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薬局・なくすりーな『信頼して相談できる薬局の“見える化”を目指して』発表者 吉田聡さん

今回は「みんなで選ぶ 薬局アワード」で、オーディエンス賞を受賞した、茨城県古河市の薬局・なくすりーな、吉田聡さんのプレゼンテーションをご紹介します。

※薬局アワード受賞当時の内容です。お取り組みの最新情報については各薬局へご確認ください

薬局・なくすりーな 吉田聡さんのプレゼンテーション

司会:

それでは最後、茨城県にあります薬局・なくすりーな、「信頼して相談できる薬局の“見える化”を目指して」発表者の吉田聡さん、お願いいたします。

薬局を「いろいろな相談ができる場所」に

吉田

薬局・なくすりーなの吉田聡と申します。どうぞよろしくお願いします。

最初に、僕の薬局の自己紹介をします。薬局・なくすりーなは、関東平野のど真ん中、茨城県は古河市にあります。古河市の人口は約14万人、そして高齢化率は26.1%、これは全国平均に比べると、やや少ない数値なんですね。

というのも、古河市には大企業の工場がいくつかあります。そして、その独身寮もあるんです。ですので、比較的若い方たちがいて、子育て世代の方が多い薬局になっています。

患者さんも、働き盛りで生活習慣病になった方や、または子育て世代の親子で風邪になっちゃったよ、そんな方が多い薬局です。

吉田

ところで皆さん、「薬局って、病院からもらう薬だけ渡すような場所なんじゃない?」そんな風に思っていないですか。

僕、薬局って本当はいろいろな相談ができる場所だって思っているんですよ。

例えば簡単な話でいえば、風邪気味だなと思ったとき、市販の薬で対処できるのか、それとも病院に行かなきゃいけないのかとか。夜中にお子さんが熱を出しちゃった、そんなときに電話で相談することもできるんです。

その他、もちろんサプリメントや健康食品の相談もできますし、お薬の飲み合わせ、食べ物との飲み合わせだって相談はできます。だけど、この健康に対して薬局に相談するというイメージが、ほとんどの方にないんじゃないかなと思うんです。

もしそういうことを知ってたとしても、薬局とうまい信頼関係ができてなかったら、相談したいなんて思わないです。

ですので、僕は薬局には「信頼の見える化」、これが重要なんじゃないかなと思っています

吉田

僕は、患者さんやいろいろな方たちから、どうやったら信頼が見える化できるんだろう、そういったことを念頭に置いて、今まで活動をしてきました。

例えば医療情報。正しい医療情報を、薬局自ら発信するというのは、すごく信頼される行為なんじゃないかなと思っています。

今、医療情報を得ようと思ったら、インターネットで検索すれば簡単に出てきます。特に忙しい世代の方々は、まず何か調子悪くなったと思ったときに、最初にするのは「検索」です。検索すれば、簡単に医療情報が出てきます。

だけれども、その中には患者さんの不安をあおるだけのような怪しい医療情報もあったりします。去年はWELQ問題といって、でたらめな医療情報が問題になりましたよね。

ですので、そういった情報に患者さんたちが振り回されないように、医療機関である薬局が自ら正しい医療情報を提供するということが大事だと思うんです。

そうすれば、患者さんとの間に信頼が築けて、検索ではなくて薬局に相談に来てくれるんじゃないかなと思っています。

音声アプリで薬剤師目線の医療情報を提供

吉田

そこで、僕は1年半前、Voicyという音声アプリを始めました。これで医療情報の提供を行っています。

このVoicyというのは、比較的若い世代の方たちが使う音声アプリです。ここで「医療・健康ナビ なくすりーな」というチャンネルで週2回配信をしています。

このチャンネルでは、医療や健康関連のコラムを扱っています。そこを薬剤師の目線でお話しするといった形です。

例えば、今年の初めであればインフルエンザが猛威を振るっていましたよね。そういった情報や、子どもさんの調子が悪いときにこのまま学校へ行かせていいのか、病院に行かせたほうがいいのか、その判断基準をどこにすればいいのか、そういったことについて、医療情報を提供しています。

