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薬剤師の書評「マンガではじめる 薬局マネジメント」
誰でも立ち寄れる地域の健康拠点として、薬局の役割が大きく変わっていこうとしています。
その中で、薬局の管理責任者である薬局長(法律上では管理薬剤師ですが、以下本文では薬局長と呼びます)の運営手腕が薬局の形を左右すると言っても過言ではありません。
そんな薬局長という仕事について、
- 「人事に呼び出されて薬局長への打診があった。薬局長って何をするの?」
- 「人の上に立つなんて、私にはできそうにない…」
- 「薬局長って仕事が多くて面倒」
と感じている方もいるでしょう。
そんな不安を抱える薬局長を支援する初の書籍がこちら!
(水八寿裕・遠藤さちこ著 南江堂刊)
文字通り、薬局で起こるさまざまなことがマンガで描かれていて、その中で薬局長がするべきことや改善のアドバイスをわかりやすく示しています。
また、薬局長でなくても、薬局に求められていることや、薬局の業務に関わる法律の話もまとまって書かれていますので、薬局長になる予定はなくても、薬局勤務の方や薬局相手の仕事をされている方々にも役立ちます。
特に、薬局に勤めて数年が経過し一通りの業務ができるようになって閉塞感を感じている人にはオススメです。
「自分の今までの振り返り」と「自分にもまだできる仕事」がきっと見えてきて、心の中のモヤモヤが薄くなっていくことでしょう!
それでは、本書の紹介をしていきましょう。
現役薬剤師が選ぶ!本書のためになるポイント
薬局長 昇格が不安な薬剤師のためのマネジメント本
本書は、以下の項目について書かれています。
- 薬局長大抜擢!現在の自分って?
- 薬局って?管理薬剤師って?
- 店舗の数字をみてみよう
- リスクマネジメント
- 薬局のリーダーとは?
- 地域との関わり方
それぞれの項目についても、1~5のテーマに分かれています。
主人公の水嶋多美子は働き出して5年目の薬剤師。ある日突然、西野エリアマネージャーより薬局長への打診が来ます。「私にできますか?」、不安と驚きでうろたえる多美子に、西野エリアマネージャーは「大丈夫!」と返します。
そうなんです。薬局長への打診が来る時点で経営者や上司からは能力とやる気を認められているのです。
経営者や上司は、薬局長になる薬剤師の不安な気持ちや最初は失敗するだろうこともわかった上で打診をしてきます。そんな薬局長を支援するのが上司の仕事です。
しかし、いつも付きっ切りで見ているわけにもいきませんので、本書が薬局長業務のサポートをします。
そういう意味では、薬局長をサポートする立場の上司や経営者のサポート書でもありますね。
マンガの威力恐るべし!すぐに実践・応用しやすい
本書は各テーマごとに
薬局業務で日常的に起こることを題材としたマンガ
↓
文章や図表を用いた解説
で構成されています。
それぞれがひとつのエピソードに集中して描かれているので、読んだそばから実践・応用しやすいのが特徴です。ひとつのエピソードに関してのページ数もあまり多くないので、業務の合間に読み返すのにも適していますね。
例えば、「調剤過誤」に対する項目では、マンガで薬局長が現場で患者さんにするべき対処を伝え、その後の解説では、患者さん対応の前後にする手続きや今後の防止策について図表を用いて書かれています。
マンガと文書と図表、それぞれの特徴を活かして組み合わせて解説しているので内容にメリハリがあり、自然に内容が頭に入ることでしょう。伝えたい情報によって、ふさわしい表現手段を使い分けています。
私が最初本書を手にとった時、正直なところただ単純にマンガにしてわかりやすくしたんだと思ったのですが、実際に読むと印象が大きく変わりました。
マンガの一コマで伝えられる情報量は非常に多く、登場人物の表情や仕草、背景や影の付け方、セリフだけでなく効果音をもあり、絵とセリフが一度に関連付けられた形なので理解し易いとともに、情報が頭に強く印象付けられます。
ひとつひとつが現場でよくあることなので、なおさら内容が頭に入ってきます。
本書から得られる 薬剤師の仕事に活かせるヒント
書いてあることは基本!薬局業務の骨組みを作る
本書では薬局業務の法的根拠と知識という基本的なことから、OTC、在宅療養、地域包括ケアシステムへの参画まで、薬局に求められ期待される役割までカバーしています。
最終章で描かれる役割を担うために、しっかりと薬局の中の骨組みをしっかりさせる必要があります。それを第一章から段階を踏んで説明しています。
- 薬局長である自分の特徴を把握し、自分と薬局を活かす方法を考えること
- 法律を守ること
- 経営を維持させること
- さまざまな課題にきっちり対応すること
- 店のメンバーを観察してしっかりした組織を作ること
- 地域に根ざすこと
これからの時代の薬局が存続していくために、上記は必須条件と本書では書かれています。
その中で「ワーク・ライフ・バランス」や「労働法規を守ること」など、精神論に依らない薬局運営を目指すようにアドバイスがなされています。従業員が継続して勤務を続けられることも経営の安定には不可欠なことと書かれています。
感情と経験は、まだまだ機械だけでは補えないですからね。
本書の活用方法まとめ
- 新人や新配属者に対する教育に用いる
タイトルは薬局長サポートブックですが、薬局に関連する法規、患者対応の方法、マナーなど薬局スタッフなら知ってほしい情報がまとまっているので役立つことでしょう。 - 薬局に転職する予定の人、薬学生が読む
薬局の業務全般についてまとまって書かれていますのでどういう職場でどんな仕事をするのかイメージしやすいです。 - 薬局に常備し、薬局スタッフ全体が読む
薬局運営で必要なことがきっちり描かれているので、スタッフ全体の能力向上に活用できます。また、基本に立ち返りたい時にも読み返し、自分を振り返るのもいいでしょう。 - 巻末の関連図書など、薬局全体を良くするために役に立ちそうな書籍や必要な法規・通知を読む
第一章の自己分析や薬局の環境によって、読むものもしくはその優先順位は変わってきます。
本書は、関連図書を読んだり、自分で調べることが前提となっています。法律や制度は次々と変わっていくので、最新のものに更新していく必要があります。
薬剤師が読んだ感想
「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」
この薬剤師法第一条の精神をもって接し、医療・介護従事者を含めた地域全体に貢献することで私たち薬剤師もイキイキと暮らせる!という著者の思いが詰まっていると感じました。
「地域にある薬局の薬局長の業務全般について着目した本は初めて」と聞いて「なぜ、今までは出たことがなかったのだろう?」不思議に思いましたが
その理由は、
- そもそも薬局長という職業が出現して歴史が短い
- 大きなチェーン薬局では自社のマニュアルで対処しているところが多い
- 個人の薬局では経営者が薬局長であることが多く、そもそも辞令があって薬局長になることはなかった
のではないかと想像します。
医療も介護も2025年を迎えるにあたり、さまざまな変革が求められています。
著者は、薬局が地域包括ケアシステムの中で、地域のことをよく知り、深く関わる立場になってほしいと考えたのではないでしょうか。
変革に耐えられる力を薬局や薬剤師が持って欲しい。そのためには薬局長のレベルアップが必要不可欠です。
そんな薬局長を、今の「会社内での役職の一つ」から本来、薬機法で定義された「薬局全体の管理責任者」という姿に戻すために本書を書いたのではないかと思いました。
これから薬局長を目指す方も、今まさに薬局長をしている方も、ぜひ地域に根づいた薬剤師、薬局長になりたいですね。
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