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【オーディエンス賞】まいづるゆう薬局の取り組みとは -第6回 みんなで選ぶ薬局アワードのプレゼン紹介
今回は「第6回 みんなで選ぶ 薬局アワード」でオーディエンス賞を受賞した、まいづるゆう薬局(京都府) 船戸一晴さんのプレゼンテーションをご紹介します。
まちへ出て、地域と人と健康を繋げる“ゆう薬局カフェ” ~社会的処方/健康サポートの実践事例としての5年間+α~
皆様、それではよろしくお願いいたします。私は、おもに京都で100店の保険薬局を運営している”ゆう薬局グループ”で働いています。本日は、京都府の北部舞鶴地域で2017年の5月から行っている”ゆう薬局カフェ”の活動実績とポイントを紹介させていただきます。
「地域共生社会」、「社会的処方」とは?
まずは、前段として現在進められている社会モデルの変遷をおさらいしておきたいと思います。
厚生労働省は現在、地域包括ケアのさらに発展した社会モデルとして、地域共生社会を目指しています。このポイントは、支える側・支えられる側という一方向の関係ではなく、誰もが支え、支えられる人という考え方がベースになっています。その上で、地域の資源や、人の多様性を活かしながら、人と人、人と社会とが取り組み合う繋がりが生まれやすい環境を整えていくことが地域で求められています。
地域共生社会を目指す中で注目されているキーワードの一つが、社会的処方です。その人に合った薬を処方するように、薬ではなく、地域資源や地域との繋がりを処方することで問題を解決したり、人を元気にするのが社会的処方といわれていて、社会的な孤立を解消する一つの効果的な考え方として注目されています。
地域共生社会と社会的処方。今回この二つの視点を踏まえて発表をお聞きいただけたらと思います。
薬局の紹介
まいづるゆう薬局は、昨年度の処方箋受付回数が、月平均1,644回。広さは17坪ほどのいわゆる一般的な、普通の薬局です。2009年頃からは近隣医師と連携し、高齢者施設の往診同行や、在宅医療に取り組んできました。また、2013年から、舞鶴在宅ケアスタッフ交流会という出入り自由の多職種の交流会を運営し、今でいう地域ケア会議にあたるような取り組みを自主的に行ってきました。このような以前からの積み重ねと連携が、今のゆう薬局カフェのベースになっています。
ゆう薬局カフェの取り組みについて
“ゆう薬局カフェ”は、月に1回、薬局スタッフでカフェ運営をしている企画の名称です。場所は、薬局から120mの距離にあるレンタルキッチン付のコミュニティカフェ FLAT+ さん。ここを毎月第2土曜日の11時~15時まで、ゆう薬局のスタッフで運営し、ランチとドリンクを提供して、13時半からミニ講座を開くといったような企画を、2017年5月から行っています。
取り組みのきっかけはスタッフの一言
カフェ立ち上げのきっかけになったのは、薬剤師1年目のスタッフからの言葉でした。「ここでカフェをやりたいですし、是非一緒にやりましょう」と言われたのが、2016年の6月。当時、舞鶴市内4店舗の現場責任者だった私は、次は地域住民の人たちと繋がり合うような企画ができないかなあ、とぼんやり構想していました。のちにリーダーになる、新卒薬剤師に背中を押されることになり企画がスタートしました。そこから半年以上の準備を重ねて、2017年3月にプレオープン。同年5月にこのメンバー3人を中心にして1回目を実施しました。
ポイントは、勤務時間内の活動であること
ここで、重要なポイントを伝えておきますと、関わるスタッフは、基本勤務時間内でこの活動を行っています。当日朝の仕込み時間から片付けまで全員仕事中に行っていただいています。当たり前のことではありますが、こういった地域活動は、ともするとボランティアベースになりがちです。私自身、勤務薬剤師を長年続けてきた延長線上に今がありますので、ここは社内調整の中で一番こだわったところです。
管理栄養士考案「ランチメニュー」
ゆう薬局カフェのランチメニューは、まいづるゆう薬局に所属する管理栄養士が考案しています。一日の総摂取カロリーを目安に1食600キロカロリー前後に設定。年齢性別などによる差異は、ご飯の量で微調整し、原因を意識しつつ、美味しく摂取カロリーが意識できる仕掛けになっています。観光客や、子連れで散歩していたご家族。習い事のお昼休みなどで、ふらっと入られてランチだけ食べて帰られる方も多く、予約なし、出入り自由だからこそ生まれる開かれた接点を大切にしています。
