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第6回 子どもたちの未来を担う 学校薬剤師の仕事とは
未来を担う子どもたちと関わる学校薬剤師という仕事。学校教育法第12条によれば、「学校においては、別に法律で定めるところにより、幼児、児童、生徒、及び学生並びに職員の健康の保持増進を図るため、健康診断を行い、その他その保健に必要な措置を講じなければならない」のが学校薬剤師の任務とされている。
―― 学校薬剤師の存在は、一般的にはあまり知られていませんが、子どもたちと直接係わるという意味では、非常に重要な役割を担っているのではないでしょうか。
杉林:われわれ日本人で一番大事なものは次代を担う子どもたちです。しかし、子どもたちが日本の財産であるのに、その財産を守ってないのが現状です。したがって、学校薬剤師さんの役割はもっともっと重要であって然るべきですし、子どもたちのためにもっともっと働いてもらってもいいと思います。
―― 保健室に行くといつも“保健の先生”がいるのと同じく、薬剤師も“お薬の先生”としていつも学校にいるというイメージでしょうか。
杉林:そうですね。現状では、街の薬剤師が副業的に学校薬剤師をやっているケースが多いのですが、学校薬剤師は、本来はそれだけを専門として行う職業であるべきです。もちろん、それなりの給与が支払われることが前提ですが。
―― 子どもたちの健康の保持増進を図るのが仕事だとすれば、学校薬剤師としてどういったことに力を入れるべきでしょうか。
杉林:健康ということがいかに大切かということを、子どもの時から教えるべきだと思います。教室の照明や採光はどうの、プールや飲み水の水質はどうのということも確かに大切ではあります。しかし、学校の土壌は安心なのか、食事はしっかり取っているのか、取っているとしたら変なものは食べていないだろうかなど、子どもたちが健やかに育つための根本的なことにもっと時間をかけるべきです。
―― 親御さんの中には、家では手のかからない簡単な食事にして、学校給食に一日分の栄養摂取を期待されている方も少なくないと聞きますが。
杉林:“食毒性”と呼んでいますが、同じ物ばかり食べていると病気になります。生活習慣病のほとんどがそうです。食べ物は基本的に毒なんだということを知らない人がほとんどですから。そうした食の問題も薬剤師の仕事です。今回の震災でも放射性物質の安全性が盛んに取り上げられていますよね。校庭だけでなく、屋外プールや校舎なども汚染され、その影響をできるだけ抑えるためにどうすればいいのかなどの指導や対応策を考え、実施するのも本来は学校薬剤師の大切な仕事です。酸性雨などに関しても然るべきですよね。こうした環境衛生というのは、実はすごく重要な問題ですから。
―― 先生は、「栄養カルタ(食育カルタ)」を作って幼稚園の園児たちにプレゼントしているとか?
杉林:僕が薬学部長を務める城西大学薬学部医療栄養学科の学生たちが中心となり作ったものです。大学が埼玉県の坂戸市にあることから、坂戸市大学連携地域創造助成事業の一環として、近隣の幼稚園や保育園、小学校などにプレゼントしました。
―― カルタという道具を使って伝えるというのはいいですね。子どもたちも遊びながら自然と食の大切さを学ぶことができますから。
杉林:やはり生活者に密着した働きかけが大切ですね。現在は「お薬カルタ」も作成中です。お薬カルタでは、ドラッグのことやタバコのことも盛り込まれています。こういうことは、僕自身は小学生にこそ伝えておくべき大切なことだと思っています。乞うご期待です(笑)。
―― それは楽しみですね。危険だからと目を背けるのではなく、小さな頃からしっかりとその危険性を伝えていくということでしょうか。
杉林:そのとおりです。ですので、こうした業務も学校薬剤師の仕事だと考えれば、養護教諭のように学校に常勤していて当然なのではないでしょうか。
確かに学校薬剤師を教育する専門機関はほとんど存在しない。衛生薬学で、保健や衛生環境について多少学ぶのみ。また、現在学校薬剤師の仕事をしている人の中には、「何をどこまでやるべきかが分からない」という声が多いのも事実だ。子どもたちの未来を担う学校薬剤師の方々には、広範囲な仕事への意欲をさらに掻き立ててほしいものだ。
[ 取材・文: 川端真弓(ライター) ]
>第7回 病院薬剤師に期待される新たな仕事 -薬剤師外来- に続く
薬学博士/城西大学薬学部長/公益社団法人日本薬剤学会長。1951年滋賀県生まれ。’74年富山大学薬学部卒、’76年同大学院薬学研究科修了。 同年、城西大学薬学部助手。講師、助教授を経て’98年教授。 この間、’82,’83年ミシガン 大学、ユタ大学留学。日本香粧品学会および日本動物実験代替法学会理事、日本香粧品学会誌編集委員長。 2英文誌のeditorial board。著書「化粧品・医薬品の経皮吸収」監訳(フレグランスジャーナル社)、「化粧品科学ガイド」(フレグランスジャーナル社)、次世代経皮吸収型製剤の開発と応用(シーエムシー出版)、「生物薬剤学」(エルゼビア)他。
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