今までの累計再生回数は6万7千回を超えました。そしてこのVoicyを始めてから、子育て世代のお母さま方から質問をたくさん受けるようになりました。

管理栄養士による情報提供

吉田

次に、食に対しての情報提供です。

これ、非常に難しいなと思っています。というのは、薬剤師は食の専門家ではありません。食の専門家は、やっぱりプロであるのは管理栄養士さんですね。でも、小さい薬局で管理栄養士を雇うのはなかなか難しいなと思いました。

そんなときに、ちょうど出会ったのがこちら、「わだちゃんのえいようだより」というものです。

これはフリーランスの管理栄養士、わだちゃんこと和田宏美さんが、ずっと手書きで書き溜めていたものだったんですね。これを無償提供していただけました。

吉田

薬局・なくすりーなでは、こちらの「わだちゃんのえいようだより」を月替わりで患者さんにお渡ししています。この手書きで温かみがあって、そして日々の情報、日々に密着した情報が書いてあるこの「わだちゃんのえいようだより」は、患者さんにすごく好評です。

ちなみに、うちの薬局以外でも無償提供していただけると聞いていますので、もしご興味がある方がいたらご連絡ください。

ちょっとした心の不調を癒す “セルフセラピー”

吉田

次は心のケアについてです。薬局で心のケアって、どんなことができるんでしょう?

例えば、まずサプリメントアロマテラピーといった代替医療を使うところもあります。
その他には、精神保健福祉センタースクールカウンセラーといった行政機関につなぐという手もあります。また、症状が重ければ直接病院につなぐという手もありますね。

もちろん、ご本人の調子が悪いときもそうですが、ご家族の方が調子悪い、そういったときにも相談に乗れます。

でも、こういう何か心に調子が悪いなって思った人が薬局に来るかというと、絶対来ないんです

じゃあ、そのためにはどうしたらいいのかなと、薬局で考えました。

吉田

まずは、ちょっとした心の不調を癒すことができるようなセラピー

例えば、手軽に1人でもできちゃうようなセルフセラピーというものを薬局に取り入れたら、もしかしたら患者さんや心に不調を抱えた方が相談に来るんじゃないかって思ったんです。そうすれば、患者さんとお話ができますし、来てくれると。

ただ、これも1個問題があるんですよ。…怪しくないですかね?(会場笑)

セラピストって、本当にすごい癒しのスペシャリストと呼べるような人もいるんだけども、中にはちょっと宗教っぽい怪しいのもいるわけじゃないですか。

じゃあどうしたらいいかなと思っていたとき、ちょうど出会えたのが、看護師でイヤーセラピストの梅田由佳さんでした。

梅田さんは、病院から患者さんを紹介されて施術をする、そんなこともあるくらい信頼をおけるセラピストさんなんです。

この梅田さんと一緒に、月に1回、昨年の4月より「薬局セラピー」っていうのを行っています。

吉田

こちらは梅田さんがやっている、「耳つぼリフレ体操」というセルフセラピーです。このセラピーについて、薬局に来てくれている方にお伝えしているところです。

このセルフセラピー、薬局セラピーの参加者の方がよく、「耳しか触ってないのに、体中が温まってきた」「なんだか心が少し軽くなりました」「これ、お風呂に入って毎日できるね」、そんな風に言ってくれるんです。

こんなふうに、薬局に癒しの要素を取り入れることで、ちょっと心に不調を抱えた方が、薬局に対して興味を持ってくれるんじゃないかなと思うんです。

そして、薬局に来てくれれば、軽い不調であればこういったセルフセラピーをお伝えするだけでもいいですし、症状がシビアな方に関しては、行政や病院に対して薬局が責任を持ってつなぐ、こういったことができます。

