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さくら薬局羽茂の取り組みとは -第7回 みんなで選ぶ薬局アワードのプレゼン紹介
今回は「第7回 みんなで選ぶ 薬局アワード」に代表薬局として登壇した、さくら薬局羽茂(新潟県佐渡市) 光谷良太さんのプレゼンテーションをご紹介します。
離島×超高齢化エリアの薬局を地域の人が交わるプラットフォームに
それでは「離島×超高齢化エリアの薬局を地域の人が交わるプラットフォームに」さくら薬局羽茂(はもち)の取り組みを紹介させていただきます。私、アイラブ佐渡のTシャツを着てるのが会社の代表を務めます、光谷と申します。よろしくお願いいたします。
佐渡島の現状は、日本の10~15年先?
早速ですが、今日はですね。皆さんに日本の未来。これをですね。疑似体験していただきたいなと思っております。舞台となるのはこちら。
そうです。新潟県の離島・佐渡島です。今日のこの短い時間で語りきれない、魅力にあふれた場所です。ただ、この魅力にあふれた佐渡島、実は医療の面においては、今厳しい状況に置かれております。
高齢化率が全国平均を上回り40%を超えている状況です。高齢者人口も含めて、全年齢で人口が減少しております。さらに、物流の問題、医師・看護師など医療人材不足、そして近年では医師不足や人口減少から病院統合が行われ、入院病床も大きく削減されており、医療体制崩壊の危機。
高齢化率、人口ピラミッド構造、年齢送別人口推移、海に囲まれた地理条件。こうした佐渡島の現状は、日本の10~15年先の状態によく似ているとされ、実は日本の未来というふうに言われて、各方面で注目を浴びております。
それでもまだ何か遠いところの話のような印象を受ける方もいるかもしれませんが、佐渡の問題は皆様にとっても、すごく身近な問題です。例えば、将来、離島に人が住まなくなってしまうと、国土や国境に大きな変化が出てしまう可能性があります。都市部にも影響するかもしれません。
さらに、日本全体の人口は既に大きくピークアウトしてますので、人口減少・都市集約。これは今後、地方の多くの地域で課題となって出てくる部分です。
さらに、佐渡が既に迎えている超高齢化社会。多くの医療や社会のインフラは人口が増えている時期、そして若い人が多かった時期に設計されているものですので、今後佐渡のように、統合・縮小・再編、こういったことが求められてくるかと思います。
え!?何か、やばくない…?心配になった方もいるかもしれません。私たちの取り組みをご覧いただき、何ができるか一緒に考えてもらえたらと思います。
「課題先進地域」と捉え、薬局が未来の社会で何ができるかを追及
あらためまして、佐渡島ってこんなとこ、ということで紹介させていただきます。
東京から最短で4時間程度ですね。人口は約5万人。東京23区の約1.5倍ほどの面積があり、日本最大級の離島と言われております。
我々は新潟県内で薬局7店舗を運営している「さど調剤グループ」という企業です。
佐渡島内では5店舗薬局を運営しておりまして、佐渡島内で一番多くお店を出店している法人グループです。前段でお話ししたとおりですね。本当に大きな問題は山積みです。
こんな大きな問題がありですね。薬局としてできることはあるんだろうかと。疑問に思ってしまうこともあります。未来が不安になったり、下を向きたくなったり、ネガティブなことを考えればキリがない。薬局経営にも携わる私としては、今もこうした思いになってしまうことも多々あります。
ただですね、何もせず、地域が衰退していくのを待っているかというと、そんなわけにはいきません。自分たちが好きな地域、そして自分の大切な人がいる地域を、安心して暮らせる場所にしたいということは、私だけではなくて、社員みんなで共通した思いです。
だからこそ、この問題多発過疎地域を「課題先進地域」というふうに言い換えて、薬局が未来の社会で何ができるか可能性を追求するチャンスにあふれた場所だというふうに捉えることにしました。
薬局での健康イベントを通して、地域のプラットフォームに
佐渡のような超高齢化社会においては、健康で元気で過ごしていた期間が長くなる。これは非常に大事なことです。しかし…
加齢とともに高齢者の生活圏は縮小していってしまいます。そうすることで、社会とのつながりが薄くなったり、健康への意欲が低下して病院を受診しなくてもよいかとなったり。薬を飲まなくてもよいか。そういうふうな方も出てきます。そういったことがフレイル、低栄養、認知症など、いろんな疾患の悪化リスクも引き起こします。
