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旭川中央薬局『薬局ファーストで健康サポート「かかる前薬局」のチカラで地域を健康に!』発表者 長塚健太さん
今回は「みんなで選ぶ 薬局アワード」で、特別審査員賞を受賞した、北海道旭川市の旭川中央薬局・長塚健太さんのプレゼンテーションをご紹介します。
※薬局アワード受賞当時の内容です。お取り組みの最新情報については各薬局へご確認ください
旭川中央薬局 長塚健太さんのプレゼンテーション
予防で糖尿病にしない、相談役としての薬剤師へ
司会:
発表のトップバッターは、北海道にあります旭川中央薬局『薬局ファーストで健康サポート「かかる前薬局」のチカラで地域を健康に!』発表者の長塚健太さん、お願いいたします。
長塚:
旭山動物園でおなじみの旭川から参りました長塚と申します。
長塚:
さて、突然ですが「2,000万人」この数字が何を意味するかはご存じでしょうか。
日本で糖尿病が強く疑われる者、そして糖尿病の可能性を否定できない者、この合計24%というのが約2,000万人といわれています。今日200人くらいがこの会場にいらっしゃるということなので、約24%にあたる50人以上が糖尿病に関わりのある可能性があるということがいえます。
長塚:
日本人は、縄文時代から弥生時代に移り変わるにつれて、そのライフスタイルを移住から定住に、狩猟から稲作へとシフトさせていきました。現代の日本人の平均寿命は、医療の発展に伴い長くなっているわけですが、この縄文から弥生の間に平均寿命が実は短くなっているという見解があります。
寿命が短くなった原因は、「米」ではないかという説があります。お米、要は糖質、炭水化物が原因なのではないかといわれています。
日本だけではなく、世界的にも麺やパンなど「小麦」が大きな問題になるなど、炭水化物の問題が増えてきています。米などの炭水化物を主食とする日本人であることが糖尿病のリスクと言う人もいます。
学生時代、今の私の師匠にあたる薬剤師の先生がいました。この先生は「糖尿病は医療では治らない病気」と言い放ったんです。医療の勉強をしているのに、なんでこんなこと言うのだろうと思ったのですが、ちょっとこの滝の写真をご覧ください。
今の医療は、この「患者さん」=「滝つぼの水」を一生懸命バケツで汲み出しているような医療になっています。水を汲み出しても、患者さんは滝つぼの水のようにどんどん増えていくばかりですね。
この滝つぼの水、患者さんを減らすためにはどうしないといけないかと考えた時に、もっと川上を堰き止めないといけないと。この話を聞いてやっと師匠の話は腑に落ちます。
長塚:
要は、川上を目指して予防をしようということ。
予防の概念に私は取りつかれました。糖尿病は医療では治せない。だから患者さんを減らすには、糖尿病にしないための予防が必要だと、師匠は言いたかったんですね。師匠、言葉が足りません(笑)
ただ、予防しようとしても、人々が健康の相談や病院へ行くのは非常にハードルが高いですね。お金も時間もかかります。よく薬局のカウンターで「先生(医師)が忙しそうだったから、あまりお話できなかったんだよね」なんていう話も聞きます。
じゃあ、日頃の健康相談って誰にしたらいいんだろう? 週刊誌やテレビなどのメディアでは、当てにならない情報も散乱しているので、その情報の正誤を判断できる人はどこにいるんだ? 身近な医療者はどこにいるんだろう?
