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【第4回 前編】薬がすべてではないという感覚があった – ヨガインストラクター・薬剤師 吉田奈央さん
薬学知識を生かしながら、ホリスティックで心身両面をサポート。
広い視野で、患者や地域医療に役立ちたい。
※ 吉田奈央さんへのインタビュー【後編】はこちらからご覧いただけます
吉田 奈央(よしだ なお)さん プロフィール
1979年、広島生まれ、千葉育ち。2003年、東邦大学薬学部を卒業。調剤薬局勤務を経て’09年にワーキングホリデーでオーストラリアに。豊かな自然に癒されアロマテラピーを学んだり、小学校英語指導者資格を取得。’11年に一時帰国した際に、福島で被災。再びオーストラリアへ戻り、’12年に帰国、転勤で仙台へ。’13年より東京。’14年に潰瘍性大腸炎を発症。病気を機にさまざまな気づきや出会いを得て、ヨガのインストラクターになることを決意する。’15年の夏にニューヨークに滞在し、全米ヨガアライアンス200時間を取得。
活動内容
現在は派遣の薬剤師として病院に勤務。また、「ヨガで心も体も健やかにHappy Lifeを!」をモットーに、フリーランスのヨガインストラクターとしても活動中。
※詳しくは、ブログ Ph.Nao’s Blog Integrative Beauty | 薬剤師 Nao
ふだんから薬を扱っているからこそ、薬がすべてではないという感覚があった。
ー薬剤師にしてヨガインストラクターというのは、なかなか異色の経歴ですよね。何がきっかけで、2つの顔で活動されるようになったのでしょうか。
働き始めた後に、ワーキングホリデーでオーストラリアに2年ほど行ったり、ところどころお休み期間をはさみながら、それでも薬剤師としてのキャリアを10年ほど積んできました。
ただ、すごく薬剤師になりたかったかと言えばそうでもなくて…(苦笑)
出発点としては、消去法で選んだというのが正直なところです。
進路を決めるころ、特に将来やりたいこともなかったけれど、当時はちょっと心理学に興味を持っていました。
心理学を勉強したところでどんな仕事につけるのか、見当もつかないなと思いながら、一番その仕事に近そうだと思ったのが精神科医。
高校で仲のよかった友人は理系組が多かったこともあり、自然とそちらの進学コースに入りました。
実は私、数学が大の苦手なんです。
それなのに、なぜか「苦手科目から逃げてはダメ!」と自分にハッパをかけ、国立の医学部を志望します。
現役では不合格で、一年浪人。
浪人のときは「今年は受からないと後がない」と、理系の学部を土木も建築も片っ端から受験しました。
結局、合格した中で卒業と同時に国家資格が取れるのが「薬学部」だったんです。
ー薬学を学んでみて、どうでしたか。
薬学って、理系の総合学問なんですよ。化学、生物学、物理化学、医学に関連する各分野にまたがる知識を学ばなければいけない。
その大変さのわりに、薬剤師の責任の重さはあまり世間に理解されていません。
私が学生だったころは今よりずっとそれが顕著でした。
報われない仕事だと感じ、「なりたくないなー」と葛藤したこともあります。
その一方で、「卒業時に国家資格を取れなかったら社会のレールから脱落する……(汗)」という焦りもすごくて。
私は、好きなモノに対してはとことん集中できるほうなんですが、興味がないものにはまるでがんばれない。
とはいえ、国家試験に向けて、毎日8~10時間は勉強していましたので、我ながらよくやったと昔の自分をねぎらいたいです(笑)
実際に薬剤師として調剤薬局の現場に立ってみたら、やりがいはありました。
患者さんから薬や健康のことで相談を受けたときに、知識を生かして喜んでもらえるのはうれしい。
でも一般的に、薬剤師が具体的にはどんな業務を行っているのかほとんど知られていません。
みんな薬の棚からパッと取ってきて渡すだけだろうと思っているんですね。
難しい薬で処方箋のチェックを慎重にしているときでも、患者さんに「早くして」と言われたり、現実問題として“時間との勝負”で、その認識のズレはつらかったですね。
ヨガに出合ったのは、そのころですか。
初めてヨガを体験したのは、もう10年くらい前なんです。
スタジオヨギーという全国屈指の有名スタジオでした。
クラスは瞑想など静かに自分を見つめる時間にもなり、知らない人たちとも不思議な一体感が持てて、すぐに「いいな」と思ったんです。でも、そのときはのめり込むことはなくて。
ワーキングホリデー先のオーストラリアで熱中したのは英語やアロマの勉強でしたし、しばらく間が空いていました。
ヨガの世界に戻ったのは、仙台に転勤してからですね。
ヨガとピラティスを両方教えている先生がいて、そのスタジオには定期的に通っていました。
あたらめて静かに内省できる時間が持てて、そうした心地いい場所を自分自身でも提供したいと思ったんです。
それで’13年の春に、今度はヨガの哲学も合わせて教えてくれる男性のヨガマスターに師事。
インストラクターコースで実技と座学を100時間習いました。
ただ、それは公式の資格とは認められていないものなんです。
勉強は続けていたものの、ヨガを仕事にもできないし、薬剤師の仕事も淡々とこなしているだけだし、うつうつとしていた時期がありました。
オーストラリアから帰国してから、ずっと直感のおもむくまま、オーラソーマやレムリアンヒーリング、レイキなど広くヒーリングの勉強もしていたんですが、’15年に全米ヨガアライアンスを取りに行こうと決意したいちばんのきっかけは、病気でした。
ちょうど私生活でもストレスを抱えていたときで、感情は暴れて思考もぐるぐる。それが原因で病気になったと確信していました。
薬だけでは症状が治まらず、それ以外の方法も取り入れて自然治癒力を上げて病気と向き合わなくては、という気持ちが強くなりました。
そこでもう一度ヨガをしっかりと勉強したいと思ったんです。
ー吉田さんが罹患した潰瘍性大腸炎というのは、原因不明の難病だそうですね。
大腸の粘膜が炎症を起こしてただれ、血便や下痢、腹痛などが続きます。
実はその前にも、原因不明で足がものすごく腫れて、家で安静にしていなくてはいけない時期があったんですね。
最終的には結節性紅斑という病気だとわかったんですが、’14年に結節性紅斑と潰瘍性大腸炎、立て続けに病気をし、健康が損なわれたと非常にショックでした。
特に潰瘍性大腸炎については、長期間改善されないと大腸の摘出手術をしなくてはいけない場合もありますし、大腸がんの発生リスクも高くなります。
そもそもステロイドなどの対症療法では、いたちごっこになるだけだとわかっていたので、薬に頼らずに治す方法を模索し始めました。
健康を考える上で薬だけでは解決できないことがあると、私自身が薬剤師だからこそ身にしみてもいたんです。
まさにパラダイムシフトでしたね。こんな風に病気になったことで薬への考え方が大きく変わりました。
それまでの私は頭痛がするとすぐに鎮痛剤を飲むタイプだったのですが、愛用していた鎮痛剤は腸に良くないと主治医から言われ、その後の頭痛にはアロマオイルを使用して対処するようになりました。
現在は漢方との出会いもあって、なんと西洋の薬を飲まずにヨガと漢方で体調は良好です。
ファーマシストライフ編集部 (取材・文/三浦天紗子)
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