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  5. 第8回 介護難民の時代を支える薬剤師の存在

第8回 介護難民の時代を支える薬剤師の存在

少子高齢化が進む中、ターミナルケアも含め薬剤師と介護の係わりがクローズアップされている。財政難を考えれば、介護施設という箱モノを増やすのには無理がある。介護保険制度による居宅療養管理指導は、要介護者宅を訪問し服薬指導や薬剤管理などを行う、これからの時代に必要とされる薬剤師の大切な仕事のひとつだ。

―― 訪問リハビリや訪問栄養食事指導と同じく、今後は薬剤師による訪問薬剤管理指導がさらに重要になってくると言われていますが。

杉林:やはり薬剤師にとっても、介護の分野はこれからの活躍の場でもあり課題です。介護の中で薬学的視点を入れることは非常に重要ですし、必要性が高いと思います。介護や福祉の問題は、日本全体が真剣に考え、できるだけ早く超高齢社会に対応できるシステムを作らねばなりません。今のままでは介護難民がでるのは必至です。

―― 介護を受けられない人たちが増えるということですよね?

杉林:介護を受けることができない高齢者が増える、人知れず亡くなる方が増える、葬儀をする近親者がいないなど問題は山積みです。

確かに、介護に疲れた家族が自殺をしたり、殺人事件になったりする悲しいニュースは後を絶たない。2009年にタレントの清水由貴子さんが、要介護5の母親の介護に疲れて自殺したニュースも、同じような状況にある方にとっては他人事ではない。

同じく2009年に起きた群馬の老人施設「たまゆら」の火災事故では、入居していた10名の高齢者が亡くなった。スプリンクラーや火災報知器などの安全装置が備えられていなかったためだ。入居者の大半が生活保護を受けていたという。生活苦から無届の施設に入らざるを得ない状況が浮き彫りにされた事故だった。

―― 日本は最先端医療に囲まれているようですが、介護の世界では後進国と言わざるを得ないような気がします。このままでは高齢者の行き場もなくなってしまいますね。

杉林:日本はいかに豊かだったかということですが、今の若い人たちは僕らが生きてきた時代より遥かに物心両面でつらい状況になります。確実に円安に向かいますし、物の値段は韓国の値段と同じになり、やがて東南アジアの値段と一緒になるでしょうね。「豊かな時代」は過去の物語となり、介護難民はますます増えていきます。こうした問題は、先進国が共通して抱えてはいるものの、最も差し迫っているのが日本です。もっとも数年後、中国は日本よりも悲惨な状況になるとも言われていますが。

―― この状況を打開するには、どうしたらいいとお考えですか。

杉林:薬学や薬剤師が、世界に目を向け、地球上に生きている人類のために、何をすべきかと、一度原点に帰って考えるべき時期なのではないでしょうか。誰にも看取られずに亡くなっていく、そんな時代が当たり前になる前に、“今”何とかしなくてはいけないのです。そして、そのカギを握るのが医療職では薬剤師しかいないと僕は思っています。

―― 国が地域包括ケアシステム実現に向けた取り組みの推進を掲げたことで、北海道薬科大学が民間企業であるミサワホームのグループ会社「マザアス」と連携し、在宅医療に従事する薬剤師の教育・研究・研修を行うという動きも出てきましたが。

杉林:今回の取り組みには、2つの考えが相殺していると思います。現在、介護を担える医師や看護師などの医療職は大変少なく、薬学部卒業生や薬剤師がその役を担える可能性があるがあるということ。私自身も特に4年生学科卒業生には、介護の世界に入るのは1つの選択肢であると言っています。ですので、北海道薬科大学の試みには拍手です。しかし、その一方で薬剤師の本来の仕事が疎かに考えられていないかという不安もあります。

―― 介護の現場で必要な薬のエキスパートという存在ではなく、介護職員のような存在になりかねないということでしょうか?

杉林:そういう側面の危惧もあります。欧米の薬剤師は社会に信頼される薬剤師業務を行い、医師や弁護士よりも国民に信頼されていますが、新設薬科大学の増加で、いずれは薬剤師が余ってしまう時代が来ると言われています。ですので、単に薬剤師業務につけない卒業生の受け入れ先のひとつとならなければいいなと思っています。

厚生労働省の資料を基にした大和総研の試算では、2004年に210万人だった介護保険施設の需要が、2014年には320万人に達するとし、最大202万人の供給不足が発生するという結果が出ている。

この数字を見ても介護難民の増大は確実だ。高齢者の医療費増大を抑制するため、国をあげて在宅医療を推進していることもあり、在宅医療の重要性はますます叫ばれるようになるだろう。安心して受けられる在宅医療の実現には、薬剤師の存在が欠かせないはずだ。

[ 取材・文: 川端真弓(ライター) ]

>第9回 予防医学を踏まえた薬剤師のヘルスケア業務 に続く

杉林堅次(すぎばやしけんじ)
薬学博士/城西大学薬学部長/公益社団法人日本薬剤学会長。1951年滋賀県生まれ。’74年富山大学薬学部卒、’76年同大学院薬学研究科修了。 同年、城西大学薬学部助手。講師、助教授を経て’98年教授。 この間、’82,’83年ミシガン 大学、ユタ大学留学。日本香粧品学会および日本動物実験代替法学会理事、日本香粧品学会誌編集委員長。 2英文誌のeditorial board。著書「化粧品・医薬品の経皮吸収」監訳(フレグランスジャーナル社)、「化粧品科学ガイド」(フレグランスジャーナル社)、次世代経皮吸収型製剤の開発と応用(シーエムシー出版)、「生物薬剤学」(エルゼビア)他。

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