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病院薬剤師に聞いた!薬剤師の病院転職 成功のポイント
平成24年度診療報酬改定で病棟薬剤業務実施加算が新設され、その後もチーム医療を推進する観点から薬剤師の配置について評価が見直されつつあり、病院で働く薬剤師=病院薬剤師への期待は高まってきました。
しかし保険診療に関しては、病棟に専任の薬剤師を置く、週20時間以上病棟に薬剤師が常駐する等、少ない薬剤師の人数では算定をとることが厳しい条件も多く含まれています。
さらに、ここ数年の国家試験の合格率は85%前後でやや低下傾向。資格が取れないなどの理由で内定辞退する学生がいれば、予定した人数の薬剤師を確保できないという問題があります。
こうした事情などから、病院薬剤師の需要は今後も増加し続けると予想されています。
今回は、病院薬剤師として働かれたことのある薬剤師Aさん(女性20代)に、病院で働くことになったきっかけや仕事のやりがい、大変さ、病院薬剤師としてのキャリアなど、病院への転職成功のポイントについて伺いました。病院勤務に興味がある薬剤師の参考になれば幸いです。
病院薬剤師を志望した理由
——まず、病院薬剤師を志望した理由を教えて下さい。
Aさん:
病院の方が、薬剤師としての専門性を発揮しやすいだろうと思ったからです。
- 扱う薬剤の種類が豊富であること
- 患者さんと過ごす時間が圧倒的に長いこと
- 他職種との距離が近いこと
が主な理由として挙げられます。薬剤師としてできるだけたくさんの業務に関りたいと考えていたため、病院勤務を選びました。
現在勤めている病院は、都内にある中小病院です。大病院とは違い、地域の患者さんに密着した医療を提供するのが役目です。
総合病院なので複数の診療科があり、小さな病院ですが豊富な症例が集まるのが魅力です。また二次救急を担う病院なので、回復期の患者さんだけではなく、急性期の患者さんにも携わることができます。
——働く病院はどのように選びましたか?
Aさん:
一番の決め手となったのは、スタッフ間の距離が近いことでした。
病院は医師、看護師、薬剤師、栄養士、リハビリスタッフ、事務等たくさんの職種が同じ空間に存在することが大きなメリットのひとつです。しかし、互いのコミュニケーションが希薄では、そのメリットを充分に活かすことができません。
現在勤務している病院は、スタッフ同士に垣根がなく、互いに相談しやすい雰囲気が作られていることが非常に魅力的でした。常に声をかけ合うことが習慣化しており、単に「仲が良い」とは違った一体感があります。
また病院の規模が大きくないため、他職種であってもすぐに互いの顔と名前を覚えられることも、垣根をなくす大きな要因のひとつだと思います。
実際に見学をしてみて、これらの点が非常に強く印象に残ったため、現在の病院を選びました。
病院薬剤師の仕事内容
———気持ちよく働く上で、スムーズなコミュニケーションは非常に重要ですね。具体的なお仕事内容についても教えて下さい。
Aさん:
私は正社員として採用されました。段階ごとにお話ししていきますね。
入職直後
Aさん:
まず調剤業務から始まります。
その後、調剤に慣れてきたところで調剤鑑査が始まります。病院では内服薬・外用薬だけではなく、注射剤も投与されている患者さんがほとんどです。内服薬と注射剤の相互作用等の確認もしなければならないため、鑑査にはとても神経を使います。
Aさん:
入院中の患者さんの薬はすべて調剤室で調剤されるため、毎週入院患者さんの薬を準備する日には一日がかりで調剤を行います。
調剤業務と並行してTPNや抗がん剤の調製も教わり始めます。調製では配合変化に気を付けなければなりません。同じシリンジで吸い取ると着色、沈殿や、力価が低下するものもあるため、手技だけではなく知識も必要です。
抗がん剤は特に配合変化や手技が多く、私は独り立ちまでに少し時間がかかりました。
3か月後
DI業務も担当となります。
前月の副作用報告、プレアボイド、新規採用薬のお知らせ、安全性情報等を中心にその都度必要な内容を盛り込みます。月の終わりに作成開始し、翌月の上旬に発行出来るよう準備します。
5か月後
発注業務も行います。在庫管理の仕事のひとつで、病院の経営にも関わる重要な業務です。
必要な薬剤は患者さんの症状や時期により変化するため、必要な量やものを見極められるように普段から処方に目を光らせることが必要になります。
半年後
ようやく病棟に上がるようになります。カルテを読み、患者さんの元へ行く前に必要な情報を集め、下調べを行います。
現在服用中の薬についての説明はもちろん、副作用の有無の確認や問題点の洗い出し、処方の妥当性の判断等を行います。
カンファレンスにも参加し、意見交換を積極的に行います。
病棟にはそれぞれ専任の担当薬剤師が配置されています。病棟で業務を行う日程が組まれている日はほぼ一日中病棟にいて、お昼休憩の時間以外はほとんど調剤室に帰ってきません。
この他にも病棟からの問い合わせの対応や、外部の薬局・病院、卸業者とのやり取り、各部署に配置している薬品の管理等の仕事があり、これらは入職後からすぐに始まりました。
また病院内には、各委員会が設置され運営を行っています。こうした委員会への参加も業務のうちのひとつです。
病院薬剤師のやりがい
——学ぶこと、覚えることがたくさんあり、大変そうですが、その分やりがいも大きいのでしょうか?
