にスムーズに事が進んだりする機会が増えたように思います。これは経営・マネジメントする上でも大切にしています。

薬局運営においては「地域の方々と一緒に取り組み、共に作っていく」ことが大切と考えています。連携する医療介護福祉の関連機関や、他職種、地域の方々からも、必要とされないと薬局は成り立ちません。地域の方々から「ありがとう」と言ってもらえるからこそ、働くスタッフも楽しく頑張れるのだと思います。地域活動をおこなう上でも、薬局だけの独りよがりな施策にならないよう、地域の声を聞き、時には一緒に取り組んでいけるような姿勢を心がけています。

——「主体性」と「寛容さ」そして「地域の方々と一緒に取り組み、共に作っていく」という姿勢は非常に大切ですね。あらためて自分も肝に銘じておきたいと思いました。
では、最後に薬剤師・薬局へのメッセージをお願いします。

船戸:

薬剤師の方々は是非、ご自身が働く地域により関心を持っていただけると嬉しいです。地域を知り、地域に出てともに活動することで見える世界の幅が大きく変わります。

何より、薬剤師として地域で働く楽しみが生まれると思っています。活動でアドバイスや支援できそうな事がありましたら、私も可能な限り応援します。必要な際は是非お声がけください。

——船戸さん、ありがとうございました!

ファーマシストライフ編集部
(写真提供:ゆう薬局)

みんなで選ぶ 薬局アワードとは? 】
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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