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金太郎薬局の取り組みとは -第5回 みんなで選ぶ薬局アワードのプレゼン紹介

今回は「第5回 みんなで選ぶ 薬局アワード ONLINE」に代表薬局として登壇した、金太郎薬局(京都府) 川野義光さんのプレゼンテーションをご紹介します。

川野義光さん「薬局×弁当屋!?あなたの口に入るもの、全て責任持ちます」

今、これをご覧のあなた、あなたには助けたいと思う人はおられますかね。もしおられるようであれば、ぜひその方のことを思い浮かべながら、僕の話を今日は聞いていただければと思っております。

『薬局×弁当屋』ということでお話しさせていただきます。株式会社メタルファーマシー金太郎薬局、金太郎弁当という店舗を運営しております川野と申します。よろしくお願いします。

僕たち金太郎薬局では、在宅医療というのに力を入れていまして、毎日多くの患者さんのお宅を訪問しています。

僕自身も少し前まで薬剤師として在宅の現場に出ていて、本当にたくさんの患者さんと関わりを持ちました。今回は、その中でお弁当屋さんをオープンするきっかけとなった1人の患者さんとのエピソードというのをお話ししていこうと思います。

お話の主役は70代の男性。僕はこの方を「おっちゃん」と呼んでいました。今回もあえて「おっちゃん」と言います。このおっちゃんのところには、ケアマネージャーさんから依頼を受けて、訪問を開始させてもらったんですけれども、まぁひどい状況で。家の中で犬を放し飼いにしていて、新聞紙がバーッと敷いてあるんですね。においとかも結構すごくて、部屋中ゴミだらけ、おっちゃんは何を言っているのかよく分からないという感じで。もちろん薬なんて、もうぐちゃぐちゃになっていたので「これはやりがいがあるな」と訪問を開始しました。

そんな状況の中、しっかりお薬を飲んでもらえるように、あれやこれやとお手伝いをしていきました。初めのうちは、週1回訪問させてもらっていたんですけれども、だんだん「通帳がどっか行った」とか「水道代払ってないから止められる」みたいなことで呼び出されることが増えていって、結局、週3回ぐらい訪問していたと思います。そうやって深くおっちゃんと関わっていくうちに、とあることに気付いたんです。

それは、おっちゃんの口の周りがいつも黒いんですね。最初は汚れかな、お風呂に入ってないのかなみたいに思っていたんですが、実はちょっと違って。これ『銀チョコ』という菓子パンを食べまくっていたんですね。しかも生クリームがツインラインになっているダブルです。これは、スーパーなどで売っている、めちゃくちゃおいしいパンなんですが、これを毎日食べていたと。だから口の周りが黒かったんですね。

これはおいしいんですよ。おいしいんですけど、さすがに毎日は栄養バランス的にまずいだろうということで、何か別のものを食べてもらおうと思って、訪問のときにコンビニ弁当なんかを買っていたんですね。

しばらくそれを続けていましたが、やっぱり人が作ったものを食べさせてあげたいなという思いになってきて、近所の居酒屋さんを何軒か訪ねて、前日の残りものを安く譲ってくれないかと思い、何軒か当たってみました。でも、前日の残りものを渡すのは衛生的にどうなんだという話だったり、そもそもロスがそんなに出ないということで、結果としてそれはNGになってしまいました。

仕方ないので、しばらくコンビニ弁当を続けていたんですが、そんな中ちょっと事件が起きました。おっちゃんの飼っていた犬が死んでしまったんです。僕が行ったら、もうパタッと倒れていて…。大切な家族がいなくなったということで、おっちゃんの状態がかなり悪くなってしまったんですね。すぐ怒ったり、すぐ泣いたり、徘徊してしまったり、そんな状況になってしまったので、自宅で過ごすのはちょっと難しいねという判断になり、高齢者の施設に入居することになりました。

ここで、おっちゃんとの日々は僕の中でいったん終わりを迎えるのですが、このおっちゃんとの日々は僕の中でとても大きく、考えさせられることが多くありました。

僕は、たまたま薬剤師でケアマネージャーさんから依頼を受けて、おっちゃんのことを助けたいなと思って関与することができたのですが、僕のいる京都市伏見区や全国、そしてあなたの街にも絶対にまだまだおっちゃんのような人はたくさんいると思うんです。そんな人たちを、僕は勝手に「銀チョコ難民」と呼んでいます。こういう一軒家を見ると、銀チョコがあるんじゃないかというのを日々思っています。

