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【前編】薬局薬剤師の本当の仕事って何ですか?- 薬局アワード対談

去る2018年5月20日、東京・銀座で第2回「みんなで選ぶ薬局アワード」が開催されました。

今年も、全国から創意工夫をしている薬局のさまざまな取り組みについて、多数の応募が寄せられ、昨年とならんで、薬局や薬剤師の役割について新たな可能性を感じるイベントとなりました。

第2回の栄冠に輝いたのは、名古屋にあるこのみ薬局大曽根店代表の瀧藤重道さんです。

当イベントを主催する、一般社団法人薬局支援協会代表理事の竹中孝行さんと、瀧藤さんのすばらしい取り組みについて語り合いながら、薬局薬剤師の本当の仕事とは何かを考えていきます。

薬局薬剤師の本当の仕事って何ですか?

【前編】祝・第2回「みんなで選ぶ 薬局アワード」最優秀賞受賞。”このみ薬局 大曽根店”を、もっと知りたい!

対談者プロフィール

竹中孝行さん(右)
たけなか・たかゆき 株式会社バンブー 代表取締役、一般社団法人薬局支援協会 代表理事、薬剤師。1984年、静岡県出身。共立薬科大学卒。外資系製薬会社に勤務後、独立。薬局事業、岩盤浴やエステなどの美容事業、医療機関向けのECサイト運営などのメディア事業、介護事業、ゆるキャラ事業などを手がける。
瀧藤重道さん(左)
たきとう・しげみち このみ薬局 大曽根店 薬剤師。1983年、愛知県出身。名城大学卒業後、2009年、株式会社ファーマアシスト入社。このみ薬局大曽根店は、2011年、名古屋市北区の大曽根駅近くに開局。訪問診療の薬剤師同行にも力を入れていて、老人ホーム等の施設を中心に、数多くの患者さまのおくすり管理を担っている。

”このみ薬局 大曽根店”の取組みについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください

検体のグラム染色に果敢に取り組む、全国でもめずらしい薬剤師

竹中

第2回の「みんなで選ぶ薬局アワード」最優秀賞受賞、おめでとうございます。

瀧藤さんは、施設の訪問診療に薬剤師として同行され、医師の指示のもと感染症が疑われる場合に検体をグラム染色し、推定細菌から抗生物質の処方提案を行うという取り組みをされている方です。

そうやって、抗生物質の適正使用を提案している薬剤師さんがいることに僕も驚きましたが、会場でプレゼンを聞いていた方もほとんど同じ気持ちだったのではないでしょうか。

瀧藤

ありがとうございます。実は受賞したことはあまり周囲に報告していないんです。医師にも伝えていないし、何人かの同僚とかには「おお、すごいじゃん」と言ってもらったりしましたが、それくらいで。

きょう、記念の楯が届いたので、それを薬局に飾って、患者さんからの反応を待ちます(笑)。

竹中

瀧藤さんがグラム染色をやろうと思ったきっかけは何ですか?

瀧藤

僕自身がグラム染色に興味を持ったのは、本で、グラム染色所見が治療薬の選択に大きく貢献できると知ったからなんですね。

グラム染色は感染症診療において今後さらに注目されるだろう、しかも、高額な医療機器などなくても、染色のためのスペースさえ確保できれば顕微鏡で簡単にできるとも書いてあって、自分でもやれそうだと思ったんです。

そのタイミングで、大学の恩師である教授から顕微鏡をもらえたのが、自分でも実際に始めたきっかけです。

グラム染色自体は、正直なところ、発表しても「やろう」と思う薬剤師が出てくるとはあまり思えないんですが(笑)、それを発表することによって、いま抗生物質の適正使用が叫ばれ始めていることを知ってもらえたらいいなと思ったんですね。

瀧藤

薬局アワードへの応募も、「こういうのがあるからやってみなさい」と、その先生から勧められたんです。

普段から、薬局薬剤師の多くが抗生物質の適正使用にあまり興味を持っていないと感じていたので、ちょっとでも知ってもらえたらいいかなと応募を決めました。

竹中

実際、当日の6つの発表の中で、抗生物質をめぐる社会的な問題を共有したことが、来場の皆さんが評価したポイントだと思います。抗生物質の不適切な過剰使用が、薬剤耐性を拡大させていて大きな社会問題になっていることは、おそらくまだ一般に知られていないことでしょうね。

瀧藤

そうですね。厚労省が2016年に「AMR(薬剤耐性)対策アクションプラン」というのを出したんです。けれど、薬剤師の間でさえ、その情報は十分に共有されていないと感じていました。

いま日本の中で、たとえば、風邪の患者に対して安易に抗生物質を使ってきたので、逆に「使用量を減らしていこう」という動きが出ていますよね。

また、世界規模で薬剤耐性菌が増加してきていて、AMRに起因する死亡者数などが増えると予想されています。

抗生物質などの使用法についての新しい知見や抗微生物薬適正使用の手引きというものがあるんですけれど、医療関係者全体の知識のアップデートが追いついているとは言いがたいです。

