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【後編】 薬局発・新しい地域コミュニティの作り方とその先にある これからの調剤薬局のあり方

「みんなで選ぶ 薬局アワード」で最優秀賞を受賞した まごころ薬局(株式会社コーディアル) の福田惇さんと、薬局支援協会 代表理事の竹中孝行さんの特別対談、後編です。

【後編】
薬局支援協会×まごころ薬局で考えてみた、”薬局のあるべき姿”。
薬局、薬剤師とコミュニティデザインのカンケイとは。

 

前編では、「みんなで選ぶ薬局アワード」の第3回受賞者・まごころ薬局の福田さんが開拓してきた薬局の新たな役割についてうかがってきました。

 

後編では福田さんと、薬局アワード主催の、一般社団法人薬局支援協会代表理事・竹中孝行さんに、コミュニティデザインとの関係から、これからの薬局、薬剤師のあるべき姿を探っていただきます。

竹中さんと福田さんのプロフィールはこちら

患者さまや地域の人々が笑顔で集う、
居場所をつくりたいという思い

竹中

福田さんの発表にもあったと思いますが、コミュニティスペースの命題として、みんなに楽しんでもらうだけではなく、〈みんなに主役になってもらう〉というのがとてもいいと思いました。心身の健康には、社会的な満足感も必要だという提案は腑に落ちます。

 

福田

ありがとうございます。

医療者の多くは「患者さまに何かをしてあげたい」って思いがありますよね。そうした心理的なクセから、つい「してあげる」ことに注力してしまいがちです。

でも本当は、患者さまが何かをしてあげて「ありがとう」といわれる状況を作ることも大切ではないかと思っているんです。

まごころ茶屋でそういう実例を見せているので、僕のそういう思いをだんだん理解してもらえる場になっているかもしれない。

竹中

イマドキの言葉でいうと、「居場所がある」みたいなことですよね。

 

福田

居場所は大事だと思います。

僕の中の「居場所」というものの定義は、主体的に「自分がやりたいことをやっている」のだけれど、実はそれが誰かのためにもなっている状況。

シンプルに言うと、自分がやりたいからやってみたら、誰かが喜んでくれている。だから
自分はここにいていいんだと思える。そういうことですね。とするなら、薬剤師と患者さまとの関係でもそれを応用すればいいと思うんです。

「ありがとう」と自分が言われるんじゃなくて、その人に「役割」を作る。要は他者から「ありがとう」と言ってもらう環境をデザインしていく

役割の有る無しが患者さまの健康に、とても影響があると考えているので、それは強く意識しています。

 

竹中

「居場所」という言葉にはどこか受け身な印象がありますが、福田さんの中では能動的なものですよね。

 

福田

おっしゃる通りです。むしろ、能動的でない限り「居場所」は存在し得ないとすら感じます。

思うに、高齢者が「居場所がない」と悩むのは、もうやってもらうばかりになってしまって居場所を奪われている感じを持つからですよね。

では、どうやってそれを作り出すか。僕の場合、『ファンベース』(佐藤尚之著。ちくま新書)という本も参考になりました。

小売というか店舗を構えるということは、いかにファンをつくるかだ」という意味のことが書かれていますが、そのマーケティングは有効だと思っています。

竹中

そこでいうファンとはどういうものですか。

 

福田

いわばお客さまではあるけれど、同時に運営側に片脚突っ込んでいるような、ひと肌脱ぐのもやぶさかではないような気持ちの人です。

現に、まごころ茶屋を始める前から、囲碁が打てる人同士をマッチングしたり、おでん作るのがうまい人に作ってもらってふるまったり、手芸が得意な人に先生になってもらったり。その人の得意を、ちょっと強調させるみたいな感じで、人と人とを繋いでいったんです。

すると、「まごごろ茶屋を、自分が盛り上げているのだ」という感覚になってもらえるんですね。いまでは参加者同士が自発的にイベントや企画を立ち上げるようになってきました。それはもうコミュニティデザインだと思う。

医療機関の中では、いちばんコミュニティデザインに向いているのは薬局だろうなというのが僕の結論です。

 

竹中

その感覚は、今後の薬局のあり方に通ずるかもしれません。

いままでは、どちらかというと、薬局の業務は一律化していたところがありました。要は、同じ業務を淡々と早くこなす薬剤師が「仕事ができる」と評価されるみたいな。

でもこれからは、もっと薬剤師自身がどんなことを得意としていて、それを生かしてどういったサービスが提供できるかまで求められていくと思います。

僕が今回の福田さんの発表を聞いていて思ったのは、コミュニティデザインは会社経営にも生かせるんだろうなということです。

主体的に動ける人が増えてくれば、絶対会社はうまくいく。スタッフに主体性をいかに持たせるかコミュニティデザイン化していくかというのを、今後、薬局には求められるんじゃないかなと思っています。

福田

僕は、このまごころ茶屋というコミュニティースペースで、ある程度それは達成できているんですが、まだ薬局とうまく融合できていないところもあると感じています。

そこがこれからの課題ですね。

求められる薬局、見捨てられる薬局。
これからの課題とは。

竹中

福田さんは、いい薬局とは、詰まるところどういうところだと考えますか。

 