そんな銀チョコ難民の人たちに何かできることはないのかなと考えた僕なりの結論が「手作り健康弁当を作って届ける!」ということです。

薬剤師と管理栄養士が監修した弁当というのを自分たちで届けるということで見守りも一緒にできる。そんなことをやらないといけないなという義務感もあって、金太郎弁当というお弁当屋さんを今年3月にオープンしました。

管理栄養士さん考案の日替わり弁当を提供していて、1週間で栄養バランスが取れるように献立を組んでいます。こちらの画像はメニュー表なんですけども、茶色で囲っている所に栄養価なんかも載せています。塩分も控えめになっているんですが、本当にめちゃくちゃおいしいです。苦労の賜物だなと思っております。

薬剤師監修ということで、お弁当に使っている食材であったり、季節に合わせた薬膳の知識などワンポイントアドバイスという形で、お弁当のふたの所に付けてお渡ししているので、薬剤師の価値も感じてもらえるかなと思っております。

一番大切なのが、薬局と連携した見守りというところですね。おっちゃんとは別の方なんですが、下の写真の方については今、薬局が週1回、弁当屋で週3回訪問をしており、薬局単独と比べて、かなり多く接点が取れているかなと思います。

そのおかげか「あんたが来るのを待ってたんよ」みたいなうれしい言葉をもらったりしています。あと、これは現場ではすごい困っていることなんですけども、元気になってお友達と遊びに行く機会が増えたんですね。訪問してもいない、みたいなことが結構あって(笑)。

現場としてはすごく困っているんですけど、僕としてはお弁当を食べて見守りも行って、その結果、元気になってくれているのかなと思って、ひそかに喜んでいます(笑)。

この見守り、弁当屋のメンバーっていうのは、もともと医療従事者ではないので、やっぱり専門知識とかはないんですね。でも、社内のコミュニケーションツール(Slack)を活用して、本当にささいなことでもどんどん共有してもらって、頻繁にやり取りしていく中で、少しずつ大切なポイントっていうのを把握してきてくれているかなと思っています。

事例としては、お弁当屋さんが訪問したときに、患者さんがいつもと違う病院を受診したということが分かって、それを薬局に伝えてもらったことで、薬局からの早期対応につながるというような事例もありました。

このように、薬局と弁当屋という異なる切り口で患者さんに介入していくことで、より価値の高いサービスというのを提供できるのではないかなと思っています。

そして、これです。

人の口から入るものは、薬と食事しかないんですね。その両方をサポートできる事業って本当にステキなことだなと思いませんか。僕はめちゃくちゃ思っています。

あのおっちゃんをなんとかしたい、助けたいと思って始めた弁当屋なんですけども、こんなにステキな思いにさせてもらえて、こんなステキな仲間に出会えて、結局これなんですね、「僕が助けたいと思っていた人に助けられているんだな」ということを本当に心から気付かされています。

皆さんも助けたいと思う人に手を差し伸べていたら、実は自分が助けられていたなんていう経験はありませんかね。きっとどこかであるのではないかなと思っています。そんなことを感じさせてもらえる事業を僕たちはしています。

最後に後日談を1つ。おっちゃんのその後なんですけども、おっちゃんの入所している施設に、今もお薬と弁当を届けています。

ということで、金太郎薬局と金太郎弁当の『薬局×弁当屋』の取り組みの発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

審査員からのコメント

司会:

金太郎薬局の川野さん、ありがとうございました。それでは、さっそく審査員の方からコメントを頂戴したいと思います。鈴木様、お願いいたします。

患医ねっと 代表 鈴木 信行 氏

鈴木(信):

トップバッターの発表、お疲れ様でした。緊張されたかなと思います。どうもありがとうございます。

薬局っていうのは、他の患者さんや地域の方の生活を支える他の業界とのコラボって、とても相性がいい業態だと思っているので、そういう中で弁当というところに着目されたというところで、ステキな活動だなと思いました。2点、質問させていただきたいと思います。