また、地域全体に声を傾けてみると、行政の方は「健康に課題・不安を抱えている人たちにアプローチしたいと思ってるんだけど、全然相談に来ないんだよね」と言っており、地域の事業者の方は「新たになかなかお客さん増えない」と。こんな声が聞こえてきます。
地域にある高齢者を支える貴重な資源である行政や各企業のサービスが、必要な人に届かない、認知してもらえないという課題があることが分かりました。
こうした課題を何か薬局で解決できないかと私たちは考えました。
高齢者にとって病院・薬局に行くというのは貴重な外出の機会です。薬局がそんなせっかくの外出の機会であるなら、薬を受け取るだけの場所ではなくて、健康を体験する場所にしたい。そして、地域の限りある資源を認知してもらい、必要な人に必要なものが届くきっかけの場所にしたい。
そこで、私たちは薬局で健康イベントを行って、薬局が地域の人に健康体験を提供して、そして地域のサービスを認知してもらって、そして地域の人と人をつなげる。そんな地域のプラットホームになれないかなというふうに考えています。
具体的には、月に一回、健康に関わるイベントを企画運営したり、行政や周辺の事業者の方とのコラボイベントを実施しています。
薬の待ち時間に参加される方やこのイベントだけに訪れる方もいらっしゃいますし、薬局に笑顔があふれる非常にあったかい時間を過ごしていただいています。
薬局のイベントをはじめたきっかけについて
実は薬局のイベントを企画運営するきっかけがありまして。薬局の近くに某大手調剤併設ドラックストアができてしまって、何でこんなに田舎の間隔も少ないところに出すのかな、なんて経営者としては思ったりもしたんですが、やはり少なからず我々にも経営的な影響がありました。何か対策を打たなければいけない。でも、何をしたらいいか分からない。私も店舗のスタッフも、もやもやした時間を過ごしていました。
そして、ある日ですね。行政の地域包括担当の方が薬局にいらっしゃって「隣のドラッグストアの休憩スペースを使って、一緒に行うイベントの相談に乗ってくれませんか」というお話をいただいたんですね。
私たちは、「えっ!?なんで競合となる大手ドラッグストアのイベント集客を私たちが手伝わなければいけないんだ…?」というふうに思ったんですけども、この行政の方も悪気があったわけではなくて。調剤薬局はいわゆる「薬を受け取るだけの場所」で、ドラッグストアは日用品を扱っていて「気軽に立ち寄れる場所」。そんな認識があったんですね。
ここで私たちの火がつきました。店舗のスタッフからも「私たちだって色んなイベントを行って地域の人に来てもらいたい。ぜひやりたい」というふうに熱い言葉をもらいました。
よーし!じゃあ、やってみよう!!ということで始めてみましたけれども、なかなか薬局圏と馴染みがないのか集客ができませんでした。
じゃあ、どうやったら集まるんだろう?というところを店舗のスタッフで話し合っていただいて、地域の人はどんなことに困ってるのかなと集客の強い企画を検討してもらいました。
さらに、公式LINEアカウントを利用して集客をしたり、地域の事業者に営業したりですね、今まで薬局ではあまりしてこなかったことに取り組んでいきました。
継続していくと、なんとあるイベントでは43名の方に来ていただき、そのうち26名の方には処方箋がない状態でお越しいただきました。
「初めて薬局に入りました」っていう方だとか、「どこに体のことを相談すればいいか、わかんなかったんだよね!安心できました」という声をいただくことができました。
地域の事業者の方には喜んでいただき、行政の方からは「他のイベントにも出ていただけませんか」と、そんな嬉しいお言葉を言っていただけるようになりました。
おわりに
さくら薬局羽茂の取り組みは、過去こんなふうに取り上げていただきました。
私たちはまだ道半ばではありますけれども、記事を通して感じたことがあります。
それは「なぜ皆さんは取り組んでいるのか」という、取材記事の記者の方からの質問に対して、薬局スタッフが、
「自分が好きな地域が安心して暮らせる場所であり続けるために、薬という枠にとらわれず、できることをやっていきたい。そして、自分たちにとって大切な人たちの笑顔を守っていきたいからです」
というふうなコメントをしていたんですね。この言葉が本当に大事な部分で、これまでも、これからも変わらない薬局のあるべき姿なのかなと思います。
さて、未来を覗き見ていただいて、いかがでしたでしょうか。
薬局が未来の社会で何ができるか? 皆様、それぞれの地域で“安心”という光を灯せるように、共に薬局の可能性を見出し、ぜひ明るい未来を創っていきましょう。
どうも、ご清聴ありがとうございました。
審査員のコメント
司会:
ありがとうございました。それでは、審査員の方からコメントを頂戴したいと思います。後閑愛実様、お願いいたします。
看取りコミュニケーション講師・看護師 後閑愛実氏
後閑:
発表おつかれさまでした。本当にこれからの日本の縮図っていうことで、私たちもいろいろ考えなくちゃいけないなって思うような発表でした。やっぱり大手の薬局さんが隣にできたことで、競合との差別化みたいなのは、すごくこだわったと思うんですけれども、それってたぶん他の薬局さんもそうだと思うんですよ。
「さくら薬局さんはどこが強みで、こことは大きな差がある」のような、さくら薬局さんのそういう強みを教えてもらってもいいですか。
光谷:
はい、ありがとうございます。私も正直、その大手ドラッグストアが来た時にどうなるかなと不安だったんですね。どんな選択肢で患者さんが薬局を選ぶのか。結果として見てて分かったことは、継続して来てくれてる患者さん達って、うちの薬局で働いてるスタッフたちはみんな地元の小・中学校を出て、地元に帰って来ていただいている子達なんですね。
だから患者さんから、「あなたはどこどこのお孫さんだよね」みたいなそんな関係性ができている薬局なんです。なので僕らは、大手企業と違ってヒト・モノ・カネが潤沢にあるわけではないんですけど、本当に昔からの温かい人間関係みたいなのが、患者も継続してきてくれてる要因になってるんじゃないかなというふうに思います。
後閑:
ありがとうございます。隣のドラッグストアとは違う、人とのつながりが強みっていうことで、逆に今度は、共同で何か一緒に協力できることはないかとかって考えてることとか、もしあったら教えてもらいたいなと思うんですが。
光谷:
はい、そうですね。やはりそこはですね。限られた資源のところで、忌み嫌いあっていてもしょうがないので、実際にお薬の流通の部分等は、お互いにこれが不足してるんですけど、貸してくださいっていうやりとりをさせてもらったり、大手ドラッグストアさんが「今日はちょっとどうしても併設の調剤薬局を閉めなきゃいけないんで、患者さん行くかもしれません。お願いします」っていうコミュニケーションを取ったり、結果的には今はそのような形で、コミュニケーションを取っています。
後閑:
ありがとうございました。
司会:
ありがとうございます。もう一方、池田和久様お願いします。
一般社団法人 埼玉県薬剤師会 副会長 池田和久氏
池田:
発表ありがとうございます。調剤業務に限らず、広く地域のプラットホームになりたいと言う姿勢、素晴らしいと思うんですよね。今聞いた通り、必要な人に必要なもの届けると。
これはちょっと見方を変えると、薬局の仕事なのかというような、そんな疑問にも繋がることですよね。それを薬局でやってしまうとはいうことは、地元の頼りにしてくれる患者さんにとっては、本当に力強い姿勢なのかなというふうに思います。
ところで、人口が5万人ということですが、子どもの数っていうのは大体どのくらいいるんでしょう。
光谷:
子どもは今、特に減ってきています。直近の出生数なんかでいうと200人ほどにまで、減ってきているので、本当に将来的なことを考えると、地域が持続していくのかどうかっていうのは本当に難しい問題かなと思ってます。
※新潟県の人口移動 -令和4年新潟県人口移動調査結果報告- https://www.pref.niigata.lg.jp/site/tokei/jinkounenpou20221001.html
統計表(スライド41ページ)より、佐渡市の令和3年10月から令和4年9月までの1年間の出生数計は212人
池田:
なるほどね。高齢者に対するそういったアピールっていうのが実際に身を結んでいるということだと思うんですが、逆に子どもに対してもね。そんな催し物、何かこうイベントというのを考えていらっしゃることはありますか。
光谷:
はい。実はもう4、5年ぐらいになるんですけど、地元の中学生・高校生たちを積極的に職場体験で受け入れてですね。将来、こういう場所があるんだとか、その医療に関わるきっかけになればと思って、微力ながらそうした取り組みは行っています。
池田:
いいですね。学校薬剤師っていう仕事もありますんでね。自治体と学校とか、そういったところと共同してね。今後とも発展的にいろんな事業ができればいいなと思います。頑張ってください。ありがとうございます。
光谷:
ありがとうございます。
—–
光谷さん、ご発表ありがとうございました!
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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