また、食後に管理栄養士がメニュー説明をして、必要な方には、1品ずつのレシピもお渡ししています。この食を通じたコミュニケーションが、管理栄養士のやりがいになっています。
地域の小学生も講師になれる「ミニ講座」
13時半からのミニ講座では、なるべくゆう薬局以外の方も講師になってもらっています。ここも地域資源が繋がり合い、相談が自然に生まれる場になっています。
これまでミニ講座を実施してきた中で、ゆう薬局スタッフ以外にも多くの職種から合計25名の方が講師になっていただき、協力施設は13件になりました。ちなみに、みなさん謝礼はランチ1食でやっていただいてます。その分、私たちも地域の中で何かあればできる範囲で協力してお返しするという関係性の中で行ってきました。
いくつかミニ講座の例を挙げさせていただきますと、こちらは介護を経験されたご家族さんが講師になって、地域包括の市民ケアマネさんと一緒に介護経験のポイントと制度をシェアしていただいた回です。
また、舞鶴には、アロマハンドケアを学んだお子さんで組織されたボランティア団体があって、がんの化学療法室や、高齢者施設などでハンドマッサージを行う活動をしています。
写真中央の小学生の子も講師です。このときは、がん性疼痛看護認定看護師さんとセットで招いて、実際の活動のレクを行ってもらいました。このように、教える・教えられるという関係性をなるべくフラットにするような設定と進行を心掛けて運営しています。
コロナ禍に入り、“ゆう薬局カフェ”はどう機能していたか
ところが、コロナ禍に入って残念ながら飲食提供が前提の活動は一旦ストップせざるを得ませんでした。この頃には常連さんもいます。体力や活動量が落ちてきたり、不安な気持ちのまま過ごしていることも心配でした。そのため、オンラインを活用しながら講座のみに絞って、7月から再開して場所を開け続けました。
また、ここからは、新型コロナウイルス感染症やワクチンについての正しい知識と、自治体情報を共有する場としても機能していきました。
ワクチン集団接種の開始直前には、会場の流れを動画で共有してもらったり、中間報告では講師に招いてもらったりして、行政担当者や高齢者から労いや感謝の言葉が多くかけられるような場面もありました。
地域の医療情報を住民に提供するだけではなく、そこにかける人と思いを繋ぐような場になれた実感があってとても嬉しい経験でした。
“ゆう薬局カフェ”の取り組みのなかで感じたこと
5年間、ゆう薬局カフェを続けていく中で、まず地域の方々の健康サポートの一旦を担っている実感を得られるようになってきました。カフェで完結せず、常連さんとは薬局とのコミュニケーションもより良いものに変化しています。
関わっていただいている他職種、地域との繋がりと相互理解も一層深くなり、それなら誰々さんに話してみましょうか?といったような社会的処方に近しい機能が自然と生まれています。もちろん、ベースとして大切なのは薬剤師としての専門性と地力と広い視野、そして地域理解が何より重要と。
かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師として重要なことと大きくは変わらないと思っています。
さして大きくない普通の薬局ですが、薬剤師として長年地域に出て多くの方々と一緒に活動することで大きく視野が広がりました。カフェやコミュニティスペース併設の薬局も先進事例で増えてはいますが、そうしたものがなくとも、地域の人たちと地域の資源を使ってやればなんとかなるという姿勢のほうが、全国の多くの薬局で対応できるので変化もダイナミックだと思います。
現在、ゆう薬局カフェと同様の取り組みは、京都の地方都市と、京都のど真ん中の河原町御池の2か所で水平展開されています。思いが共有できる飲食店さんと一緒に活動できれば、他でももっと応用できるんじゃないかなと思っています。
おわりに
薬局、薬剤師のみなさんは、是非広い視野や視点を持って、地域に出て、眠っている宝物のような資源を探してみてください。また、薬剤師の多くは薬局勤務されている方です。薬局経営者の方は是非、地域で勤務薬剤師が活躍できるよう環境づくりとバックアップを一層共にやっていけたらと思っています。
そして、医療を受けられる一般の方々。地域共生社会を目指す中で、皆様の理解と協力が本当に必要です。薬局、薬剤師と地域で身近に繋がっていくことが、ヘルスケアの向上や、生活の安心感にも繋がります。薬局、薬剤師と地域で相互理解を深めて、時には応援や協力をしていただけたらと思います。
ここにいらっしゃる薬剤師の方々、お一人お一人もそうですが、多くの薬剤師が地域で顔が見えて存在することそのものが、地域ヘルスケアの向上に今現在も寄与していると私は確信しています。それを推進する活動を私自身これからも全力で取り組んでいきます。金額についての質問や意見交換など大歓迎ですので、是非気軽に声をかけてください。