まず、1点目。お弁当の配送のとき、その配送される方が医療者ではないという中で、見守りという役割もあるとおっしゃっていたのですが、弁当を配送される方はどういう心掛けというか役割を持ち、具体的に御社の中でどういう指示をし、どんな見守りをしながら配送されているんでしょうか。

川野:

ありがとうございます。お弁当屋さんのメンバーは、本当に医療従事者ではないんですよね。なので正直、最初は「何をしたらいいの!?」みたいなところから始まっていて(笑)。「とりあえず気付くことを全部報告してくれ」みたいな話をしていたんですけども。

今、特に対患者さんということでやっているのは、お薬カレンダーなどに薬局がお薬をセットしているんですけど、その飲み残しなど、行ったときに必ず報告してもらうということをしています。

あと、直接そこでアドバイスはできないとは思うんですけど、体調面のお伺いをして、それを薬局のほうに伝えてもらって薬局からフィードバックする、というところであったりとか。

また、薬などを購入されることもあります。例えば湿布とか、ちょっとしたお薬。薬局で売れるようなものに関しては、使用状況を確認して、薬局に伝えてもらって、その後、薬局から持って行ったり、そういうようなことは頻繁にしています。

鈴木(信):

ありがとうございます。単にお弁当を渡すだけで終わらないというところで、とてもステキだなと思いました。

もう1点お伺いしたいのが、薬局のお客様とお弁当のお客様、その相乗効果というのも狙えるかなと思うんですけれども、経営者としてその相乗効果はどういう形で期待をしていますか。あるいは、具体的にどんなことを狙い、活動されていますか。

川野:

お弁当と薬局っていうことで、入り口が結構違うなと思っているところがあるんですね。

薬局で在宅医療で関わらしてもらう患者さんって、かなり症状が進んで状態が悪くなってからお付き合いが始まる、ということが往々にしてあると思うんです。ただ、お弁当屋さんのほうで関わりだすっていう場合は、もっと手前の、初期の部分から関わりだせるというところがあります。

お弁当屋さんのほうで、ちょっと問題がありそうだなという方が見つかったら、薬局のほうに情報共有していって、例えば薬局の介入が必要だったらもちろん薬局が行きますし、介護職の方につなぐ必要がありそうだったらそちらも介護職のほうにつないで、適切にみんなで見守っていくということが早期から達成できるのかなというのが一番の思いです。

鈴木(信):

そうですね。まさに入り口が違うとおっしゃっていましたけど、入り口が違うからこそ今後伸びるような形での営業形態っていうんですかね、そういう仕組みかなと思いました。どうもありがとうございます。

司会:

ありがとうございます。では、もうひと方。みおしん様、お願いいたします。

麻酔科専門医兼メディアアーティスト みおしん 氏

みおしん:

発表お疲れ様でした。「口から入るものは薬と食べものだ」ってお話は本当にそうだなと思います。食べることは生きることだということを、自分も思っているのですごく共感できました。とはいえ、自分も忙しいと、全然食事のことを気にしないで冷凍食品やUberを使っているので、むしろ私もお弁当屋さんを利用したいなと思いました(笑)。

川野:

一応、高齢者の方向けというところからスタートした事業なんですけど、忙しい主婦の方であったり、働かれている方にも、結構ご利用いただいています(笑)。

みおしん:

そうなんですね。もう1点思ったことは、おじいちゃん、おばあちゃんはだんだん孤独になりがちで、1人で食事を取るようになると、セルフネグレクトみたいにどんどん食事を軽視してしまうので、そういった意味でもお弁当屋さんが来て、見守ってくれるっていうシステムは素晴らしいなと。着眼点がすごいって思いました。

川野:

ありがとうございます。配食事業って冷凍でお渡しするケースが結構多いかなと思っているんですが、正直、おいしくないから食べない、みたいなところってあると思うんですね。なので、やはりおいしさは必ず実現して、食べたいと思ってもらえるようなものを届けるというのは心がけてやっております。

みおしん:

ありがとうございました。私からは以上です。

みんなで選ぶ 薬局アワードとは? 】
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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