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薬局、薬剤師には何が求められていくか – いま、薬局にできることって何だろう【後編】

「みんなで選ぶ 薬局アワード」で最優秀賞を受賞したヒルマ薬局 小豆沢(あずさわ)店の比留間康二郎さんと、薬局支援協会 代表理事の竹中孝行さんが、これからの薬局・薬剤師をテーマに話し合う特別対談

薬局支援協会 代表理事 竹中孝行 × ヒルマ薬局小豆沢店 比留間康二郎 いま、薬局にできることって何だろう

後編 薬局支援協会×ヒルマ薬局小豆沢店で考えてみた。 これからの薬局、薬剤師のあるべき姿とは?

前編では、「みんなで選ぶ薬局アワード」の初代最優秀賞・ヒルマ薬局小豆沢店が行ってきたさまざまな取り組みについてのお話をうかがいました。

後編では、同薬局代表・比留間康二郎さん、当イベント主催の、一般社団法人薬局支援協会代表理事・竹中孝行さんに、それぞれが考える“求められる薬局像”や“目指すべき方向性や課題”などについて、自由にディスカッションしていただきます。

竹中さんと比留間さんのプロフィールはこちら

 

薬局に来てくれる患者さんへの思い、薬局で働く薬剤師さんへの思い

竹中

ここからは、これからの薬局、薬剤師には何が求められていくのかを、討論していきたいと思います。

 

経営方針がどっちつかずの薬局は淘汰されていく

竹中

たとえば、健康サポート薬局だとか、かかりつけ薬剤師だとか、国は次々と新しい制度を打ち出してきています。

では、薬局の現場ではそれをどう見ているのか、どんなふうに取り組もうとしているのか。比留間さんはどうお考えですか。

 

比留間

そもそもお客さまの薬局に対するニーズが二極化していると思うんですよね。

利便性だけを求められているのか、それとも、身体はもちろん心の部分までのケアを期待されているのか。だから、どっちつかずの薬局はどんどん淘汰されていくのではないかと思います。

となれば、薬局自体が経営方針をはっきりしなければ生き残れないでしょうね

 

竹中

私も同感ですね。二極化は加速していくと思っています。

けれど、効率のよさを求められている薬局であっても、調剤のスピードや的確さと同時に、患者さまのために何ができるかというオリジナリティーも求められていくと思います。

薬局や薬剤師のブランディングは外せない要素です。

 

比留間

さらに言うなら、薬や健康といった情報提供を超えて、地域にいる人たちすべてを巻き込んでいくような活動をしていかないと未来はないとさえ考えています。私は薬局にいらっしゃる方だけがお客さまだとは思っていません。

地域のみなさんから愛着を持って「ああ、ヒルマ薬局さんね」と呼ばれるくらいでないと…。

 

竹中

それは大切なことですね。

 

薬局経営は「対 患者さん」はもちろん「対 薬剤師さん」についても考えるべき

比留間

ところで、経営戦略として、その地域で求められるものを的確に判断することも大切だと思うんですが、竹中さんは、それをどうやってキャッチしてらっしゃいますか。

「自分たちの地域で求められてるものはこれだな」というのを。

 

竹中

私は、患者さんと話すことが一番だと思いますね。そういう中で、何となく手応えを得ていくしかないです。

そして、いま比留間さんがお話されている「対患者さん」についても重要ですが、経営的な立場から言うと、人材確保や人材教育という「対薬剤師さん」についても考えることがたくさんあるように思います。

 

比留間

いい薬剤師さんにはずっとウチで働いてほしい、もしくは、いい薬剤師さんにウチに来てほしいという気持ちがあるので、そのためにできることは何だろうと悩みは尽きません。

安定している仕事だからと、何となく薬学部に進学して薬剤師になった人も多いのが現状です。

高い志を抱いてなってくれたのであれば言うことないですが…。ただ、どんな仕事にも、向き合い方や真剣さなど、現場を知ってから変わっていく面はあると思います。

経営者としては、入社してもらってから一枚も二枚も脱皮できる“職場環境”を作っていかなくてはいけないなとも思うんです。

スタッフさんにずば抜けた何かを身につけてもらえるような環境を作ることが、いまの自分の課題かなと思っています。

 

竹中

人材教育の重要性ですよね。

確かヒルマ薬局さんでは、スタッフさんそれぞれに、評価シートみたいなのを作成されているんでしたっけ?そういうところに力を入れてる薬局はなかなかないと思います。

 

比留間

評価シートというか、MBOシート※ ですね。(※Management By Objectivesの略)

