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府中薬局の取り組みとは -第7回 みんなで選ぶ薬局アワードのプレゼン紹介
今回は「第7回 みんなで選ぶ 薬局アワード」に代表薬局として登壇した、府中薬局(東京都府中市) 谷本真理子さんのプレゼンテーションをご紹介します。
きっかけは道案内、お困り事から地域の健康までサポート!健康HOTステーション
田辺薬品株式会社 府中薬局 販売 兼 管理栄養士の谷本と申します。本日は「きっかけは道案内、お困り事から地域(まち)の健康までサポート!健康HOTステーション」というテーマでお話をさせていただきます。
府中薬局について
はじめに自己紹介をさせていただきます。私、谷本は田辺薬品グループ初採用の管理栄養士として、小学1年生、年少、1歳9ヶ月の3人の子供を育てながら府中薬局で働いています。
府中薬局は東京都多摩地域の府中市にあります。府中市は、東京都のほぼ中央に位置しております。薬局は府中駅前の商業ビルの入り口付近にあります。門前クリニックはなく、買い物客や駅へ向かう人など多くの人が行き交っています。一般的な門前薬局と異なり、調剤だけでなく販売専任スタッフがおり、一般医薬品や雑貨などにも力を入れて販売をしております。
まちの人と薬局との間の「見えない壁」
さて、薬局の皆さん。「まちの人に気軽に相談に来てほしい」と思っていますよね。一方、まちの人も「このサプリメント薬と一緒に飲んでいいの?」「風邪っぽいけど、病院に行くまででもないのかな?」「腰が痛いのはいつものことだけど、ちゃんと見てもらった方がいいの?」など、病院に行くほどではない、ちょっとした悩みを抱えている人は多くいるのに、「処方箋がないのに入っていいの?」「何か買わされてしまうんじゃないの?」など、心理的なハードルがあり、まちの人と薬局との間に、見えない大きな壁を感じているのではないでしょうか。薬局側も、お薬を出す時の会話だけに留まってしまうことが多く、どうしたら気軽にまちの人に来てもらえるだろうという課題を抱えていると思います。それは私たち府中薬局も同じでした。
薬局は健康を与え、元気になってほしいという思いを伝える場所です。地域の人にどんなことでも頼られる薬局でありたい。それは、どの薬局さんも同じ思いを抱いていることでしょう。でも、その入りづらいという「見えない壁」をどうやって壊していきましょうか。
府中薬局は物理的に壁を取り払いました。名付けて「入りづらいなら、入らなくてもいいじゃない!」作戦!!
コミュニティーカウンターでのまち案内。気づいたのは、会話の重要性
スライド右上の写真をご覧ください。
誰でも通れる通路側に向けてコミュニティーカウンターを設置しました。そこには管理栄養士の私がおりまして、健康おやつや健康アイテムなどの話のタネになるものを置き、気軽に相談できるスペースを作りました。しかし、そうは問屋が卸さない。どんどん人が通り過ぎて行き、相談事を聞くというハードルに、またつまずいてしまいました。
そこで次は、相談してもらうためのハードルをどう下げるか。店舗スタッフで話し合いをしている中で、駅前立地の強みを活かして、まち案内をしたらどうかという意見が出たため、マップを作ることにしました。絵が得意なスタッフがいたので、駅周辺の地図を一から手作りしました。ちなみに道はもちろんのこと、描かれている建物や人物、すべてスタッフの描き下ろしです。
この道案内マップを表に出すことで、道を聞かれる回数がぐんと増えました。こちらからもお客様に声を掛け、道案内することも増えました。府中に初めて来た方や高齢の方に感謝されるだけでなく、道案内をきっかけに処方箋をお持ちくださったり、帰り道にお友達と寄ってくれたりと、多くの人が立ち寄ってくれる場所になりました。
コミュニティーカウンターを設置したことで、お店に入らなくても声を掛けてもらえるようになったのです。
さらに、試飲会や測定器を用いたイベントをコミュニティーカウンターで開催。それにより健康を意識していなかった方が参加してくださるようになりました。
体験型のイベントは楽しみながら健康意識することができ、生活習慣を見直すきっかけ作りにもなっています。何気ない会話から、その方の生活の様子や本人が気づいていなかったお困り事を整理することができ、カウンターを設置することで改めて会話をすることの重要性を知ることになりました。
