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【最優秀賞】 徳吉薬局さかえまちの取り組みとは -第6回 みんなで選ぶ薬局アワードのプレゼン紹介
今回は「第6回 みんなで選ぶ 薬局アワード」で最優秀賞を受賞した、徳吉薬局さかえまち(鳥取県) 徳吉雄三さんのプレゼンテーションをご紹介します。
「病児保育室×薬局」モデルで地域課題を解決!
それでは、この題目で発表させていただきます。
薬局の紹介
まず、薬局の紹介を簡単にさせていただきます。徳吉薬局は、鳥取県で9店舗薬局を経営しておりまして、経営理念は「More Than A Pharmacy(薬局以上の存在)」です。薬局事業の他に様々な事業を行っておりますけれども、この度は、病児保育事業について発表させていただきます。
病児保育について
皆様、この37.5という数字を見て思い当たることはありますでしょうか。体温は年齢により異なりますが、小児では37.5℃以上を発熱とみなしています。これに準じて保育園では、体温37.5℃以上の子どもは預からないこととしていますし、保育中に発熱が見られた場合は、親御さんへ迎えの連絡を入れるというルールになっていることが多いようです。このようなとき、病気の子どもを預け入れる施設が病児保育事業です。
病児保育のことを簡単に説明します。いわゆる病児保育とは、子どもが病気にかかったときに、家庭での保育が困難な保護者に代わって、保育または看護すること、と定義されています。その中で、病児・病後児対応型というのがありまして、その区分は2つあります。
病気の子どもを病期から回復期まで預かる「病児保育」と、例えば溶連菌で熱はないけども、回復期で登園許可が出ないなど、回復期の子どものみを預かる「病後児保育」というものがあります。我々は、今この病児保育というのを運営しております。
余談ですが、2015年に『37.5℃の涙』という病児保育にスポットをあてたドラマが放送され、話題となりました。なんとこのドラマの主人公の保育士役の蓮佛美沙子さんは、鳥取県鳥取市の出身の女優さんなんです。なんだか運命を感じてしまいますね。
今回の取り組みを始めたきっかけ
私たちが病児保育を始めたきっかけは、薬局を利用するお母さん方との会話でした。「仕事が忙しい時期なのに休むことになって。会社で肩身が狭いんです」「娘が保育園で熱を出して迎えに来てください、というので仕事を早退した」とかですね。
おばあちゃんもこんなこと言ってます。「孫を預かっているけれど、熱が高いと怖くなる」「娘に言われて自分も仕事を休んでいる」「孫を見ていたら疲れてめまいになった」。
これはよくないなあと感じていました。あるお母さんからこんなことを言われました。
「病児保育というのがあるんですよ。でも、定員が4名なんです。電話してもなかなか予約が取れなくて…」
そのとき、私は初めて病児保育のことを知りました。先ほどのようなお母さん方の話を聞いて、病児保育のこととか、共働きについて、当時私なりに調べてみました。
1つ目は、鳥取県の共働き率が全国的に高いということです。実は、共働き率上位の県というのは、待機児童数が0人という県でもあります。待機児童の少なさが、共働き率の高さと言えるかもしれないというのがわかりました。
2つ目は、やはり鳥取市は病児保育施設や定員が少ないということでした。病児保育施設は利用定員4名ですね。やっぱりそうでした。潜在利用者数を1日16名と考えて計算しても少ないですし、感染症拡大時にはもっと需要があるのではないかという風に考えました。
薬局主導の病児保育施設を始めるにあたって
我々ですね、ちょっといろいろステークホルダーに話をしに行きました。まず、鳥取市民の「病児保育を増やしてほしい」という声を聞けました。で、我々が病児保育施設をやりたいと思いました。
次に「病児保育っていうのがあるんですけど」と近隣の医療機関の小児科の先生に聞いたら「実は私、病児保育をやりたいと考えたことがあったんです」と言われたんですね。
「ああ、そうだったんですね。じゃあ、いろいろ県のほうにも聞いてみます」って、鳥取県のほうに聞いてみました。そうしたら、鳥取県子育て王国課の方に「病児保育やってくださる企業待ってたんです!」って言われたんですね。
これはすごい反響だなあと思いました。ここまで来たらもう仕方ない。「よし、じゃあ、やるか!」ってなったわけです。スタッフのみんなの「めっちゃいいじゃないですか、やりましょうよ!」という声を聞いて、それなら「いいことなんだからやろうかな」という風に考えました。
薬局主導の病児保育施設開所で一番大変だったこと
開所にあたって、2015年の12月の開所を目指しまして、5,6月から動き始めたんですが、開所にあたって大変だったこと。一番大変だったのは、看護師配置でした。私たちは薬局ですので、看護師さんを雇用するっていうことはないうえに、かなり難航しました。一時は看護師さんを雇用できないので、もう諦めようかなあと思った時期もありました。
そんなときですね、鳥取県の方ですね。内閣府地方分権改革・提案募集方式っていうのがあって、「看護師配置を見直すように提案してみましょう」って言われたんですね。そして、提案してみようと採択されて、看護師さんが常駐していなくても何かあった場合には近隣の医療機関の看護師さんが駆け付けて対応にあたることが可能な場合には、必ずしも看護師配置は求めないっていうことに変更されたんですね。