竹中

過剰処方が問題視されてるところもありますね。身内や友人に相談されたら、「あ、それは飲まないほうがいいよ」とかは言えるかもしれないんですが。

瀧藤

外来の患者さんでは、感染症は命に関わらない場合も多いけれど、命に関わるケースもあるので、抗生物質の適正使用については掘り下げて勉強しなければと思っています。

処方に疑問を感じても、生半可な知識だと説得できませんし、患者さんのリスクにもなりますから。

ただ、抗生物質だけをピンポイントで勉強するより、やはり感染症全般、あるいは診療についても学ぶことで知識はより深まると考えています。意識的に広く学ぶようにはしています。

昨今、浮上してきたポリファーマシー問題。適正処方を突き詰めたい

竹中

瀧藤さんが、抗生物質の減薬について関心を持たれた背景には、どんなことがあったのでしょうか?

瀧藤

もともと興味本位で抗生物質の本を買っては読んでいたんです。そうして知れば知るほど、訪問診療の現場で、よりよい処方提案をしたいという気持ちが強くなりました。それは抗生物質に限らず、他の処方薬についてもですが。

というのも、医師が勧める薬を勧められるままに飲むことで安心する患者さまもいますが、処方に際して「併用注意」などの状況であれば、現状は副作用が出ていなくても、将来、出る可能性があるかもしれないと注視するのも、薬を知る者の役目かなと。

必要に応じて注意喚起して、副作用を未然に防いでいくようなことができたらと思うんです。薬剤師の職分としては、これからの課題のひとつと位置付けたいです。

竹中

それも薬剤師が行うべき大切な仕事ですよね。

瀧藤

適切な薬物治療のための副作用問題も、さらに考えていきたい分野です。

心不全の患者さんが利尿剤を処方されたとして、その後体調が悪くなったとします。

その場合に、

利尿剤が効きすぎて脱水が起こったせいなのか
心不全のコントロールがまだ上手くいっていないのか
はたまた、もっと他の原因があるのか

という見極めがどれだけ正確にできるか

それは一例ですが、副作用が疑われる情報を、高い精度でドクターに上げて連携するというような役割は、フィジカルアセスメント技術の向上とも関連する課題ではありますが、これからもっと求められていくのかなと。

というのも、個人的にはやはり、患者さんのことを思って調剤していくならば不要な薬や副作用が疑われる薬はどんどん切ってかなきゃいけないと思っています。まだまだ知識、経験ともに不足していると思います。けれど、できる範囲で取り組んではいるんですね。

ただ、自分もそうですが、薬剤師って、何も考えずに薬をボンボン渡すほうがたぶん楽ですよね?

竹中

問題には気づいていても、深く考えないで処方箋通りに出しておこうという薬剤師は少なくないですね。

瀧藤

逆に、時間のない中での業務ではそういったやり方をする薬剤師がいないと回らない現状もあります。だから、それを非難してもしかたがない。

ただ、やろうと思っているけれど知識が足りなくてやれていないという薬剤師に向けてはもっと情報発信や情報交換をして、ともに変わっていけたらいいなと思っています。

勉強会などで抗生物質の話とかをするのも、そういう気持ちがあるからです。

竹中

薬剤師からだけ一方的にアクションを起こしても、現状打破は難しい。

むしろ、一般の患者さまが薬局にきて「薬を減らしたい」と相談をするようなことが増えてきたら、大きく変わるかもしれないです。

瀧藤

そうですね。今回の薬局アワードでの体験を通じて感じたのは、僕以外の、発表されたそれぞれの方が、ご自身のフィールドですばらしい活動をされていてすごいという感動です。

やはり、ある程度以上の専門知識を持ったり、興味ある分野に深く突っ込んできたからこそ見えてきたアイデアや取り組みだと思うんです。

薬剤師向けの本を読んだり、勉強会に行ったりというのは、すでにみなさんされていると思うので、どうプラスアルファを見つけるかだけなのかなと。

僕の場合は、訪問診療で医師に同行する中で、もちろん処方は医師が考えるものではあるんですが、医師がどういう診断をもとに処方を決めているのか話を聞いて、ある程度理解しておかないと適切な処方提案はできないと強く感じたんです。

医師領域にも薬剤師が食い込んでいける分野はあると思うので、そこを上手に掬い上げていけるといいのかなと思いますね。

後編では、薬局と薬剤師が向かっていく未来について竹中さんと瀧藤さんが語り合う中で、このみ薬局さんの店舗の取り組みやこれからの挑戦していきたいことなど、詳しくお伺いしていきます。お楽しみに!

【後編】薬局薬剤師の本当の仕事って何ですか?- 薬局アワード対談 に続く

ファーマシストライフ編集部 (取材・文/三浦天紗子、写真/松井なおみ)

みんなで選ぶ 薬局アワードとは? 】
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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都内の調剤薬局に勤務中。

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