穴水あおば薬局 『「トジスト」開発に至るまで –ホチキスの針ゼロプロジェクト−』 発表者 岡田政彦さん

今回は「第3回 みんなで選ぶ 薬局アワード」で登壇した、穴水あおば薬局(株式会社ニイザ) 岡田政彦さんのプレゼンテーションをご紹介します。

穴水あおば薬局 岡田政彦さんのプレゼンテーション

ビジネスコンテストでの受賞歴を持つ薬局

岡田:

本日はこのような発表の機会を頂きまして、ありがとうございます。薬局支援協会と、今日の運営に当たってくださっているスタッフの皆さまにお礼を申し上げます。

では、薬局の紹介から始めさせていただきます。

穴水町をご存知ですか。日本海の中にぴょこんと突き出ている石川県の、さらに下のほうというかなりへんぴなところです。

岡田:

穴水町の人口はもう1万人を切ってしまいました。

高齢化も非常に進んでおりまして、もしかしたら日本全体の20年、30年先の時代を見ているエリアかもしれません。

そして、病院は2つ、診療所は5つ、調剤応需の薬局は7つと、医療資源としてもなかなか厳しいところにあります。

岡田:

私たちの薬局は小児科の門前にあります。冬場にはこのようなライトアップもして、病気になったら来る場所ではなく、冬場はちょっと観光名所的に来ていただくなど、僕らは弱小ながら頑張ってやっていると思っています。

やっていることとしては、地域の要請を受けてケア会議に出たり、健康教室を回らせていただくといったこともあります。

また、ドクターと一緒に「子ども虐待防止プログラム」という、ぜひ子どもたち皆に伝えようという活動も取り組んでいます。

私自身は、実はボブスレーの選手でした。その絡みもありまして、アンチドーピング活動をいろいろな要請を受けながらやっております。これらは薬局の外でやっている仕事です。

岡田:

薬局の中でやっている仕事は、下の方です。どうしても吸入する薬がうまく吸えないといった問題もあり、こちらについては効率の調査および吸入補助器具の検討と設計をしています。

これで、ベンチャービジネスコンテストで賞を頂きまして、この受賞が実は今回、後で出るお話に非常に利いてきます。

さらにアドヒアランス向上を目指したツールなどがありますが、今回お話しさせていただくのは、針なし電動ステープラーについてです。

針なしステープラー「トジスト」開発の経緯

岡田:

ある時、「ホチキスの針をなくせないのか」というメールが薬局に届きました。なぜかと聞くと、危ないとか、破れて困るということでした。

岡田:

じゃあ薬局に他に何かないかなと探したところ、両面テープやテープのりなどがありました。ただし、やっぱり離すときにべたつくという問題があります。

しかし僕らはやっぱり監査して、間違えたらやり直したいわけです。やり直すときに外せないのは困ったということで注目したのが「ハリナックス」、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

岡田:

ハリナックスは実は2つ、穴を開けて編み込むものと、ギアでがっつり押し付けてとじるものがありまして、穴が開くと嫌なので、圧着してとじるタイプ、上のほうを使ってみました。

ところが、接着力が弱く、握るときに意外と力が要る。そういうことを朝昼晩3回1カ月分で90回やるというと難しい。

そこで、この圧着する技術の特許を持っている森さんという方に出会いました。

実は私がベンチャービジネスコンテストの後、そういった企業がたくさん入っている場所に部屋を借りまして、そこで仕事をする中での出会いです。

もう他の業界では使っているこの技術を知っている、この方と一緒にチームを組み、我々はもし薬局の中でこの技術を使ったときに、どのようなことが起こるかと考え始めました。

それで、クリアしてほしい問題点を洗い出し、その問題点を超えるための技術を開発してほしいということで、チームを組んで作っていき、完成しました。

岡田:

大きさは大体、ティッシュ箱1個分くらいで、A4サイズよりも小さいので、薬局の中に入れられると思います。

機械本体は持ってこられなかったのですが、実際に薬包紙をとじたものを回しますので、ちょっと皆さんは手に取ってご覧いただければうれしいです。もちろん触って、切ったり、外したり、引っ張ってもらって構いません。