こういった心のケアに対する体制を作ることが大事かなと思って、この活動を続けています。

LINE@で医療相談

吉田

最後に、昨年の11月より、薬局・なくすりーなでは、「LINE@」による医療相談サービスを始めました。これも、比較的若い人たちに向けたサービスです。

今の若い子たちは、電話をかけることそのものにもハードルを感じる方がいるんですね。その他、心の問題の相談は電話ではしたくないと思っている方たちもいます。そういった方たちが気軽に医療相談できるように、このサービスを始めてみました。

1つ事例をご紹介します。お薬をたくさん飲んで自殺未遂をしてしまって入院していたという患者さんです。

退院を機に実家に戻ることにしました。そのときに、今まで実家でかかっていた主治医の方に対して、紹介状を書いてもらったそうです。

でも、やっぱり主治医の病院にかかってしまうと、もう1回自殺するのではと入院させられるかもしれないと思って、すごく怖くなったとお話ししてました。また、薬を見るたびに、自殺をするための道具に見えてしまって、それも怖くてどうしていいか分からないというLINEでのご相談だったんです。

僕は何度かその方とLINEでやりとりをして、今すぐの入院は必要ではないな、という風に思ったので、患者さんにその旨をお伝えしました。ただ、この話は緊急性があるなとも判断したので、「次の日にご実家の主治医の方に受診してくださいね」とお話ししたんです。

後日、またLINE@で連絡が来ました。「主治医の先生とお話しして、何とか問題解決できました」といただいたんです。そして、LINE@でメッセージをすることで、おかげで眠れるようになって、主治医の先生とお話しするときに落ち着いて話すことができたという風に言っていました。

吉田

こんな風に、何かあったときに薬局を信頼して相談できる、ちょっと調子が悪くなったとき、とりあえず薬局に聞いてみる、そういう信頼関係を患者さんと結んでいきたいなと思ってるんです。

そしたら、何かあったとき、自分やご家族、周りの人でもいいですが、そういった方が調子悪いときに相談できる先があるというのは、すごく安心につながると思うんですね。

今日お話しした活動は、まだまだ始めて日が浅いものたくさんあります。ですので、じゃあこれをやったら100%信頼を得られるか、それはまだ分からないです。

でも僕はこれからも、いいなと思ったことがあったら、まずやってみる。そしてそれ続ける。続けて、続けながら考えていく。こういった姿勢をずっと続けることこそ、患者さんの信頼を得られる薬局になって、安心して相談できる薬局になることにつながるのじゃないかなと思って、これからも活動を続けていきたいと思っております。

皆さん、どうもありがとうございました。

質疑応答

司会:

ありがとうございました。それでは、審査員の方からコメントを頂戴したいと思います。岡崎さま、お願いします。

一般社団法人スマートヘルスケア協会 代表理事、東京大学大学院薬学系研究科 医薬政策学講座 特任研究員 岡崎 光洋 氏

岡崎

昨年にも増して、先生の人柄がよく見える発表で、本当にありがとうございます。

早速なんですが、このかかりつけというか、つながりを持つためのさまざまなツールを活用されてるという意味では、非常に斬新というか、今の時代を先駆的に取り入れてらっしゃるのだと思います。

先ほどの、あのLINEの利用、あれはかかりつけになっている方にするんですか。それとも、全くまだ顔も見えてない方からの相談なんでしょうか? どちらかだけやってるというわけではないんでしょうけど、どちらかというと、普段薬局に来られてる人なのか、来てない人なのか、どういう方からの相談が多いんですか

吉田

正直に言うと半々くらいですかね。

半分くらいの方は、友だち追加のQRコードを薬局に掲示してありまして、そこで登録されていく方がいるので、あの時のあの人かな、という人もいます。

ただ、ホームページにもQRコードは掲載してあるので、もしかして、そこから来たのかなっていう背景が分からない方もいらっしゃいます。そういった場合は、LINEでもうちょっと詳しくお話を聞かせてくださいという形になったりすることが多いですね。

岡崎

やっぱりLINEで聞きやすいっていうことは、店舗まではなかなか足を運ぶって感じには至らない?