Aさん:
そうですね。他職種のスタッフに頼られ、様々な質問を受けると薬剤師として信頼されているなと感じます。病棟にいる時も、調剤室にいる時も、毎日とにかくたくさんの質問を受けます。
腎機能の落ちてきた患者さんへの投与方法や、血糖コントロールがなかなかうまくいかない患者さんの薬剤選択、脳梗塞疑いがある患者さんの注射剤の相談など、なかにはすぐには答えられない質問もありますが、そのような質問に答えられた時にはやりがいを感じます。
Aさん:
また副作用とみられる症状を発見し、自分が行った提案が実際に処方され、患者さんの容態がよくなった時にはやりがいだけではなく薬剤師としての誇りも感じます。
発見した副作用について、医師に報告と代案の提案を行うのは薬剤師の勤めです。しかし、実際にそれを行うことはなかなか簡単なことではありません。
だからこそ、処方に自分の考えが反映されるととてもうれしく感じます。
病院薬剤師の仕事の大変さ
——大変だと思うことはありますか?
Aさん:
他職種とどうコミュニケーションをとっていくか、ということは常に重要な課題のひとつです。
同じ医療職ですが、学んできていることも、日々の業務も全く同じではないため、お互いの常識がときにずれることもあります。
どちらが悪いということではなく、お互いにもっと相手のことを深く知ればそのずれは無くしていけるのですが、なかなか上手くはいかないことが多いです。
一人の患者さんに対してたくさんのスタッフが関与するため、たくさんの意見が存在します。この意見をお互いに対立させるのではなく、うまく融合していけるようにするには、日頃の密なコミュニケーションが不可欠です。
患者さんとのやり取りももちろんですが、同じ職場の仲間たちと薬剤師としてどう接していくかは、なかなか難しいところです。普段から良い雰囲気で働いている職場であっても、ときに悩む問題です。
病院薬剤師の仕事を通して身に付けたこと
——こうしたお仕事を通じて、どのようなスキルが身に付きましたか?
Aさん:
常にたくさんの問い合わせを受けるため、即座に簡潔に答えられるスキルが身に付きました。
病院のスタッフは常にたくさんの仕事を抱えており、時間に余裕がある人はあまりいません。そのため、相手を待たせずに簡潔に答えることが要求されます。
丁寧さももちろん大切ではありますが、簡潔さも重要です。忙しい時に長い解答や、複雑な解答を覚えていることは難しいです。
少しでも分かりやすく簡単に、という説明を心がけています。病院薬剤師という職業に就いてから、この点が磨かれたのではないかと思います。
病院薬剤師の給料
——お給料についてはいかがでしょうか?