岡田:

じゃあはっきり言って、この機械で何をしたいかというのが、ここにまとめてあります。

岡田:

やっぱり針がないことで、針によるけがは起こりませんよね。薬包紙が破れたりすることもないようにしたい。

もちろん一番心配しているのは、ホチキスの針が薬に混ざって間違えて飲んでしまう、こういったリスクがもしかしたら起こっているんじゃないかと。

これは、針があるからなので、なければそんなものはそもそも起こらないはずだということですね。

あと、ホチキスは意外と針が詰まったり交換も面倒くさい。もし、こういう便利なものがあるならば、私たち薬剤師も楽になりたいですし、もちろん仕上がりがきれいなのもいいですね。

ということで、じゃあ本当にそういうことができているのか、物はできたけどどうなんだということで、われわれはこういうことを検討し、この結果は、昨年のプライマリケア連合学会に発表しております。

岡田:

実際に、私たちが達成したいものとはこれです。誤飲のリスク針によるけが薬包紙の破損は、やっぱりないほうがいい。

意図しない薬包紙の分離、これは運んでいる間に外れてしまったら困るわけです。これもないようにしたいです。もちろん僕らも楽になりたい。これが達成できているかどうかを調べたい。

縦に引っ張ったとき、ホチキスの針よりも弱い力で外れてしまったら困るわけです。少なくともホチキスと同じぐらいくっついてくれないと、振り回したときに落ちてしまいますよね。

ということで、この方法の外れるときの力を調べました。

岡田:

左がホチキスです。ホチキスの平均値と、われわれがつくった「トジスト」の平均値を比較しますと、トジストのほうが大体2倍ぐらいの力で引っ張らないと取れません

ということは、少なくともホチキスと同じくらいはくっついているということが分かりました。

一方で薬を飲むときに、ちゃんと外れてくれないと中が破れちゃいますね。

なので、次は横から水平に剥がしたときの力を測定しました。そうすると大体同じくらいでした。

岡田:

ホチキスのときは、10回やったうち1回はやっぱり袋が破れてしまいました。もし薬が入っていれば、こぼれてしまいます

ところが、われわれの道具は、この10回に関しては起こりませんし、今まであんまりそういう風に破れたとは聞いたことがありません。

なので、どうやら運搬時には外れにくく、飲むときは大丈夫だと。針によるリスクは、そもそも針がないので存在しません。

トジスト導入で薬剤師の負担は軽くなる

岡田:

じゃあ、私たちはトジストによって楽になっていますか?というのを、使っている人たちに聞いてみました。

やっぱりリスクがない、うれしいですという結果をいただいています。

岡田:

それと同じくらい、楽になっていますといっています。

良くなったとおっしゃっているのは、44人の方から回答を得まして75%台です。

岡田:

その人たちは、薬包をとじる作業に、多いところでは20時間以上を使っていました。もう1週間の半分ですよね。

岡田:

この人たちが「トジスト」を使った結果、最も多いところでは作業時間が9〜10時間減ったということです。

丸1日時間が空いて、僕らはまた患者さんのために時間を使えるようになったんです。
その他、減った作業時間は6〜9時間、3〜6時間、3時間未満という人もいて、時間数は少ないかもしれませんが、それでも改善をしていると。

やっぱりわれわれの作業は、効率が良くなった。この分、余裕が生まれますので、患者さんのために時間が使えるようになるわけです。

しかも楽になった上に、針によるリスクはなくなり、まとめるとこういったことができるようになりました。

岡田:

私たちが開発した電動針なしステープラー「トジスト」は、既存のステープラー、ホチキスの使用の上にあるリスクをなくすことができる道具になっています。

さらに、私たち薬剤師の時間を節約できるので、余った時間はやっぱり患者さんに向けたいですし、実際にそういった時間が取れるようになります。

こういったことを、薬局の中のものだけで考えてはできませんでしたが、他の業種の技術をアレンジして薬局に導入することによって、われわれは可能にすることができました。

これを皆さんに使っていただければ、穴水の一薬局で減った針のリスクを、日本全国でも皆さんで協力してもっと減らせるんじゃないかと思っています。

以上です。ありがとうございました。

(拍手)