コミュニティカウンター設置による成功事例
コミュニティカウンターで増えた会話でのお困り事が、解決に至ったエピソードを紹介します。口内炎の治りが悪いと話していた方が、歯科衛生士の資格を持ったスタッフにお口の中を見せてくれました。口内炎ではない可能性が高いが、診断できないため、歯科受診を促したところ、後日「歯が割れていて抜歯を使用したよ」と処方箋をお持ちくださいました。待ち時間に歯科衛生士と管理栄養士から術後のケア情報をお伝えし、その後もよく買い物に来てくださるようになりました。
もう一つエピソードをご紹介します。以前から利用されていた方が乳がんを患い、抗がん剤治療を始めたものの、味覚異常・口渇・食欲不振などの副作用に悩まされていました。そこで、各資格を持ったスタッフが一丸となって提案と対応をしたところ、体調の良い時には「昨日は焼肉が食べられたよ」「今日はお気に入りのイタリアンに行ってくるね」など、食事が取れていることを報告に来てくださるようになりました。それからは、状態に合わせたお悩み対応ができるよう、知識や商品選びだけでなく、がん患者さん向けの地域コミュニティや情報誌を案内できるようにし、QOL向上のお手伝いをできるようにしております。
このようにきっかけは道案内でも日常会話や測定会、さらに健康のお悩みや商品相談、そうして会話が広がり、信頼関係が築かれ、薬局だからこその医療の相談事を持ちかけてくださる方が増えました。
いかがでしょうか。「見えない壁」が徐々になくなっていると思いませんか。
まちの人は、人とのつながりを求めていた
では、このカウンターどのように設置に至ったのか。実は薬局の人間だけで考え、作ったわけではありません。もともと調剤の導線を改善するために店舗のリニューアルを行うつもりでした。そこに会社の人の意見だけではなく、まちの人の意見も聞いてみたいと思ったのがきっかけです。
私たちは、まちの人たちや近隣の店舗の方々を呼んで、“みんなで作る「府中薬局」会議”を開催いたしました。なんと、総勢20人ものまちの人が参加して下さいました。
ほかにも薬局に何を求めるか、道行く人にアンケートをとったり、地域の人を交えてディスカッションを複数回行ったりしました。座談会では「気軽に相談できる薬局」「オープンカフェのような薬局」などの私たちの抱えている課題以外にも、「利用者同士がつながれる場所」「学べる薬局」などのコミュニケーションを求めている意見が多く出ました。
私たちが思っている以上に、まちの人は「ひととのつながり」を求めていたのです。
地域だけでなく、学生ともつながる
その座談会には、武蔵野美術大学の学生を呼んでおり、まちの人の意見を踏まえ、どのような薬局を作るべきか、新しい薬局のカタチを提案してもらい、まちの人と一緒に投票を行いました。
その中で「BARのように、ふらっと寄れる場所」という案が選ばれ、通路側にBARにあるようなカウンターを設置し、コミュニティが生まれる薬局を目指しました。ふらっと立ち寄ったカウンターで、何気ない会話から気付いたその人のお困り事を、一緒に解決に向けて考えていく、そんなカウンターを作ったのです。
大学生と地域の人のつながりはこの座談会だけではありません。コミュニケーションカウンターを使った薬学生との協同プロジェクトを行いました。
学生に向けたマーケティング勉強会、現地ヒアリング、ペルソナ作成を行い、薬学生が提案した内容で露店試飲会を開催。3週間の開催期間で、総勢235名の方にご試飲いただき大盛況となりました。試飲により、まちの人から75件の意見を頂けたので、メーカーへのフィードバックを行い、今後の取り組みへの向上を図っています。
まちごと地域全体が健康になる薬局作りを
私たちは薬局が個人に一方的に何かを提供するだけではなく、地域の人と楽しみながら穏やかな毎日を一緒に作っていこうと模索しています。そのために見えない壁を壊して、まちの人からの意見を聞き、そこから生まれた新しい形態のお店づくり、そして薬局から始まる健康づくり、まちの人と作ったお店だからこそ、まちごと地域全体が健康になるお店作りをしたいのです。
まだまだこれからやりたいことがたくさんあります。
例えば、飲食店と薬局、地域のお祭と薬局、他の医療機関との健康イベント、健康スタンプラリーなど、どうでしょう。ワクワクしてきませんか?
