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【第4回】チーム医療に「協関力」が不可欠 !?

この時代に生き残る薬剤師と、これからの薬剤師業界の変化について、星薬科大学 薬物治療学教室の亀井淳三教授にインタビュー! 今回は連載 第4回で、いよいよ取材も後半となりました。

 

2025年問題という言葉もあるように、この先、さらに高齢者は増え、かかりつけ薬剤師、認定薬剤師、チーム医療の考え方…ますます薬剤師の活躍に期待が寄せられていくと思います。

そうしたなか、これからのチーム医療において、薬剤師に必要な【協関力】とは何なのか、伺っていきます。

※ 亀井淳三教授のプロフィールはこちら

 

患者さんにリピーターになってもらうには、コツがあります

 

──実際、患者さんのために何ができるのか、何をやるべきなのか。薬剤師に今後、どのようなことが求められていくのでしょうか。

「かかりつけ薬剤師」「認定薬剤師」のブームから見て思うのは、「町の患者さんのためにもっと知識をつけてください」という意図から始まった厚労省の本意とのズレの大きさです。

認定の資格をもったからといって、それが患者さんの何の役に立つのかと問いたいです。

これからの医療に必要なのはチーム医療の考え方です。患者さんをチームでどう支えるか、そのときに薬剤師はチームにどういうふうに貢献できるかを考えなくてはいけないと思っています。

「資格あります」と言ったところでだけで、自分ひとりで患者さんのためにできることはたかが知れています。周りの病院やクリニック等の医師や看護師、介護士らといい連携ができて、初めて医療チームの一員として役に立てるのです。

資格なんてなくても、地域の患者さと向き合って貢献している薬剤師はいくらでもいるわけですから、資格を印籠にするのはおかしいでしょう。

もっとも、認定がないと下に見る、見られるという変な現象も起きています

それで資格にこだわるのかもしれませんが、聞いた話では、薬局によっては、「かかりつけ薬剤師としてご指名ください」と、顔写真と名前が選挙ポスターのように貼り出してあるとか。

かかりつけ薬剤師とはなのか、と首をひねりたくなります。

 

──薬剤師の仕事と報酬とがひもづけられていますし、地域との連携や在宅医療の取り組みなど、薬剤師が働く環境も変化の時期を迎えています。「かかりつけ薬剤師に指名してもらいたい」という気持ちは切実なんでしょうね。

そういう時代だからこそ、よりいっそう、患者さんへの対応をマニュアル化しないように心がけていかなくてはいけないと思います。

実は私の妻が管理薬剤師をしている薬局は、よく外にまで患者さんが並んでいるということがあるようです。「ラーメン屋みたいだな」とからかっていますよ(笑)

周辺にもいくつも薬局はあるんですが、サービスを受ける側としては、ラーメン屋と同じで「混んでいるところがうまい」と思うんでしょうね。

実際、その薬局の薬剤師さんや事務さんからしてもらえるサービスに納得できているから、患者さんは待ってくれるんです。

大切なのは、薬剤師と患者さんとのコミュニケーションギャップを小さくすることだと思います。

「急いでるから早く薬ください」という気持ちの人もいれば、「話を聞いてほしいな」という表情の人もいます。会社に遅れそうで焦っている患者さんに、悠長に「きょうお加減どうですか、血圧どうでしたか」と聞いても、迷惑に思われるだけでしょう。

逆に、何か聞きたそうだなという患者さんなのに、「はいお薬これです、お大事に」とあっさり帰したら、やはり不満を持たれますよね。どちらの対応も医療サービス従事者としては失格です。

 

「共感」ならぬ「協関」が、これからのチーム医療には不可欠です

 

──これからの薬剤師には、薬学の知識に加えて、コミュニケーション力が求められていくと言われていますね。

先に述べた通り、薬剤師には、患者さんが何を求めているかを見抜く力が不可欠ですが、ただそれは一朝一夕には身につきません。人とつながり、たくさん話をしていく中でしか得られない仕事力です。

街の薬局の経営者さんにも考えてもらいたいのは、薬局は、医療機関にかかったその日の最後に来るところであり、薬剤師は最後に会う医療人だという事実です。

担当医から、「数値が悪いですね。食べ過ぎてませんか。飲み過ぎちゃダメだと言ったでしょう」と叱られたり、渋い顔をされたり、あるいは、深刻な病気を宣告されるようなことがあったかもしれません。