僕はそれが薬局薬剤師だと思っています。
予防の活動の一環で、当薬局はこんな簡易的な血液測定ができる小部屋を持っています。
血液自己チェックコーナー、通称 検体測定室と呼ばれますが、指先の微量の血液から、糖尿病の指標の血糖値や、コレステロール、中性脂肪などを測ることができます。
長塚:
こんな風に測定値を数字で見ることで、予防のきっかけ作りや自分の行動を変えるきっかけを提供できたらいいなと思っています。
検体測定室を持つ薬局は全国に1,600軒くらいありますが、薬局全体の数の3%程度と少ないんですね。検体測定室を持つ薬局を知りたい場合は、一般社団法人スマートヘルスケア協会のウェブサイトに検体測定室検索のページがありますので、ぜひそこから検索してください。
健康維持法は「口を見る」こと
長塚:
ただ、今日は皆さんに、いつでも、どこでも、誰でも、それから道具がなくても、資格がなくても、自分でできる健康維持方法をお伝えしたいと思います。
それは、口を見ることです。例えば歯周病、タバコや遺伝が原因となって早産のリスクを上げたり、肺炎、呼吸器疾患、それから内臓のがんや心筋梗塞、糖尿病はもちろん、肥満、メタボになったりと、口の環境はさまざまな災いの元になっています。
口の環境が改善すると、その他の疾患も改善されたり、糖尿病の血糖値がよくなったり、肺炎の予防にもなるといわれていますので、口のケアはとても重要です。
長塚:
では、なぜ薬剤師が薬局で口を見るのでしょうか? 実は口の環境の悪化原因は、乾燥なんですね。今、僕もだいぶ口が乾いていますけど、この乾燥の原因として多くの薬が関与しているといわれています。
実に約700種類の薬が口を乾かす副作用を持っているといわれていまして、今の時期では例えば風邪薬や花粉症の薬ですね。血圧の薬や精神薬なども結構口を乾かしてしまいます。3種類の薬を飲んでいたら、必ず1種類は入っているような確率ですね。そのため、薬が口を乾かしているのではないか、そして口の環境を悪くしているのではないかということです。
そこで薬局で何ができるかといったら、やはりセルフケアの部分です。ご家庭の歯磨きなどの指導が主になるんですけれども、日々のセルフケアを正しい道具で正しく行う指導と、歯科とのつながりもありますので、適切なタイミングでプロフェッショナルケアにつなげるというようなことが必要かと思います。
長塚:
こんな感じでブラッシングを指導したり。歯ブラシの持ち方はペン持つように、料理用の秤でいいので計ってみて200グラムくらいの力で磨くのが目安といわれています。
病院にかかる前、医療費がかかる前、人に迷惑がかかる前に
長塚:
それからこの「あいうべ体操」は今日、皆さんにぜひ持って帰っていただきたいお土産です。大きな口で「あ、い、う、べ」とやります。「べ」は「べえー」、舌を出します。
長塚:
現代人の「ぽかん口」というのですが、口で呼吸をする人が結構多いので、あいうべ体操によって人間本来の呼吸法である鼻呼吸に戻すことで物理的に乾くのを防いだり、それによって口腔環境が改善したりしますので、体にいろいろな良い変化が起こるといわれています。
実際にやってみましょう。いきますよ、せーの…
あー、いー、うー、べーーー!
長塚:
ありがとうございます(笑)
あいうべ体操の効果として、「便通が良くなった」とか「耳鳴りがなくなった」とかいろいろあるんですけども、結構若い女性の方が多いので、「小顔になった」これだけは覚えてください(笑)
われわれ薬剤師の目標は、薬を売って稼ぐことではもちろんありません。むしろその逆で、保険で薬を出さないで、薬を売らなくても皆さんが健康になることが必要です。われわれ薬剤師が、国民皆保険という素晴らしい制度の中で飯を食えているうちは、まだまだ皆さん健康ではないですね。目指すところは、保険で飯を食えなくなることです。
では、皆さんの目標はどうでしょう。ぜひ自分の口を見て、薬剤師の方は薬局で利用者さんの口を見て、あいうべ体操をして、いつまでも自分の口で飯を食えるようにしていけることを僕は願っております。
かかりつけ薬局というのが今、世間でも業界でもホットな話題ですが、かかりつけ薬局だけでも僕は足りないと思っています。
病院にかかる前、医療費がかかる前、人に迷惑がかかる前の、「かかる前薬局」が大事かなと思っております。予防に重点を置いた「かかる前薬局」を目指して活動をしております。ありがとうございました。
質疑応答
司会:
ありがとうございました。それでは審査員の方からコメントを頂戴したいと思います。赤羽根さま、よろしくお願いします。
中外合同法律事務所弁護士・薬剤師 赤羽根 秀宜 氏
赤羽根:
赤羽根です。いろいろ参考になりました。ありがとうございます。一番参考になったのは、やっぱり「小顔になった」っていうことですけども(笑)
「かかる前薬局」というのは一次予防のことですか。
長塚:
はい。
赤羽根:
今まで、薬局だと二次予防はあるかもしれないけど、一次予防を薬局でやるっていうのはなかなか斬新だし新しいなと思うんです。やっぱり薬局に来る方って、病気になられた方がほぼ主だと思うので。
どうやって、その一次予防が必要な方に病気になる前に薬局に来てもらうかというのが、すごく大変なことだと思って。そのあたり、何か取り組みをしているか教えていただければと思うのですが。
長塚:
ありがとうございます。そこがまさに重要で、今日の、この薬局アワードで、それが達成できるかなと思って来てはいるんですけれども。
あと6月1日から、地域で「薬局へ行こう!ウィーク」というようなイベントをやろうと思っていまして。地域の方の家にポスティングをして、イベント、取り組みを広めていくというような活動を今、実際にやっているところです。イベントを作って、その宣伝の中で「一次予防って大事だよね」と言っていくような活動です。
あとは検体測定室の活動の中で、新聞などに取り上げられると結構地域の人が来るので、そういうところでメディアにリポートを出してもらったりとか。それもつながりがないとできないので、一生懸命そのメディアとのつながりを作るんですけど、そういうところがメインになってくるかなと。
処方箋を持ってこられた患者さんでも、例えば歯科にかかった人が来て、そうすれば(糖尿病の)一次予防にはなるので、そこを一生懸命やったりします。
起こり得る副作用として、口渇が起こる、絶対に起こると思ったら、保湿剤のサンプルを渡すというような、来た人の症状をその次に進めないような予防というのを、それはちょっと二次予防っぽくもなるんですけど、やっています。
赤羽根:
ありがとうございます。病院も薬局も、患者さんは「病気になって行くところ」という意識がとても強いと思いますが、薬局って本来多分そうじゃない。薬局の概念を、昔のようにかかる前にまず薬局に行こうというように変えていく取り組みは素晴らしいと思いますので、ぜひ広げていただければと思います。ありがとうございました。
長塚:
ありがとうございます。
司会:
ありがとうございました。それでは、もうひと方、土屋さまお願いいたします。
ファーマシストライフ代表 土屋
土屋:
どうもありがとうございます。私は薬剤師ではないので、患者の立場でちょっとお話を伺いたいんですけども。
皆さんが気になるなと思っていそうなところとして、実際にそれをやったことによって、薬局の収益にどうやってつなげているのかっていうところを、ちょっとお聞きしたいです。
もう1点、実際にその取り組みをやったことによって糖尿病に対する予防、予防に対する効果をどのように実感されているのか。その2点を教えていただければと思います。
長塚:
ありがとうございます。収益に関しては現在のところ、結局保険で飯を食えなくなるとまさに言った通りなのですが、そんなに儲かる話でもないので、ぎりぎりのところで僕がやりたいからやっているような感じはあるんですけれども、一応お金はいただいています。
一次予防ってやっぱり、お金をいただかないと意識が芽生えないので、必ずお金はとるようにしています。
それでペイできるかと言われたら、ペイはできないですが、そこで少しでも薬局そのものの認知度や、薬局は一次予防にも貢献できるんだぞというところをやっていければ、それはそれで値段以上の価値はあるのかなと思ってやっております。
予防効果の実感については、やはり一次予防に関しては、地域のイベントなどでも薬剤師会としてやらせていただけるようになってきたので、その中で、「去年も測ったから今年も来たんだよね」という人がだいぶ増えてきました。
薬局で検体測定というものができるということが、旭川ではだいぶ知られてきたかなというところの実感くらいですかね。ちょっとパッと事例が思いつかないのですが。
あと、糖尿病の薬を飲んでいる方について、ケアにつなげるというところで、当薬局は歯科医師の先生とのつながりが多めなので、そこで患者さんに「今そのクリーニングをしたかったら、あそこの先生の所に行ってみて」と言って、歯科医師には「(患者さん)が行きますよ」と伝えておくと、先生が「じゃあ診ておくね」と。結局血糖値が下がったりもしているので、そういうところでは効果があるのかなと思ってやっています。
土屋:
ありがとうございます。薬を飲んでいる人の口の中を薬局でケアするというのは僕も初めて聞いた話でしたので、一般の方々にとっては、そういったことが広まるのは、すごく素晴らしいことだと思います。
効果の実感については、何も起こらないということが予防の成果だと思いました。素晴らしい取り組みだと思います。ありがとうございました。
司会:
長塚さん、ありがとうございました。
(おわり)
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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