これでやっと医療機関と提携して開所することが可能になりました。これが決まったときは本当に嬉しかったですね。この事例は、地方分権改革・提案募集方式の好事例としてテレビにも取り上げられました。
そして、2015年12月1日に開所いたしました。「薬局が運営するのは全国初だ」と新聞記者さんに言われまして。開所する前から新聞記事ですとか、あとは「鳥取市民の者です」と手紙が来て「頑張ってください」と、激励の言葉もいただくようになりました。すごく嬉しかったですね。
病児保育施設「さかえまち」について
病児保育の施設の内容はこんな感じです。鳥取県産の杉の木を使ってですね、柔らかい感じで温かみのある雰囲気で保育できる環境を整えています。
1日の流れはこのような流れです。
基本情報としましては、保育士さんの配置基準はいわゆる3:1です。利用料金は、月の初回2,500円で、月の2回目以降は1,000円です。利用定員は、保育士さんを今、正社員8名雇ってますので、利用定員18名で運営しております。
特徴としましては、薬剤師・医師と連携しているのはもちろんなんですけども、特にお子さんが薬を飲むときに、お医者さんと薬剤師と保育士さんと一緒に見てですね、「わ~!飲めた飲めた~!」なんてことをやりながら、もし苦いと言ったら剤形変更するとか、そういうことを考えながらやっています。
食事は管理栄養士さんが献立・調理してくれています。で、お母さんもけっこう心配なので、初めてのことなんでですね。1日2回は写真付きのメールですね。元気にやっていますよ、ということを送ることをしています。施設の壁紙も頻繁に変更してます。あとは、朝の電話はけっこう大変なので、今はアプリケーションで予約できるようにしています。けっこう好評です。
利用者の反応は?
利用者の方のお声ですけども、「仕事が休めないのでありがたいです」とかですね。「見る人がいなくて、仕事も休むこともできないので利用しています」とか、「この場所があるので、仕事も頑張れます」とかですね。あとは、「クリニックと薬局と病児保育と3者で見ていただいて本当に安心して利用できています」という声があって、すごく我々としても嬉しい限りでございます。
このグラフは、開所から最近までの月ごとの利用者人数の推移を示しています。このように、月の利用者数がけっこうばらばらなのがわかると思います。
これが、利用者の年ごとの推移になります。2019年まで1,418名と、利用者が増えてきていたのですが、2020年4月から新型コロナの影響もあって利用者が減少しました。2022年は少しずつ利用者も増えてきておりまして、今後もコロナ前までとはいかないかもしれないですが、また少しずつ増えてくるんじゃないかなという風に考えています。
今後の計画について
元々、鳥取市内には千代川っていう川が縦に流れてるんですが、その東側エリアには病児保育が3施設ありましたが、西側エリアはありませんでした。市議会でもこのことは議題として挙げられていて、この西側エリアに病児保育を、という声がけっこう挙がっておりました。私たちは、今後も病児保育利用の増加を視野に入れて、また、鳥取市の課題を解決するべく、もう1つ病児保育施設を増やそうと計画をしております。
※2022年11月13日の薬局アワード開催当時の情報です
こちらになります。病児保育施設「こやま」ですね。来週、2022年11月21日にオープンします。今、準備を着々と進めているところです。
病児保育室とくよし「こやま」と「さかえまち」、施設を2つにすることによってどんな価値が得られるのかなと考えていまして、基本的には受け入れ部屋数が4部屋~8部屋になるということで、より多くの感染症に対応できるんじゃないかなという風に思っております。
あと、保育士配置の効率化ということで、どちらかの施設の予約が多いときには、その保育士さんの配置を変更して、受け入れできないということを防ぐことができるんじゃないかなという風に考えております。
あと3つ目は、多くの医療機関の病児保育施設が、1医療機関との連携なんですけども、今回「こやま」にできるっていうことで、4医療機関と連携しておいて、今までかかりつけ薬局、かかりつけ医療機関にかかれなくて病児保育に入っていたものが、かかりつけの医療機関で病児保育に行けるということもできるんじゃないかなという風に考えております。
おわりに
このように、薬局と病児保育を運営して思うことがあります。商品とか、サービス、人。その他いろいろなことにおいて、価値っていう言葉を整理する際に、2種類の捉え方ができるという風に言われています。それは、世の中には2つのものしかない。「役に立つもの」「意味のあるもの」という言葉です。私はこの言葉が好きです。
特に「意味があるもの」っていう言葉がすごく私の心の中で打たれていまして。医療として意味があるという。そのためになるには、やっぱり課題を発見する力っていうことですね。あとは、あきらめない力がすごく大事。あとは、課題を解決して、実行していく力がすごく大切なんだなっていう風に感じました。私たちが企業として、地域の皆様の課題に着目して解決に取り組んだ事例が、今回たまたま薬局と病児保育だったのかもしれません。
最後になりますが、これからも患者さん、鳥取市民の生活を支える薬局になりたいと考えてますし、それこそが薬局以上の存在、経営理念そのものだと考えております。地域の皆様に意味のある企業として価値を提供できるように、さらにさらに頑張っていきたいと思います。本日はご清聴ありがとうございました。
