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いま薬局、薬剤師に足りない「チカラ」 -ファルメディコ 狭間研至先生インタビュー 第1回

第1回では、いま薬局、薬剤師に足りない「チカラ」をテーマに、2018年度診療報酬改定で薬剤師の仕事はどう変わるのか。医師が薬剤師に求めていることは何なのか。

医師であり、日本在宅薬学会理事長であり、薬局経営者でもある狭間研至先生に、ファーマシストライフ編集部が伺ってきました。

狭間研至先生のプロフィールはこちら

2018年度診療報酬改定で、薬剤師の仕事はどう変わる

—— これまでにも、厚生労働省の指導により2年に1度、診療報酬改定が行われてきましたが、2018年春より実施される改定には、現場から不安の声も上がっています。

そこで、今回の変更をめぐり、何が代わり、薬局や薬剤師はどういう業務の変更を求められるのでしょうか。

医師であり、日本在宅薬学会理事長であり、薬局経営者でもある狭間先生のご意見をうかがっていきたいと思います。

狭間

医療機関や保険薬局の報酬の基礎となる「診療報酬」ですが、処方箋料、調剤技術料、薬学管理料、後発医薬品調剤体制加算等々、基本的な業務内容には変わりはないし、その重要性も今後も変わらないでしょう。

しかし、いままではほとんど、深い知識や経験が求められる高度な服薬指導が必要なケースはまれで、誤解を恐れずに言うならば大抵は処方箋通りに薬を渡すだけの単純作業が薬剤師の仕事という面もあったわけです。

今回の改定では、薬局、薬剤師のそうした実態を踏まえ、調剤報酬の抜本的な見直しが迫られることになります。点数もいままでよりシビアになるため、ビジネスモデルとしては転換せざるを得ない局面を迎えるはずなのです。

 

——「かかりつけ薬局、薬剤師」制度が進められてきたのも、多剤投与のリスクや無駄をなくす目的もあったわけですが、実際問題、そうしたメリットはあまり機能していないようにも見えます。

というのも、これまでは薬剤師が患者さまに薬を渡したとしても、「調子はいかがですか」「症状は改善しましたか」といったその後のフォローはそれほど実行されてこなかったですし、行われていたとしても、言ってみれば薬剤師の“裁量でやっていただけ”ですよね。

薬剤師から見れば、点数にはならないので、やってもやらなくても……となってしまうかもしれません。

狭間

そうですね。薬局や薬剤師は報酬ありきで働いているわけではないですが、そうしたフォローを継続的にやろう、システマティックに機能させようというのは難しかった。

それが加点されるようになるのは、変わっていく部分だと思います。

わかりやすく言えば、お薬を渡すまでだった仕事から、飲んだ後までフォローする仕事に変わることになります。

 

——ということは、狭間先生からご覧になって、2018年度の診療報酬改定は、プラス面のほうが大きいと思われますか。

狭間

率直なところ、これまでの制度に甘んじていた薬局の中にはマイナス面が大きくなるところもあるでしょうね。

そんなひどい、と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、この変革は急に出てきたアイデアではないんですね。厚生労働省が2013年に提言した「地域包括ケアシステム」がもとになっているんです。高齢者の方々が住み慣れた土地で介護や医療、生活のサポートを受けられるようにしようという取り組み。

その実現に向けて、大きな制度改革が進められているわけですから、当然、薬局や薬剤師も変わらざるを得なくなります。

すごく単純な話をすると、これまでは、薬局に歩いてこられる患者さまに病院の門前に薬局を構えて薬を渡していればよかった。

けれど、超高齢化していく社会を迎える中で、歩行困難だったり、認知機能が落ちていたりする患者さまにどういうアプローチをしていくかを考えていく必要があります。

服薬管理をもっと充実させるなど、求められていく業務の幅は広がっていくことは確実です。

 

医師が薬剤師に求めている、本当のこと

——狭間先生が医師という立場から薬剤師をごらんになった場合、こうあってほしいと思う仕事への姿勢などがあると思うのですが、医師として、薬剤師に本当に求めたいことは何でしょうか。現実問題として、いまの薬剤師に足りないものは何でしょうか。

