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第7回 病院薬剤師に期待される新たな仕事 -薬剤師外来-
今までは、病院薬剤師の仕事は、外来患者さんの調剤を中心に、入院患者さんの調剤や病院内で使用する薬の調剤、さらには医薬品の管理でした。病棟に薬剤師が出向くというアメリカのクリニカル・ファーマシーというスタイルを取り入れたくとも、これらの業務が忙しく思うように実践できていなかった。しかし、医薬分業が進んだことで、患者さんのケアに費やす時間が生まれた。
とは言え、当初は看護師中心だった病棟で薬剤師の居場所はないに等しく、諸先輩薬剤師たちの努力の結晶が現在の病院薬剤師たちの礎となっている。そして今、医療の高度化・複雑化が進む中で、病院薬剤師は医師と同じく治療に欠かせない存在となってきつつある。
―― 医薬分業により病院薬剤師の活躍の場が広がったように思えますが。
杉林:今までは医師が中心でしたが、薬学が医療を支えるという感覚が日本でやっと芽生え始めたというところでしょうか。医師不足もありますし、もともと医師は患者を診ることが仕事ですから、薬に関しては薬剤師が担当することで、医師が診察に費やす時間も確保できます。
―― まさにチーム医療ということでしょうか。
杉林:チーム医療というとカッコいい言葉ではありますが、本来、医療はチームで行うものですからね。どんなに優秀な医師でも一人では成り立ちません。それは昔も今も同じです。そこへ近年、薬剤師が薬のエキスパートとして加わるようになったということ、チーム医療という言葉が脚光を浴びているようです。
―― 薬学生の中には、病院薬剤師を希望する人が多いらしいですね。
杉林:学生もそうですが、「うちの子は病院薬剤師にさせたい」という親御さんが多いですね。
―― やはり「病院に勤務する」という、ある意味ステータスのような感覚を持っていらっしゃるのでしょうか。
杉林:それもあるかとは思いますが、病院薬剤師は仕事の内容を見ても特殊だということを知らないからではないでしょうか。特に医薬分業により病院薬剤師の業務が病棟中心に移行したことで、やり甲斐も大きい分、非常に強靭な精神力が必要になりますし、自己研鑚を怠っていられませんので、まさにエキスパートとしての自覚と誇りを要求されます。
―― 病院薬剤師へのハードルはかなり高そうな印象を受けますが、今後、病棟中心の薬剤師業務にプラスして必要なものがあるとお考えですか?
杉林:僕はあらゆる病院に「薬剤師外来」を作るべきだと考えています。口腔ケアも非常に大切ですから。小さい頃から歯磨きの習慣や口腔ケアの重要性を理解させてあげること。これは歯医者さんだけの仕事ではなく、「国民の健康を守る」という意味では薬剤師も担当すべき仕事のひとつだと思っています。糖尿病などの生活習慣病も、普段の心掛けとでも言いましょうか、予防と改善のための知識が必要です。
―― 薬剤師が健康アドバイザー的な存在になるということでしょうか。
杉林:街の中にそういう薬剤師がいてくれれば安心じゃないですか。口腔ケアや生活習慣病だけでなく、介護のこともそうだと思います。パーキンソン病様の症状になったらどうすればいいのか、家に居たほうがいいのか外で運動させたほうがいいのか、認知症にいい食べ物は何なのか。そういうことを知らない人が多いし、誰に聞けばいいのかも分からない。だからこそ街の薬局や病院には、そうした健康に関する相談ができる薬剤師外来があって然るべきだと思います。
確かに医師が診察時に薬の説明を十分に行っていたとしても、それを100%正確に理解できる患者さんは多くはない。事実、ある服薬実態調査では「患者の服薬コンプライアンスが悪い」という報告がなされている。
こうした背景もあり、薬剤師外来を開設する医療機関が少しずつだが増え成果を発揮している。全国に先駆けガン患者の薬剤師外来を開設した国立がん研究センターでは、患者さんが薬剤師外来問診後、薬剤師が医師へ提案した処方の9割が受理されたという。この点からも、専門薬剤師や認定薬剤師も含め、病院薬剤師の幅広い活躍は今後もより一層期待されるだろう。
[ 取材・文: 川端真弓(ライター) ]
薬学博士/城西大学薬学部長/公益社団法人日本薬剤学会長。1951年滋賀県生まれ。’74年富山大学薬学部卒、’76年同大学院薬学研究科修了。 同年、城西大学薬学部助手。講師、助教授を経て’98年教授。 この間、’82,’83年ミシガン 大学、ユタ大学留学。日本香粧品学会および日本動物実験代替法学会理事、日本香粧品学会誌編集委員長。 2英文誌のeditorial board。著書「化粧品・医薬品の経皮吸収」監訳(フレグランスジャーナル社)、「化粧品科学ガイド」(フレグランスジャーナル社)、次世代経皮吸収型製剤の開発と応用(シーエムシー出版)、「生物薬剤学」(エルゼビア)他。
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