そんな重い気持ちを背負いながら、最後に来るのが薬局です。そこでさらに変な思いをさせたら、患者さんはその薬局に来たくなくなります。

反対に、「数値がよくなってますよ、このままがんばりましょう」と褒められたのに、薬局でイヤな思いをさせられたら、それこそ台無しですよね。

妻の薬局にリピーターが多いのは、スタッフからかけてもらえるひとことに思いやりがあり、1日の何かプラスαになって、気分よく過ごせるからだと思っています。

いえ、たとえ患者さんが多くを語らなくても、薬剤師の方が処方箋の内容から身体のつらさや心情を汲み取ってあげて、少しでも心身を改善させてあげられるような対応ができるのが理想ではないでしょうか。


※イメージ写真: Fotolia

それには、患者さんとの協力関係を紡ぐ力、略して【協関力】が大事だと言いたいです。

 

──「協関力」とは、あまりなじみがない言葉ですが、どういう意味が込められているんでしょうか。

協関とは、協力関係を縮めた造語です。

薬剤師のコミュニケーション論の中で、よく「患者さんの感情に共感しよう」と言われますよね。けれど、同じ病気にでもかからない限り、本当の意味での共感はできないと思うんです。

たとえば、私がいま現役の薬剤師で、女性の患者さんから「乳がんなんです」「子宮がんと言われました」と相談されたとします。そのつらさを理解してあげたくても、実際には、男性の私にはとても難しいことです。

「おつらいですね」というのが共感の第一歩だと言われますが、私はとても言えないと思います。

その代わりに、「治療などつらいこともあるでしょうが、できる限りのことを協力します。一緒に治していきましょうね」「私の持っている知識を全部お伝えしますので、何でも言ってください」と言う。

そういう形がいちばん誠実ではないでしょうか。つまり、本当に必要なのは、「共感」より「協関」ではないかと思うんです

協関は、患者さんとだけではなく、医師や看護師、医学療法士、介護士など、チーム医療に関わるすべての人との関係にかかわってきます。

ドクターに疑義照会するにしても、信頼関係があれば、「あの薬剤師さんがそう言うなら」とスムーズに対応してくれるでしょうし、もし信頼関係がなければ、「言われた通りに出してくれればいいんです」と突っぱねられるだけです。

適正な薬の使用のために知識を常にブラッシュアップするのと同時に、その知識で、他の医療人との情報共有や情報提供できるスペシャリストとして認めてもらえなくてはいけません。

また、医師から言われた情報も読み取れることが必要で、そうした積み重ねを通して、周りのスタッフたちとの信頼関係を築く努力ができるかなんです。

患者さんのQOLの向上に寄与できてこそ、医者にも患者さんにも信頼されます。

そのためには、患者さんの疾患の経過治療への要望なども聞き出せなくてはいけません。そういったことはあまりストレートに尋ねてもなかなかと答えてくれなかったりします。

そういうときに功を奏するのが【雑談力】です。

他愛ない話題などを語り、「この薬剤師さんは私の病気を治すために協力してくれる人なんだ」と思ってもらえれば、その延長で、体調の悩みや調子など、いろいろ話してくれるようになります。

それには薬の勉強ばかりではなく、雑学も大事ですね。そういえば、妻はかなり雑学が得意な薬剤師です(笑)

 

ファーマシストライフ編集部
(取材・文/三浦天紗子、写真/土佐麻理子)

 

> 次回 『知識・経験の豊富な薬剤師が常駐する「健康サポート薬局」の必要性 !?』へ続く

 


第1回 (2017/01/30公開)
薬剤師は、患者ファーストの究極のサービス業 !?

第2回 (2017/02/06公開)
薬学の知識だけでなく解読力も、薬剤師に求められる !?

第3回 (2017/02/13公開)
専門薬剤師認定団体の増加の不思議とインターン制の義務化を !?

第4回 (2017/02/20公開)
チーム医療に「協関力」が不可欠 !?

第5回 (2017/02/27公開)
知識・経験の豊富な薬剤師が常駐する「健康サポート薬局」の必要性 !?

亀井淳三(かめい・じゅんぞう)
1956年、香川県生まれ。'83年星薬科大学大学院博士後期課程修了。2002年より、星薬科大学教授。厚生労働省医道審議会専門委員、厚生労働省薬剤師試験委員会委員など学外委員も多く歴任。研究テーマとして、1)慢性咳嗽の発症機序および病因の解明2)糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームに伴う中枢および末梢神経系の機能変化とその分子機構の解明 を挙げている。280報以上の原著論文を発表している他、Principle Pharmacotherapy(ネオメディカル)、『治験薬学―治験のプロセスとスタッフの役割と責任』(南江堂)など著書も多数。
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