狭間

これは自分でも薬局経営をしているからこそ強く感じるのですが、やはり服薬指導や服薬後のフォローが足りていないなあと。

ひとつには、お薬を飲んだあとの患者さまの様子から薬学的に評価して、報告してもらえたらなあと思うんです。

睡眠薬を出している患者さまから、「昼間も眠くてしようがない」という訴えがあったとします。訴えがなくても、患者さまとのやり取りの中で気づいてもらうとかですね。

現状では、調剤する以外の業務に慣れていない薬剤師が多く、薬剤師さんから

先生、ちょっとこの間の薬はこの患者さんに効きすぎてるみたいですけど、どうしましょうか

というような提案は、ほとんどないんですね。

それがあれば、僕ら医師も「それなら少し減らしてみようかな」と調整できたり、とても助かるんです。

今回の診療報酬改定ではそこは大きく見直されますので、薬剤師の仕事の意識も領域も変わってくると思います。期待したいですね。

 

——医師へのサポートは、患者さまへのサポートにもなりますね。

狭間

そうなんです。血圧の薬を棚から取って渡したいから薬剤師免許を取ったわけではないでしょう。

薬剤師を目指したのは、正しく薬を調剤するためでも、患者さまの血圧を下げるためでもなく、ちょうどいい血圧が持続できるように薬で調節してあげて、「頭が痛かったんだけど、おかげさまでいま楽になりました」と喜んでもらうとともに、医学的には中長期的な心血管イベントを回避させてあげたいからではないでしょうか?

「飲んでみて変化はありましたか」「症状はやわらぎましたか」「副作用はどうですか」

など、もっと患者さまから服薬の成果を積極的に聞き出して、改善しないようであれば、医師に話をする。それも、「先生、何とかしてください」と医師に伝えるだけではなく、

これらの症状は、現在の処方薬によっておこっている可能性があるのではないでしょうか?

と調剤を担当した薬剤師さんから提案があったら、医師のほうも、じゃあまずは、その処方薬を調整してみようと言いますね。

それで症状がよくなるなど課題解決できれば、薬剤師に対する医者の見方も大きく変わってきますよね。

旧態依然とした仕事意識では、薬剤師は医師の指示をもらって動く人にしか見えません。そうなれば医師のほうも「この薬を出しといてくれればいいので」となるわけですよ。それを変えるきっかけにもなる改定となる可能性もあります。

何より、薬剤師さんの広義な健康サポートはますます求められていくと思うんです。

 

——患者さんと関わりたいという気持ちのある薬剤師にとっては、プラスになっていくわけですね。

狭間

やる気が反映される土壌ができる、その上、技術に見合う何らかのコストもつくわけですから。

薬剤師もチーム医療に関わっていけるしくみができるのは喜ばしいことです。

 

 

>第2回 在宅医療の問題を解決する「チカラ」(2018年3月26日公開)につづく

 

ファーマシストライフ編集部 (取材・文/三浦天紗子、写真/楠本涼)

 

狭間研至先生(はざま・けんじ )
1969年、大阪府生まれ。 「ファルメディコ株式会社」代表取締役社長、一般社団法人「薬剤師あゆみの会」理事長、一般社団法人「日本在宅薬学会」理事長ほかを歴任。 '95年、大阪大学医学部卒業後、大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院(現 大阪府立急性期・総合医療センター)、宝塚市立病院で外科・呼吸器外科診療に従事。 2003年より家業を引き継ぎ、「有限会社ヒューマンメンテナンスサポート」社長に就任。04年にファルメディコ株式会社へ組織変更とともに社名変更。大阪各地に「ハザマ薬局」を展開。現在7店舗。大学での薬学教育にも携わる。 『薬局マネジメント3.0』(評言社)、『薬局が変われば地域医療が変わる』(じほう)、『薬剤師のためのバイタルサイン』(南山堂)、『薬局3.0』(薬事日報社)、『外科医 薬局に帰る』(薬局新聞社)など著書多数。 ファルメディコ株式会社 HP: http://www.pharmedico.com/index.html
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都内の調剤薬局に勤務中。

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