MBO(目標管理)とは、あらかじめ評価者(上司)と、被評価者との間で目標に関する合意を結び、それに対する達成度合いで評価をする方式。

基本的に、目標に達しなければ評価が低くなり、目標を上回った成果を挙げれば評価が高くなる制度であることから、実績主義や成果主義を唱える組織でよく用いられる。

グロービス経営大学院 MBA用語集より

個人の努力を、人事評価にもきちんと反映していかないとスタッフ自身が意欲的になってくれないでしょうし、こんな小さい薬局ですけれど、そういうところはしっかりと見てあげられる経営者になりたいと思っているんです。

さらに、それをお客さまに還元していく循環を作りたい。薬局のファンになっていただける方をどれだけ増やせるかだと思うので。

 

竹中

ヒルマ薬局さんの場合、選ばれる薬局になるための工夫の一つが、ドリームマップですよね。あれを一緒に作りましょうというアイデアは広く受け入れられました。

それ以上に、そうした発想の種を「どうやって見つけたの? どこから拾えばいいの?」という素朴な疑問を持っている人は多いんじゃないかと思うんです。

 

比留間

竹中さんは、新機軸をどうやって見つけていらっしゃるんですか。

 

竹中

私の場合は、事務さんや薬剤師さんが仕事をしている中でふと思い浮かべたこと、つまり自然発生的なアイデアをなるべく活かすようにしています

どういうことかと言うと、現場にいるスタッフにある程度の裁量権を持たせてしまってスムーズにことを進めてもらう方が、思いがけない工夫につながっていくように思います。

ごく簡単な例で説明すれば、「ここの棚は、あちらにある方が使い勝手がよさそうだ」となったら、移動してもらう。うまくいかなければまた戻せばいいのだし、管理者や経営者の指示待ちにならない状況を作るのも、上に立つ者として心がけたいです。

 

比留間

こういうアイデアがスタッフから上がってきましたとか、何か新しく始めましょうという局面で、経営者が軽く「やってみれば」ということも必要だと思うんですけど、それを具現化させるためのコツみたいなものもあるのではないですか?

 

竹中

そうですね。アイデアって、思いつきのままで止まってしまうことも多いので、それを形にするまでのフローは手伝ったりします

たとえば、ウチの薬局で、スタッフが「ウチ、スタンプカードってないですよね」と言ったので、作ろうと。

じゃあ、特典はどうしよう、法律的に問題がないようにするには、というところは一緒に考えて、ただ、デザインやPRなどをどうするかは、言い出しっぺのスタッフにまかせてしまいます。

 

比留間

竹中さんがいまおっしゃったこと、すごくわかります。

もっとも私の場合は、薬剤師業界以外の業界から刺激を受けて、「あ、ウチでも今度取り入れてみよう」と思うことのほうが多いなと感じています。

 

薬剤師は 薬を飲む行為の先にある”患者さんの望み”を見つけてサポートする存在

比留間

私は、薬局もサービス業であるべきだと考えていますが、他業種から見たらまだまだ「薬局なんて本当のサービス業として機能していない」と思われているかもしれません。

実際問題、飲まなくてもいい薬を飲んでる人もかなりいます。「こんなにたくさん飲むの」と不満を抱えている患者さんもいます。

それってサービスという観点ではいかがなものか。私は、飲まなくて済むなら飲まないほうがいいと思っているくらいです。薬を減らして患者さんの満足度を高めるやり方はないものかと考えています。

 

竹中

薬を減らしてあげるという発想は、薬剤師にとって重要な視点ですよね。

私たちは、薬局イコール、病気を治して健康になるために薬をもらう場所だと、半ば刷り込まれているのですが、考えてみれば、治療も服薬も、健康回復のための過程でしかありません。

本当は、その先に「○○がしたいから健康でいなきゃ」という目的や夢があるわけです。ですが、いまはそれを見ない状態で対処療法的に薬を渡していることも多い

そのことへの違和感が、比留間さんの発表を聞いて、強く感じたことです。

 

比留間

ドクターから「あなたは糖尿病だからこの薬を飲んでください」と言われて、糖尿病だから飲まなければいけない、というのはちょっと違うかなと。

そもそも薬を飲む行為の向こうに自分の望みがあって、そのために自分たち薬剤師がサポートしているのだと思うんですね。その思いが一般の方にも届いたならよかったです。

ドリームマップは、まさにそういうときに有益なツールなんです。

 

比留間

現実には薬剤師が患者さんの夢を聞くことはそうないかもしれませんが、ドリームマップがなくても、膝をつき合わせてじっくり話をすれば、カウンセリングのようになっていきます。

みなさん、心の底には絶対何か夢があるはずです。それを見つけて前向きになってもらえれば、治療にもいい影響があるのではないか、薬も減らせるのではないかと、本気で思っています。

 

竹中

おっしゃる通りです。病気や不調と闘うのは、実際には、マラソンしたいからとか、子どもが成人式になるまで生きたいとか、何か目標があればこそですよね。「糖尿病だからこの薬を飲みなさい」は本末転倒です。

