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薬剤師 書評「現場ですぐに役立つ!処方箋の読み方」
今回は、薬剤師として働き始めたばかりの人、これから転職する人、久しぶりに現場復帰する人、初心に帰りたい人におすすめの、薬剤師の基本作法について見やすく丁寧に書かれた書籍を紹介します。
監修:伊賀立二 (東京大学名誉教授)
編集・執筆:中村均 (帝京平成大学薬学部教授)
後信(日本医療機能評価機構理事):土屋文人 (日本病院薬剤師会副会長)
ちなみに、私がこの本を一言で表現するなら、
「当たり前のことを当たり前に!医療安全のゲートキーパーたる薬剤師の指南書」です。
医療事故の当事者にならないため、そして患者さんの生命を守るために抑えておくべきポイントがきっちり身につきます。薬局でも病院でも役立つ内容ですよ。
それでは、本書の紹介をしていきましょう。
現役薬剤師が選ぶ!本書のためになるポイント
1. 初版が発行されて18年。薬剤師に求められる役割も変化
本書が最初に発行されたのが平成13年(2001年)です。その頃の分業率は44.5%、処方箋枚数は5億5959万枚でした。
平成27年度(2015年)、遂に分業率は70%に到達し、処方箋枚数も7億8818万枚になります。(基金統計月報及び国保連合会審査支払業務統計より)
最近では医療事故が起こった場合に薬剤師が訴えられる事例が増え、賠償金支払いの判決が出る例も珍しくなくなってきました。
また、昨今では医療事故の報道において薬剤師が疑義照会したかどうかも報道されるようになってきました。それだけ、医療安全における薬剤師の役割が大きくなっている現状です。
本書でも薬剤師の処方鑑査漏れも含む調剤過誤による裁判事例が詳しく紹介され、処方箋を読む意義と責務を伝えています。
新しく改定されるにつれ、
- 「お薬手帳との照合による相互作用の確認」
- 「入院時の持参薬管理」
- 「一般名処方」
- 「後発医薬品に対する対応」※薬局での後発医薬品調剤体制加算 など
医療安全のための新しい制度に対応し続けています。それ故に長く愛される書籍です。
2. 処方箋を読む=処方監査のこと 当たり前のことを当たり前に!
「処方箋を読む」とは処方監査のことであり、薬剤師の業務のうち最も重要な業務と言っても過言ではありません。処方監査がなされないと調剤そのものが成立しません。おろそかにすることで、調剤過誤はおろか、患者さんの命の危険をもたらすことがあります。
本書は、医療安全のための処方監査の意義を重ねて訴えています。
最近では薬学的見地から処方内容が適切であるか検討することに重点が置かれつつありますが、やはり処方箋記載の不備の有無を検討することが基本です。
処方箋記載の不備の照会は医療安全のためだけではなく、健康保険を守る意味でも必要な業務です。勿論、患者さんが薬を正しく使えるようにするためにも必要です。
まず【第一章】では処方箋の正しい記載方法についてみっちり解説がなされています。処方箋の記載例を図にしてチェックするべき箇所をひとまとめにした後、各箇所の解説を簡潔な言葉で書いているので、頭に入りやすいです。
基本を押さえた上で、薬学的見地からの検討を含めた処方監査を行い、疑義照会の有無を判断した後に調剤にかかりましょうとあります。
また、【第一章】では医薬品の添付文書情報の入手方法についても図を使って詳しく書かれています。ここでは医薬品医療機器総合機構(PDMA)のサイトから最新の情報を得る方法を紹介しています
持参薬やお薬手帳など、自分の所属する施設にない医薬品であっても調べる必要がありますので、この方法をぜひ身につけましょう。
3. 実際に起こりがちな調剤事故を元に、気を付ける点を豊富に紹介
本書では内服薬と注射薬について、調剤過誤が起こると生命に危険が及びやすいさまざまな事例を挙げて、それぞれ間違えやすい点・間違いを起こす原因・過誤防止策を記載しています。
【第二章】では、内服薬の処方監査で気を付けることが書かれています。ここでは、内服薬の監査だけでなく院外処方箋全般について気をつけることも書かれています。
「医薬品」と「保険制度」両方の視点から、調剤事故が起こりやすい事例を紹介しています。
医薬品の種類としては「糖尿病薬」「血液凝固に関わる薬」「麻薬」など、保険制度の視点から見たものとしては「後発医薬品」「お薬手帳(相互作用)」「初回問診票(食物アレルギー)」があります。
医療チームの中で、先発医薬品と後発医薬品であると対応させることができるのは薬剤師だけです。持参薬管理では、一見違う薬に見えるのか、同じ薬の先発品と後発品が同時に処方されることがあります。
ここでは、疑義照会の手順も簡潔にまとめられています。処方監査しただけでは薬剤師の業務を果たしたとは言えません。薬学的見地から疑問点をはっきりさせるまで調剤に取り掛かってはならないのです。
注意するべき外用薬もあるのではないかと思いつつ読み進めていくと、注意するべき医薬品の例に外用薬の記載があります。外用薬については、内服薬の項目で当てはまりそうなものを照らし合わせてみましょう。
【第三章】では、注射剤の処方・調剤鑑査において気を付けることが書かれています。
入院されている患者さんに投与する事が多く、第二章で書かれているものよりも、ミスが生命に影響する可能性は高いものが多いです。気を配る箇所は内服より多いですが、もれなく監査できるように配慮されています。
また、内服薬の項目ではなかった外見が類似している薬剤による処方・調剤ミスも取り上げられています。
【第二章】・【第三章】ともにオーダリングシステムで起こりがちなミスについて事例をあげています。オーダリングシステムならではの「間違えやすい薬品名の例」や「処方ミスの発生する過程」を列挙しています。また、外観の類似した注射薬を例示し、注意喚起しています。
巻末の資料では主な注射剤の禁忌、処方箋の記載のあり方に関する厚労省からの資料が掲載されています。
書から得られる 薬剤師の仕事に活かせるヒント
本書に書いてあることを自分が所属する施設で実践しやすいように応用してみましょう。
例えば…
- 自身が所属する施設にある、ハイリスク薬の用法・用量を業務中に確認できるように薬品棚に用量を記載する
- 内服・外用・注射薬を問わず所属する施設の間違えやすい薬品名のリストを挙げる
- 調剤ミスや過誤だけでなく、処方鑑査時に迷った事例を集約し作業を改善するなどして薬剤師全体の処方鑑査能力の向上につなげる
- 気が緩みがちになった時に読み返す
忘れがちですが、「基礎をしっかり身につけ、忠実に行う」これが一番大切なことですね。
薬剤師が読んだ感想
どこまでも基本に忠実な書籍でした。薬剤師業務の王道とはなんたるかがきっちりと書かれている、「清く正しい」という言葉がぴったりはまります。
「当たり前のことを、当たり前に行い続ける」ということは思いのほか難しいです。
しかし、私たち薬剤師の仕事は当たり前のことを当たり前にやらなければ職責を果たせません。医療安全の砦なのです。
本書は、当たり前のことを、その意義を含めて明確に言葉にすることで、当たり前のことをおろそかにするべきではない、と薬剤師にメッセージを送っています。
「処方箋の読み方」というタイトルを見て「なーんだ、簡単じゃん!」と思う方もいらっしゃるでしょう(実は私もそうでした…)。
でも、本書を手にとってじっくり読みこめば、「処方箋を読む」という言葉が非常に深いものに感じられるようになりますよ。
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