以上です。ご清聴ありがとうございました。
審査員のコメント
司会:
ありがとうございました。それでは、審査員の方からコメントを頂戴したいと思います。広瀬様、お願いいたします。
株式会社遭遇設計 代表取締役 / ゲーミフィケーションカオスマップ編集委員 広瀬眞之介 氏
広瀬:
プレゼンありがとうございました。素晴らしいと思いますね。私、仕事として地域のボランティア施設などのコミュニティーマネージャーもしているので、我々みたいにコミュニティーマネージャーの専門家じゃない人たちがこうしたことをやっていらっしゃるというのは本当に素晴らしいと思いました。
もしですね、この100点満点の活動を200点満点にしようと思ったら、どんなことが今課題ですか。もっともっと活躍できると思います。
船戸:
今の課題としては、やはり地域の中で広報的なところがまだまだ不十分なところがあって。実際に届いていない層があるんじゃないかなというのと、まだまだ連携したいけど、そこまで一緒に取り組みができていない先がいくつはあるので、そういったところをどう巻き込むか。
そういう意味でもこの活動の価値をこの薬局アワードで一定評価していただけるというのは、すごいありがたいことだと思ってますので、こういった発信もあんまり積極的に優先順位を上げてやってこなかったんですけど、これからは地域だけじゃなく、世の中全体、全国的にもしっかり発信をして、その価値をもう1回地域に理解してもらうために戻していくっていう取り組みが必要かなと思って、今回も応募させていただきました。貴重なご意見とご理解、ありがとうございます。
広瀬:
是非、頑張ってください。楽しみにしております。
司会:
ありがとうございます。もう一方、流石様、お願いいたします。
株式会社メデュアクト 代表取締役 / 東京薬科大学 薬学部 生化学教室 客員准教授 流石学氏
流石:
株式会社メデュアクトの流石と申します。普段、病院のほうの経営コンサルタントをやっている者です。非常に興味深い取り組みをお聞かせいただきまして、ありがとうございます。
ちょっと持論にもなってしまうんですけども、薬剤師の先生方、薬局の先生方にとって地域との繋がりというのは、投薬カウンター越しではない、それを越えた繋がりがあることが日々大事だと思ってます。その中でこういうカフェを開いての取り組みというのは、非常に距離を縮める上で意義があるものなのかなと思っています。
非常に良かったなと思っているのが、継続できているというのがとても素晴らしいなと思っています。こういう企画ではスポットでやることはあっても、なかなかそれを継続的に行っていくというのは非常に大変だと思いますし、その中でこれをボランティアではなくて業務として取り組んだということは、そこに要因があるんだろうなと思っておりますけども、非常に素晴らしい取り組みだなという風に思っております。
1点教えていただきたいんですけども、先ほどのご質問とも繋がるのですが、今、先生が取り組まれていて、届けたいけど、まだ届いていないと感じる層があるとおっしゃっていましたが、それはどういった層なのでしょう。もしお気づきのところがあればお願いいたします。
船戸:
ざっくりとしたイメージでしかないんですけれども、やはり20代~50代くらいの健康に関して無関心な層が課題と思っています。そこの一定数は、カフェのリーチもある実感は持っているんです。ただ、そこをもう少し広げていって、高齢者の常連の方はもちろん大切なんですけれども、それ以外の方々との接点をもう少し増やしていきたいなと今思っています。
先ほどご指摘いただきました単発的なイベントではなく、続けていきたいっていうのも、そういったところを拾っていきたい狙いもあって。何かイベント的な活動ではなく、予約も無しで、出入り自由で、毎月第2土曜日のこの時間はそこにあるっていうのを大切にしたいなっていうのも、そういう意図があるますので。そこをもう少しこれから頑張っていきたいなと思っています。
流石:
是非、もっともっと横展開していただけたらいいなという風に思います。ありがとうございます。
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あらためまして、オーディエンス賞おめでとうございます!
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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