吉田

そうですね…LINEを使われる方の多くは、例えば、今日お話ししたのは結構シビアな事例でしたけど、実際はもっと単純な事例が多いんです。

今すぐ聞かなくてもいいけど、取りあえずLINEで質問を送っておいて、後で回答をもらえればいいか、みたいな。そういう軽い医療相談の方の場合は、薬局に足を運ぶまでもないという方が多いのかなと思っています。

岡崎

なるほど。ありがとうございます。

OTCを預かってると、普段はなかなか来ないけど、薬が欲しいときにいろいろな話を聞きにくるという方もいらっしゃいますよね。そういったコミュニケーションを常に取り続けてる薬剤師の先生も、まだまだいる中で、今回はこういう新しいツールを使用するというのは、やっぱりスマホ世代だからこそなんでしょうけども。こういう色々なコミュニケーションツールを使った、新しい客層との付き合い方を模索されているので、非常にいい取り組みだなと感じました。これからも、ぜひ続けてください。

吉田

ありがとうございます。

司会:

ありがとうございます。それではもうひと方。鈴木俊之さま、お願いします。

特定非営利活動法人医療福祉クラウド協会 医療情報担当理事 鈴木 俊之 氏

鈴木:

ありがとうございました。私はシステム開発を仕事にしているんですけども、今のお話はちょっと患者の立場で聞かせていただきました。

先生がおっしゃるように、心のケアや食のケア、こういったものを薬局に相談するってこと自体が、私なんか全然想像がつかないわけですよ。そんなこと相談していいのかなって、つい思ってしまうんですが、それをぜひやっていきたいっていう素晴らしい取り組みだなと思いました。

やっぱり正しい情報を発信するのもそうなんですが、患者さんが相談したことっていうのは、いろいろな相談ごとがあると思うんですが、これは主治医の先生との連携というのは、どういうふうにお考えですか。

吉田

そうですね。今までそこまで必要だったケースが少なかったので、今後必要になるケースであれば、もちろん主治医の先生との情報共有を、患者さんの同意を得た上でしなければいけないかなと思いますが、今のところ、そういう事例が来ていないという現状なので、考えていなかったです。

鈴木:

ありがとうございます。相談というのは、例えば処方箋を持っていなくてもいいわけですね。

吉田

そうですね。

鈴木:

じゃあ、もう本当にふらりと相談したいことがあって訪問する、そのような薬局を目指したいということですね。

あと、ちょっと岡崎先生と似た質問になってしまうかもしれませんが、LINEの活用をやっていらっしゃるということで、既にこの業界のITには、医療系のSNSなんかもあるんですけども、このLINEというのは、具体的には吉田先生のほうでそういったものを作られて、患者さまにそこに参加していただくということですか。それとも、直接やりとりということですか。

吉田

LINE@というのが、薬局の1つのアカウントとしてあるので、それで1対多数でつながれるようになってるんですね。なので、情報が他人に行くとか、そういうことはなさそうです。

鈴木:

なるほど、分かりました。じゃあ、若い世代はLINEがあればちょっと相談できるような取り組みですね。こういう取り組みを全国的にいろんな薬局さんでやっていただけたら、非常にいいなというふうに気付いていきました。ありがとうございました。

吉田

ありがとうございます。

司会:

それでは吉田さん、ご発表ありがとうございました。実は私は吉田さんのVoicyのリスナーなので、ぜひ皆さん、ご興味あったら登録してお聞きいただけたらなという風に思っております。

これにて、全6組の発表を終了いたしました。

(おわり)

みんなで選ぶ 薬局アワードとは? 】
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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現役薬剤師・エリコ

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