人も、まちも、健康に。年齢や環境、身体の状況を超えて、誰もがやりたいことを提案し、実行できる。まちの人が、会話も行動も積極的に発信できる場所として、府中薬局は、地域とつながる「健康HOTステーション」を目指していきます。
「地図」は、誰もが用意できる「ありふれたもの」です。でも、私たちには「地図」の向こうに、未来のまちの健康、まちのしあわせが見えます。皆さんも自分のまちの未来地図を描いてみませんか。多くのまちに、多くの健康としあわせが広がることを心から願っています。
以上で府中薬局の発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。
審査員のコメント
司会:
ありがとうございました。それでは、審査員の方からコメントを頂戴したいと思います。鈴木信行様、お願いいたします。
患医ねっと代表 鈴木 信行氏
鈴木:
トップバッターということで緊張されましたでしょうか。お疲れ様でした。
地図という本当に身近なツールを使われて、また今回、患者視点というものを重視したこの薬局アワードですけども、患者ならずとも地域の方をターゲットにするということで、市民向けにとても前向きな活動に広がりがあるような、そんな可能性を秘めていてとても良かったなと思います。
また、さらりと仰っていましたけれど、歯科衛生士の方がスタッフにいらっしゃるというのは、私、色々な薬局さんにお邪魔してますけれども、なかなか聞かないものですから、スタッフの方の幅もあって、そういう面でもいいなと感じました。
一つお伺いしたいのが、そうしたスタッフがいる中で、なかには率直に言って、薬じゃないところへの関わりに前向きではない方がいることもあるのではないかなと思いましたが、どうでしょう。要は、スタッフの皆さんが一丸となって、こういうふうな情報発信をしていくっていう統一感を保つために、何か工夫されている点とか、うまくいったエピソードとかがあれば、教えていただきたいなと思いました。
谷本:
当薬局は調剤と一般医薬品売るOTCの2部門があるんですけれども、そちらのスタッフと合わせて月一回、必ずみんなで話す機会を設けておりまして。今月何をしていこうとか、どうやっていこうとか、こういった患者様がいたので、こういうことに注意していきましょうというようなお話をそこでしているので、その時にだんだんと案を擦り合わせていくような形です。
鈴木:
では徐々に徐々にみんなの統一感が生まれていく、そういう仕組みがあるということですね。ありがとうございました。
司会:
ありがとうございます。もうひとかた、後閑様お願いします。
看取りコミュニケーション講師・看護師 後閑愛実氏
後閑:
発表お疲れ様でした。素敵な発表で、私もたくさんメモしてしまいました。
先程、歯科衛生士の方がいるのが珍しいと言われてましたが、私、谷本さんのような管理栄養士の方がいると言うのも、すごく珍しいと思ってしまいました。また、外で“みんなで作る「府中薬局」会議”っていうのをしたり、カウンターを作ったりとか、本当にみんなに知ってもらう工夫が素晴らしいと思いました。
そんな中で一つ聞いてみたいのが、薬局の外に出てカウントは出すというのはあるんですけれど、薬局の中でやってることと言いますか、もっと府中薬局を知ってもらうために、何か認知してもらうための工夫があったら、是非教えていただきたいです。
谷本:
現在でもSNSの発信ですとか、ビルの真上かマンションなので、そちらの方々へのポスティング等もしています。また、当薬局は設立自体がかなり古い薬局でして、移転して今の場所となりましたが、昔からいるお客様に対して、許可を取った方に家に案内を送付したりなどしております。
後閑:
ありがとうございます。いっぱい認知経路を増やしていて、さらに興味を持ってもらうための工夫もされてたので、素晴らしいと思いました。ありがとうございました。
谷本:
ありがとうございます
—–
谷本さん、ご発表ありがとうございました!
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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