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服薬指導シリーズ ‐チーム医療への応用“コンプライアンスからアドヒアランスへ”‐

近頃、新薬の説明会や勉強会でさかんに「アドヒアランス」という言葉を聞くようになりました。初めて耳にするという薬剤師の皆さんもまだ多いのではないでしょうか?最近の医療業界では、これまでの「コンプライアンス(compliance)」から新しい概念である「アドヒアランス(adherence)」へと考え方が移行しています。

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今回は服薬治療におけるコンプライアンスの問題点、アドヒアランスの意味と利点、そして実際どのように薬剤師がアドヒアランスを服薬指導に応用していくかをお話していきたいと思います。

服薬治療はコンプライアンスからアドヒアランスへ

コンプライアンスとは

コンプライアンス(Compliance) は、法令遵守と訳されますが、医療の場では患者が医療者の指示通りに、処方された薬を服用することを意味します。

例えば、調剤薬局での薬歴に「コンプライアンス良好」と記入されていたら、その患者さんは医療者の指示通りにきちんと薬を飲んでいます。つまり、薬の用法用量を守り、飲み忘れや中断することなく服用できているということです。

反対に「コンプライアンスが悪い」と書かれていたら、その患者さんは医療者の指示通りには薬を飲んでいないということになります。

コンプライアンスの問題点

コンプライアンスの概念では、治療やその計画を行うのはあくまでも医療者であって、患者はその計画をしっかり守り、従う必要がありました。

しかし、この考え方だと、患者が頻繁に飲み忘れたり、あるいは自己判断で服薬を中断したりして病気の再発可能性が高いことが問題となっていました。この理由としては、薬剤の服用の不快感、副作用への懸念、治療に対する意欲低下などが挙げられています。いずれも患者が服薬の意義や内容を理解しないままに治療を受けていることに起因しています。

コンプライアンスの考え方では、患者はあくまで医療者の指示に従うという関係性のため、患者は治療決定に対して受動的です。そのため、服薬内容への理解も不足しているケースが多いのです。

※参照:鹿児島市医報 第47巻 第8号 2008|コンプライアンスとアドヒアランス

このコンプライアンスにとってかわり生まれた考え方が「アドヒアランス」という概念です。

アドヒアランスとは

アドヒアランス(Adherence)とは、患者が積極的に薬剤の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを言います。これは、患者の治療への積極的な参加が治療成功の鍵であるという発想から生まれた概念です。従来の「患者は治療に従順であるべき」という患者像から脱する考え方になります。

アドヒアランスでは、医師と患者がコミュニケーションを取りながら薬剤を選択し、患者は医師、薬剤師から提供された薬の情報に納得した上で服薬を行います。

患者は、薬の効果や副作用の説明を十分うけたうえで薬の決定をし、服薬するわけですから、自己判断による服薬中断や飲み忘れが減ります。

WHOでは、9種(喘息、癌、うつ病、糖尿病、てんかん、HIV、高血圧、喫煙、結核)の疾患にこのアドヒアランスを取り入れた研究レポートを発表しています。

※参照:WHO| Adherence to Long-term Therapies -Evidence for Action-

では、実際に薬剤師はアドヒアランスをどのように服薬指導に取り込んでいけばよいのでしょうか。

アドヒアランスを取り入れた服薬指導

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いざ、「服薬指導にアドヒアランスを応用してみましょう」と言われても、どのように患者さんと対話したらよいのか少しとまどってしまいますよね。日健教誌のレポートには慢性疾患患者を対象とした服薬アドヒアランスの尺度が示されているので、とても参考になります。

服薬アドヒアランスの尺度項目 (服薬指導におけるチェックリスト)

服薬アドヒアランスは、大きく4つの項目に分けられています。

1. 服薬における医療従事者との協働性
2. 服薬に関する知識や情報の入手と利用における積極性
3. 服薬遵守度
4. 服薬の納得度と生活との調和性

1. 服薬における医療従事者との協働性

  • 薬について医師などの医療従事者と自分の思いや目標を共有できている
  • 薬について医師などの医療従事者と自分の今までの治療の経過を共有できている
  • 薬について医師などの医療従事者に自分の質問を気兼ねなくしている

2. 服薬に関する知識や情報の入手と利用における積極性

  • 自分の薬に必要な情報を探したり利用したりしている
  • 薬を継続するための対処をとっている(日常生活での工夫など)
  • 薬の副作用・アレルギー症状、いつもと違う症状について報告している
  • 自分の使用している薬やその必然性について知っている
  • 自分の使用している薬についてわからないことを尋ねている

3. 服薬遵守度

  • この三週間、薬を一日の指示された個数・回数通りに使用している
  • この三週間、薬を指示された時間通りに使用している
  • 薬を自分だけの判断でやめることはない

4. 服薬の納得度と生活との調和性

  • 薬の必要性について納得している
  • 薬の使用は食事、歯磨きのように自分の生活習慣の一部になっている
  • 薬に対する声かけをしてもらうなど、家族や周囲の人の助けを得ることに抵抗がない

※参照:日健教誌 第22巻 第1号 2014年|日本の慢性疾患患者を対象とした服薬アドヒアランス 尺度の信頼性及び妥当性の検討

以上が服薬アドヒアランスの尺度項目です。各項目をみると、アドヒアランスでは患者さんの自発的な服薬に重きがおかれているのが、良くわかります。

具体的に記されているので、これからの患者さんへの服薬指導における会話のポイントとして役立ちそうですね。

チーム医療の中でアドヒアランスの具現化

忙しい薬局の外来業務の中で患者さん一人ひとりにアドヒアランスを意識した服薬指導を十分に行うのは大変…というのが現実かもしれません。しかし、近年多くの薬局で在宅業務が浸透しつつあり、チーム医療の一員としてアドヒアランスを意識した服薬指導を実践並びに発揮できる機会が多くなってきました。

アドヒアランスの最終的目的は、患者さんの治療成果とQOL(生活の質)の向上です。在宅医療では、患者さんをサポートする医療スタッフだけでなく患者さん本人、ご家族、地域が一丸となって取り組みます。普段の薬局業務の服薬指導だけでは知り得なかった、患者さん本人の生活の実態(経済面、病気への不安、サポートしてくれる家族の有無など)を薬剤師自身が目で見て耳でヒアリングすることが可能となります。

では、実際にアドヒアランスを向上させるためにどのような具体例があるか見ていきましょう。

  1. 経済面での具体例:先発医薬品からジェネリック医薬品へのご提案
  2. 社会面での具体例:訪問介護・看護、オンライン受診のご提案
  3. 薬の服用に関する具体例:薬の飲み忘れを防ぐために一包化、薬の剤型変更のご提案

このように患者さん一人ひとりの生活や環境を知り理解するだけでも、医師をはじめチー
ム医療に携わるスタッフへの相談や提案が可能となります。

これらを積み重ねて行くことでアドヒアランス向上へつながり、維持していくためには患者さんを中心としたチーム医療に関わる全員で情報共有しコミュニケーションを図っていくことが重要となるでしょう。

おわりに

今回は、最近話題になっているコンプライアンスの問題点とアドヒアランスの意義、またアドヒアランスを服薬指導に応用するときの具体的項目についてお話ししました。

薬剤師はアドヒアランスの考え方を軸に、患者さんが自主的に服薬治療に関われるよう支援していくことが求められるでしょう。

時代は確実にコンプライアンスからアドヒアランスへと変わってきています。

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