福田

難しい問題ですね… それでも、いい薬局はどんな運営をしているかというより、やはり重要なのは、目線をどれだけ患者さまに向けているかですよね。

たとえば、うちは在宅をやっていないわけじゃないですけれど、竹中さんが運営されている東京・三鷹市の「竹の葉薬局」は在宅医療に特化した薬局ですよね。それはいま求められている在宅患者さまに目を配っている。

多職種との医療連携も、結局は患者さま目線に立って初めてうまくできるというか。

 

竹中

同感です。僕も目線を一般の薬局の利用者に向けることを大切にしていますし、それができているのがいい薬局だと思うんですよね。

でも現実は案外、そこに目を向けていない薬局が多いように思います。もっと言うと「点数のためにこのサービスをしているのだろうな」と感じるところが多くて、実は求められている「利用者の本当のニーズ」を、薬局自体が把握していない気がするんです。

今後、医療の変化に伴い、薬局も変化せざるを得ないことは明白です。

そんな中で、意識しておかないといけないのは、どれだけすばやく進化できる薬剤師になれるか、スタッフになれるかだと思います。

昔ながらの薬局のやり方に固執してしまっていると、いつの間にか時代遅れになってしまう可能性があるんじゃないかなと思います。

福田

実際、これだけ薬局があると、患者さんにその薬局に行く理由が必要ですよね。

ドラッグストアだったら、ついでに日用品や食品も買えるし……となるわけだから、そういったプラスアルファのない調剤薬局は、どういう風に行く理由づけできる場所になるかが勝負なのかなと。

 

竹中

薬局も、理由があって選ばれる時代になってきた。普通のサービス業と同じです。

 

福田

本当にそうですね。

第4回で、薬局アワードは大幅進化する!?
その構想の一部を紹介

竹中

最後に、これからの薬局アワードについて少しお伝えしたいことがあります。

まだ構想段階ですが、第3回まで迎えて一つの節目を終えたので、第4回目以降は趣向をがらりと変えてやりたいなという思いがあります。

というのも、本当にすばらしい取り組みをされている薬局さんが集まってくださるようになった一方、そこまで尖ってはいなくても努力されている薬局さんはたくさんあるとあらためて気づきました。

そういう努力をもうちょっと見える化できるような薬局アワードにしたいんです。

福田

地道にがんばっている薬局さん、たくさんありますよね。

 

竹中

本当に思いつきの一例ですが、在宅部門地域密着部門調剤部門など部門別にしてみるとか。すると、在宅で頑張っている薬局さんももっとエントリーしやすくなるのかなとか。

 

福田

なるほど!ちなみに薬局アワードは受賞しても再エントリーとかは可能なんでしたっけ?入賞したりもできるんですか。

 

竹中

再エントリーは2回、3回と可能です。もちろん入賞もできます。

 

福田

じゃあまた力を蓄えて、またやろうかな。

 

竹中

そういえば、福田さんは薬剤師であり、「まごころ茶屋」代表でもありますが、それ以外にもユニークな活動をされていますよね。武庫地区情報の広報誌「むこたん」で、薬草についてのコラム「薬草ハンターがゆく」を連載していたり。

Youtubeにも野草のことを上げていますよね。その野草を食べたり調べたりは、いつから始めた趣味なんですか。

 

福田

知り合いに、セルフブランディングについて相談したら、「草食えば」とか言われて。

冗談だったんでしょうが、僕の方がノリで「確かに面白い。そんなことしてる人はレアだし、そこに薬剤師が乗っかるとより面白いかも」となってしまった。

もともと漢方好きだったので、だんだん当人が楽しくなってきてしまったんですよ。

始めたのが春先だったからいろいろな草がいっぱい生えている。「何、あの草?」「食べられるかな」と調べてしまう。

「あ、これは薬になるんや」と、どんどん知識もたまって、「ポケモンGO!」の感覚になってきました。新キャラ発見、みたいな。

だからもう最近は散歩がすごく楽しい(笑)。

 

竹中

ポケモンですか(笑)それなら、もし次に挑戦していただけるなら、テーマは『野草研究薬局』とかですかね。実際、それも一つの取り組みだと思います。

僕も、小さな挑戦も拾えるような薬局アワードにするために、どうするかを考えていきますね。

 

福田

来年以降も、楽しみです!

対談者プロフィール

福田惇さん ※写真右
ふくだ・じゅん「株式会社コーディアル」代表取締役、薬剤師。1985年、群馬県出身。城西大学薬学部卒。製薬会社でMRを勤めた後、2013年、兵庫県尼崎市に「まごころ薬局」武庫之荘店をオープン。現在、もう1店舗を展開。地域の人々がつながるためのコミュニティ造りにも尽力。コミュニティスペース「まごころ茶屋」を武庫之荘店に併設している。

竹中孝行さん ※写真左
たけなか・たかゆき「株式会社バンブー」代表取締役、一般社団法人薬局支援協会 代表理事、薬剤師。1984年、静岡県出身。共立薬科大学卒。外資系製薬会社に勤務後、独立。薬局事業、岩盤浴やエステなどの美容事業、医療機関向けのECサイト運営などのメディア事業、介護事業、ゆるキャラ事業など、幅広い事業を手がける。

ファーマシストライフ編集部
(取材・文/三浦天紗子、写真/景山幸一)

みんなで選ぶ 薬局アワードとは? 】
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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