Aさん:
そうですね…病院薬剤師という職業はそんなに高収入が見込める職種ではありません。
初任給は、一般の大卒1年目の社会人とあまり変わりません。その後の昇給率を見ると、むしろ普通の会社員の方が給料は良いと言えるのではないでしょうか。
薬剤部の中で役職に就けるようになればまた変わってきますが、役職に就ける人数は薬剤部の人数に対してとても少ないため、その可能性はあまり高くはありません。
役職に就いていない一般的な病院薬剤師の平均年収は350~450万円程度で、高くても550万円程です。調剤薬局やドラッグストアの給料と比べてしまうと、どうしても見劣りしてしまうことは否めません。
「薬剤師の職種による年収の違い」
病院薬剤師のキャリア形成
——病院薬剤師は、一般的にどのようなキャリアを積んでいくのでしょうか。
Aさん:
病院薬剤師として働いている人々の多くは、認定・専門資格の取得を目指しています。
各分野の資格を得ることが、病院薬剤師としてのキャリアとも言えます。資格を持つことでICTチームやNSTチームに加わり、より専門的な活動を院内で行えるようになります。
Aさん:
資格がなくてもこれらのチームに加わることはできますが、資格を持つ薬剤師がいないと診療点数が算定できないものもあります。認定・専門資格は病院の活動の範囲を広げ、利益にも直結するため、資格を持っている薬剤師は病院から重宝されるのです。
資格を得ると大抵の病院では資格手当が支給されるため、給料もアップします。
普通に働いているだけではなかなか大きな昇給は見込めないため、給料を確実に上げるためには資格を得ることが必要といえるのではないでしょうか。
病院への転職を考える人へのアドバイス
——病院薬剤師を目指している人、転職を考えている人に対してアドバイスがあればお願いします。
Aさん:
病院が薬剤師を求めているとはいえ、採用できる薬剤師の数には限りがあります。
実際のところ、病院求人は欠員補充のために募集が出るというのが現実です。
病院への転職を考える場合は、常に求人情報をチェックし、求人が出たらすぐに反応出来るようにすることが必要になります。
未経験者の転職は難しいと言われていますが、病院によって難易度は異なります。
急性期など、ハードな勤務形態の病院になればなるほど、未経験者の中途採用は難しくなります。しかし、未経験であるからといって諦める必要はありません。
リハビリ病院や回復期の病院では、未経験者でも転職可能な場所が多いです。そのような病院では勤務時間が短い、休みが多い等、比較的に働きやすい勤務形態であることが多いのが特徴です。
私自身としては病院薬剤師に向き不向きは無いように思います。
必要なことは、先ほど申し上げた他職種と上手く連携が取れるコミュニケーション能力と常に自己研鑽し続ける意欲です。
Aさん:
実際はそれに加えて、職場の雰囲気と自分のカラーが一致していることが重要になります。すでに働いている職員と自分の雰囲気が違うと、採用は難しくなってしまうということです。
雰囲気の合う病院を探すことが、薬剤師の病院転職 成功への近道です。
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ここで優良求人が豊富なマイナビ薬剤師の転職情報の中から、Aさんが薬剤師目線でピックアップしてくれたオススメの求人情報をいくつかご紹介したいと思います。
180床ケアミックス型病院の薬剤師求人(東京都町田市)
Aさん:
アットホームな職場であることが売りなのが魅力的です。研修制度が充実していることも、働いていく上で重要なポイントです。サポートがきちんと得られるようなので、ブランクがあっても安心して働けるのではないかと思います。
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参照: マイナビ薬剤師
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残業が少なく、休みも多いようなので無理なく働けそうです。総合病院であり、診療科が多いため豊富な症例を診ることができるのも魅力的ですね。
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日勤のみの就業時間は17:00まで。夜勤・当直が無しなら、体力に自信がない方でも心配ありません。急性期から回復期まで幅広い症例を扱うため、スキルアップには最適の病院だと思います。
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まとめ
病院薬剤師の需要はこの先もしばらくは増えていくものと予想されます。
需要が増えれば、当然転職のチャンスも増えます。研修がきちんと用意されている病院も増えてきているので、未経験だからと臆する必要はありません。
大切なことは、
- 自分のやりたいことや思い描くキャリアと志望する病院の方針が合っていること
- 職場の雰囲気と自分のカラーが合うこと
の二つです。
積極的に見学に行く等して、よく見極めることをお勧めします。たくさんある病院のなかから、自分に合った病院を見つけ出すことが転職成功のポイントです。
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