審査員のコメント
司会:
ありがとうございました。それでは、審査員の方からコメントを頂戴したいと思います。中平様、お願いいたします。
薬学部5年 / 医療系学生団体Links-mil 代表 中平瑛子 氏
中平:
素晴らしいご発表ありがとうございました。病児保育と薬局っていう、とても珍しい取り組みをされていて、興味深く傾聴させていただきました。
2点質問があるんですが、1点は看護師さんが非常駐でも病児保育の運営が可能ということですが、子どもさんって体調の変化が急に起こることがあると思うんですが、そんなときにどういう策を取られているのかっていうのをお伺いしたいのと、もう1点は保護者の方に対して、1日2回写真付きのメール等でフォローされてるということだったんですが、実際それ以外にも安心のために何か取り組みなど、今後こうしていきたいなって思われてることはありますでしょうか。
徳吉:
ご質問ありがとうございます。まず、1点目の看護師さんがいないっていうことなんですが、例として、これまでに熱性けいれんが起きたことが、開所以来4回ありました。そのときはすぐ下にクリニックがあるので、そこですぐ看護師さんに来ていただいて時間を測ったりだとか、幸い救急車を呼ぶことはなかったんですけれども、そういう形ですぐに連絡は取れて、携帯電話で繋ぐこともできるような体制を整えてはいます。あとは、嘔吐して詰まって呼吸が苦しくなったということがあったんですが、そこで1回救急車を呼んだことはあります。看護師さんとの連携も含め、どちらかというと、保育士さんの教育にけっこう力を入れています。こういうときはこういう風に対応するんだよ、ということを小児科の先生とディスカッションしながら教育させていただいてます。そこは、普通の保育士さんとけっこう違うのかもしれないですね。
あと1点、メール機能の話ですけども、メール機能は最初からやったほうがよいのではないかと思って進めていたのですが、やはり、ほとんどの方がメール登録されています。我々がアプリケーションを利用して予約などもやっているので、その結果だと思います。今はどういう1日の流れだったか、1日の結果を紙で渡してるんですが、今後はそれをPDFで残して「このときはこうだったよね」っていう比較をできるようにしようかな、と考えています。以上です。
中平:
ありがとうございます。
司会:
ありがとうございます。もう一方、薬剤師ヤクヤク様、お願いいたします。
(TikTokフォロワー15万人)薬剤師ヤクヤク 氏
ヤクヤク:
素晴らしいご講演ありがとうございました。本当に活動内容自体がとんでもなく素晴らしいなと思いまして。まず、恥ずかしながら僕自身も病児保育というもの自体知らなくて、薬局業界でも知らない方も多いと思いますし、まず知ったとしてもできないと思ってる方もいらっしゃったり、できることがわかっても実際に活動まで繋げられなかったりっていう。それを実際に形にされたというのが、本当に素晴らしいと思いました。
質問としましては、病児保育ということで、普通の保育と違っていろんな病気の子が、例えば風邪の子もいれば、胃腸炎の子もいれば、てんかんの調子が悪い子もいるなど、多分いろんな病気の子がいらっしゃると思うんですが、風邪の子だったら風邪の子同士でうつし合ってはいけないし、ノロウイルスだったらもちろん確認しないといけないし、おそらく病気ごとにあると思うんですけど、そうした子ども同士であったり、スタッフ同士の隔離というか、分けるみたいな対策というのは、どうされているのでしょうか。教えていただきたいです。
徳吉:
ご質問ありがとうございます。基本的にいま部屋が4部屋あるのですが、施設で疾患ごとに部屋を大体分けていますので、例えば風邪の子、胃腸炎の子とかですね。あとは、その他の子とかですね。溶連菌も含めて、いろいろですね。インフルエンザが多かったときはインフルエンザで分けるとかですね。A型B型と型が違えば、その型ごとに分けるとか。そういうことをやって対応してました。部屋数が限られるので、1つの疾患で1部屋となり、4疾患まで対応するということになってました。
今回「こやま」でもう1施設増えるので、最高どれぐらい対応できるかわからないですが、6疾患~7疾患ぐらいまでは対応できるのではないかと思いますので、幅広いニーズにお応えできるんじゃないかなと考えます。ただ、職員間でうつしてしまうようなことがあってはいけないということで、全て正社員8人揃えていて、1部屋に決まった1人、もしくは2人がいて、あまり動かないなどの配置を考えています。なかなかけっこう大変ですが、そのような形で工夫しながらやっているところでございます。
ヤクヤク:
ありがとうございます。やっぱり対策も抜かりなくっていう感じですね。知らなかった方も多いので、この活動自体が世に広まってほしいというか、本当に素晴らしいことだと思うので、僕がどの立場で言ってるねん!っていう話なんですけど、薬局アワードで発表していただいてありがとうございます。
—–
あらためまして、最優秀賞おめでとうございます!
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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