比留間さんの発表を聞いたときに、客観的な感覚として、比留間さんのその思いが賞を取ったんだろうなと腑に落ちました。

 

比留間

ヒルマ薬局の経営理念のひとつに、「心のよりどころ」があります。

もう少し紐解いていくと、「医食同源」という言葉がありますよね。それをもじって、私は「医食導援」という言葉を使うことがあります。

「いしょく」は同じ漢字を当てますが、「どう」は「導く」、「えん」が応援の「援」なんですよ。

薬剤師資格を持った私たちは、薬のプロですから、導く存在であるべきだと思っています。

何に導くのかというと、その患者さんがどう生きたいかという人生への思い。それを見据えて伴走できる存在になりたいと思うんです。

導くといってもあれこれ指図するのではなくて、ちゃんと応援できるようになりたいですね。薬局を心のよりどころにしてほしいんです。

 

来年以降も続く「みんなが選ぶ薬局アワード」。今後の目標と一般消費者にとってのメリットは?

比留間

薬局アワードの第2回開催に向けて、竹中さんご自身は、どういう薬剤師さんや薬局さんに応募してもらいたいと思っているんですか。

 

竹中

たぶん、第1回のときは、どんなイベントなのか様子がわからなかったでしょうし、主催している団体もよく知らないというのがあったかも知れないです。

お金がかかるのかなとか、悪いバックがついていないかとか、あらぬ誤解もあったかも知れませんよね(笑)

 

竹中

実際はもちろん、そんなことはまったくなく、社会的意義があるアクションを起こしたいという一心でやってきたことです。

なので、今回の成果を見て、ちょっと躊躇していた薬局さんや薬剤師さんにも腰を上げていただけたらと思います。日頃の取り組みを見直して、積極的にエントリーしてもらえたらうれしいです。

第2回も、第1回に倣っていきますが、より多くの方に知ってもらうために、もう少し大きめの会場を用意したいと思ってますし、参加していただく方やエントリーしてくれた薬局の方には、何か還元できるようにしていきたいです。

目下、運営スタッフも募集しています。協賛していただける企業さまも募集しています。何よりも、エントリーしてくださる薬局さんが増えることを目標にしていますので、どうぞ多くの方にご協力をお願いします。

 

比留間

実は私は、自分たちの取り組みを発表することと同じくらい、他の薬局さんの取り組みを知ることができたことの意義は大きかったなと感じているんです。ふだん、なかなかそういう機会がないので、それにわくわくしました。

 

竹中

それもこのアワードの面白い点だと思います。実際、ヒルマ薬局さん以外の薬局さんのプレゼンは、そういうニーズがあるということなんでしょうが、やはり地域のつながりを深めるようなものが多かったように思います。

もちろん、それもとても大切なことですが、次回エントリーしてくださる方には、それに囚われず、もっともっと自由な発想で臨んでもらっていいと思っています。

立候補だけでなく、他者(社)推薦もあっていいかなあとも思っていますし、事務局としてもよりよい形を考えていきたいです。

 

比留間

患者さまにとっては、この薬局アワードというものがどんなメリットになるんでしょう?

 

竹中

私としては、ご自身のかかりつけ、行きつけの薬局を持っていない患者さまが多い現状を変えたいんですよね。

このアワードを通して、さまざまな薬局さんの取り組みを知ってもらいたい。そして、かかりつけ薬局を自分で選ぶ、そういう考えるきっかけづくりになればいいと思っています。

 

比留間

ちなみに、ウチのように一度最優秀賞を取ってしまったら、もうエントリー資格はないんですか?

 

竹中

いえ、もちろん何回でも挑戦していただけます。2連覇、3連覇を狙ってください。

 

比留間

それはハードルが高いですね(笑) でも、来年もがんばろうかな。

 

 

対談者プロフィール

竹中孝行さん
たけなか・たかゆき 株式会社バンブー 代表取締役、一般社団法人薬局支援協会 代表理事、薬剤師。1984年生まれ、静岡県出身。共立薬科大学卒。外資系製薬会社に勤務後、調剤薬局勤務を経て独立。薬局事業、介護事業、岩盤浴ヨガやエステなどの美容事業、コラム執筆・監修などのメディア事業、ゆるキャラ事業などを手がける。

比留間康二郎さん
ひるま・こうじろう ヒルマ薬局 取締役、東京薬科大学 非常勤講師、薬剤師。1980年生まれ、東京都出身。東京薬科大学卒。東京・池袋で四代続く歴史を持つヒルマ薬局。約20年前に東京・板橋に開局した小豆沢店は、保険調剤や医薬品の販売、健康相談や在宅介護支援などを通して、地域医療のために貢献している。

 

ファーマシストライフ編集部
(取材・文/三浦天紗子、写真/土佐麻理子)

みんなで選ぶ 薬局アワードとは? 】
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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