質疑応答

司会:

岡田さん、ありがとうございました。それでは、審査員の方々から岡田さんへコメントを頂戴します。まず、富野浩充様、お願いいたします。

漫画「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」医療原案 富野 浩充 氏

富野:

なかなか面白いものをつくられていて。私も普段病院で薬剤師をやっているので、あると便利なのかな。

うちは急性期なので、そんなに薬包紙自体をとじることもないですが、今は薬包紙オンリーですか?他に何かとじたりはできますか?

岡田:

漢方薬の薬包紙をとじることもできます。

機械の全てのパーツを見せることはできませんでしたが、ミシンと同じように、足踏みペダルで動くようになっています。放せば止まるようにできていますので、漢方を挟んで足で踏んで動かして、ちょっと進んだ後に止めてまた1個挟むと、そういったことも可能になっています。

足でスイッチをつけたのにはもう1個理由がありまして、やっぱり両手を使いたいわけです。

ということで、そちらについても、最初はずっとモーターを回すだけだったんですけど、ぜひ足踏みペダルでという要望に、技術者の方々が応えてくれました。

富野:

ちなみにお幾らでしょうか?

岡田:

売ってもらっている会社に行くと、大体30万くらいという風に聞いています。

富野:

価格はもうちょっと手が出しやすいといいですよね…。

自分もそうですが、薬剤師は結構、文房具に触れる機会が多くて、こういう機器があるのは、発想もいろんなところで出てくると思うので。

これからも使いやすいものを作っていただけたら、現場も助かるなと思いました。

岡田:

ありがとうございます。

司会:

ありがとうございました。続きまして吉本愛梨様、お願いします。

一般社団法人日本薬学生連盟 2018年度代表 吉本 愛梨 氏

吉本:

発表ありがとうございました。保守的なイメージの薬局から、その発明品が生まれているというところに、すごく心躍りました。

薬剤師の業務を効率化するという意味でも、薬剤師さんのメリットになっているとおっしゃっていたんですけれども、手を切っちゃったりすると、消毒するときにすごくしみたりとか、他の軟膏だったりの調剤に影響が出てくるので、薬剤師さんの安全面という意味でも、素晴らしいなと思いました。

1点お聞きしたいのが、私が実習をしていた薬局では、ホチキスはあまり使っていなかったんです。

分包した後に、そのまま3つずつ折り曲げて輪ゴムで留めたりということをしたり、私が受け取っている薬局さんでも、ホチキスはあまり見たことがないんですけれども。

今後この「トジスト」を全国に広めていく上で、今、ホチキスを使っていなかったりとか、そういうニーズに気付いていない薬局さんに、どういうふうにアプローチをしようと考えていらっしゃいますか。

岡田:

一番は、やっぱりこういった機会を頂いて、皆さんに知ってもらうということが一つ大事だと思います。

もう一つは、患者さんの人数が増えてくると、どうしても対応ができないといったところがあります。

時間さえかければ、1個ずつセロハンテープで切って貼って、切って貼ってが、もちろんできるわけですが、それがだんだん、特に物から人へシフトしなさいといわれている中で、われわれの仕事もどんどん増えてきています。

こういった一包化、さらにこの後、錠剤を分けていたものをまとめてお渡しするというのは、やっぱり現場のヘルパーさんです。

実際に私たちがその人の目の前で毎日渡しに行けない。だから、そのヘルパーさんたちにこういったものを知ってもらって、こういった便利な物があるよと、そういうアナウンスがこれからできればと思っています。

吉本:

ありがとうございます。未来の薬剤師像が投影されているような期待ができるもので、とても楽しかったです。

岡田:

ありがとうございます。

司会:

それでは岡田さん、ありがとうございました。

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