NPOに所属している薬剤師 (山の薬剤師たち) について

徳島県に山の薬剤師たちというＮＰＯ法人（特定非営利活動法人）があります。人口約930人、高齢化率が52％の山間地域である徳島県美馬市木屋平（こやだいら）地区において、地域唯一の薬局「こやだいら薬局」を運営しています。この薬局は2010年４月に開設されたばかりです。

その事業内容ですが、ＯＴＣ医薬品の販売および処方せんによる調剤、高齢者および障害者の支援、在宅医療チームとの連携、大学の実習生の受け入れなどです。またこうした通常の薬局業務の他に、水質調査や花粉飛散調査なども行っています。医師と違い薬剤師がへき地の医療に関わっていない現実を憂慮し、薬学生や若い薬剤師が参考とするモデルケースを作りたいと考えた事が薬局開設のきっかけだそうです。

現地には元々、唯一の医療機関として診療所がありました。当初そこの所長の見解は、必要性が感じられないという否定的なものだったそうです。しかし、何度か協議を重ねるうちに地域住民にメリットがあると判断し、院外処方せんを発行するにいたったとの事です。

今では処方箋枚数は１日約20枚におよび、大学の実習や訪問服薬指導も始まっているそうです。また地域の１級河川である穴吹川の水質調査や、花粉情報の提供を毎年行っており、関係機関に調査結果の提出を行っています。また地域住民との触れ合い活動の一環として、地域のお祭りやボランティア活動にも積極的に参加しています。

へき地では医師不足はしばしば報道されますが、薬剤師に関してはあまり問題になる事はありません。実際にこの木屋平地区でも、彼らが来るまでは看護師が調剤業務を行っていたそうです。そうした現状に積極的に働きかけ、現地のそしてひいてはへき地医療全般におけるニーズを掘り起こす意味で、この「山の薬剤師たち」の活動は非常に注目すべきものであると思います。