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【第2回】薬学の知識だけでなく解読力も、薬剤師に求められる !?

この時代に生き残る薬剤師と、これからの薬剤師業界の変化について、星薬科大学 薬物治療学教室の亀井淳三教授にインタビュー!今回は連載 第2回です。

そもそも薬物治療学って何?というお話から、そのような学問を通じて薬剤師に求められていることは何なのか、探っていきたいと思います。

後半では亀井教授の薬物治療学教室の研究テーマである糖尿病と高次脳機能障害慢性の咳についても詳しく伺っていきますよ!

※前回の記事「(第1回) 薬剤師は、患者ファーストの究極のサービス業 !? 」はこちら

亀井淳三教授 プロフィール

 

薬物治療学は、薬学と医療とを結ぶ新しい学問です

 

──ところで、亀井先生が教鞭を執っていらっしゃる「薬物治療学」というのは、どんなことを学ぶ学問なんですか。

医学の進歩により、今日では薬物によって多くの病気の治療が可能になっています。

「血圧が高い」となれば降圧剤を飲む、「インフルエンザにかかった」となれば、抗インフルエンザウイスル薬を飲むというように、患者さんの健康を快復、維持するために、薬は大きな役割を果たしています。

そのように病気を正しく理解して薬の処方意図を理解し、患者さんに正しく伝える、医療と患者さんとをつなぐ実務的な学問が、薬物治療学です。

私が大学で学び始めた1970年代後半には、まだ「薬物治療学」という言葉はありませんでした。

6年制薬学教育が始まる少し前の、医療と薬学との結びつきが強く意識され始めた結果、主流になってきた比較的新しい分野ですね。その基礎になっているのは、薬理学です。

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治療薬が患者さんの身体のどの部位に、どのように作用し、どのような副作用があるのかなどを研究する「薬理学」を臨床に応用するものと考えていいと思います。

 

──具体的には、どんな勉強をするのでしょうか。

演習では、学生たちに処方箋を見せて「これは何の病気だと思う?」と処方された薬剤から病気を推測させたり、反対に、患者さんの年齢や症例、検査値などを示して、「この場合、どんな治療薬を使えばいい?」と尋ねてみたりします。

そうした解読力薬学の知識は、間違いなく薬剤師に求められていることのひとつであり、しっかりと理解してくれれば、現場でも自信をもって働けます。今後はますます重要になっていく技能でしょう。

一方では、まだ「この病気にはこの薬」というように治療法が確立されていない病気も多く存在します

たとえばメタボリックシンドロームは、ひとつの病気でくくれないほど、多種多様な症状が現れます。高血圧高脂血症高血糖値となれば、薬の組み合わせ方も複雑になってきます。

そうしたときに、「なぜ、この薬の組み合わせになっているのか」を患者さんに説明し、理解してもらう必要があります。当然、薬剤師自身も病気のことも薬のことも十分わかっていなくてはいけません。そのための実践的な勉強を行います。

 

私が世界でいちばん最初に手がけた研究者だった、というテーマが多いんです

 

──星薬のホームページによれば、亀井先生のご専門は、呼吸器系の疾患と、糖尿病や肥満、メタボに伴う神経障害などですね。

なぜ慢性的な咳が続いているのか、咳が発生しやすくなる原因はどこにあるか、あるいはどんな薬を使えばその咳を抑えられるのかなど、咳の発生のメカニズムや薬とのかかわりについては、学生時代から研究していました。学位もそれで取りました。

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ところが、担当教授が替わってしまう事態が起きて新たな研究テーマを見つけなくてはならなくなり、目を付けたのが、生活習慣病についてでした。

 

新しい教授から、何か身体の中の物質の変化を測る研究をするように言われて選んだのが、糖尿病や肥満、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が、神経や脳の機能にどんな影響を与えるか、でした。

神経障害が悪化すると、末端神経に血流が行き渡らず、感覚が鈍くなります。傷や痛みなどに気付かず処置が遅れ、壊疽や感染症を起こす場合もあるため、問題なのです。

研究をスタートさせたときには、そうした糖尿病の神経障害の分野で、すでに先駆的な研究者が多くいるだろうと思っていました。ところが、ほとんどいない状況でした。

 

まずは動物での実験から始めました。マウスを糖尿病にさせて、痛みの伝達物質がどう変化するのかを見てみると、とても興味深い結果が出てきたんです。

糖尿病の怖さは合併症にあると言われるほど、さまざまな病気の引き金になりますが、なかでも三大合併症の「糖尿病性神経障害」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」は、重篤な悪影響をもたらします。

しかしながら、私が糖尿病性神経障害の研究に取りかかる前には、医療人の多くは「糖尿病患者は、手指や足指、あるいは皮膚などに痛みを感じなくなる」と考えている人がほとんどでした。

糖尿病患者の痛みという症例を、糖尿病がご専門の先生方はご存知でしたが、麻酔科のある先生からは「痛みを感じる糖尿病患者なんて見たことがないから、君の研究は無意味だ」とまで言われることもあるような状況でした。

現在では、糖尿病と感覚異常の関連が広く知られるようになりましたが、1990年代の初め頃まではほとんど「糖尿病と痛みの関係」を信用してもらえませんでした。

 

──糖尿病から来る痛みが、かつては否定的に見られていたとは知りませんでした。

また、20年以上前、もう30年近くになるかもしれませんが、糖尿病の研究を続けているうちに、糖尿病によって引き起こされるしびれや神経の痛みなどの発症のメカニズムが、不整脈の治療薬の作用メカニズムと近いことを突き止めたこともあります。

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そこで、もともと不整脈の薬として使われていたメキシレチンという薬があるのですが、製薬会社と連携して、糖尿病性神経障害の治療薬として認可を取ることもできました。

さらに、糖尿病が末梢神経の異常につながるなら、中枢神経もダメにしてしまうのでは、と仮説を立てました。

当時は、末梢神経障害のときと同じく、「糖尿がうつや認知症の要因になるなんてバカバカしい」とずいぶん叩かれましたが、記憶障害、不安症、うつ、認知症などへの影響を検証してみた結果、糖尿病や肥満時には不安傷害やうつ病、さらには認知症になりやすいということを示す論文を多く出すことができました。

現在では糖尿病がそうした神経疾患に関与していることを疑う医師や研究者はほとんどいなくなりました。

このように、肥満や糖尿病は末梢組織の異常をひき起こすだけでなく、脳の機能にも影響してくることがわかってきました。私たちの研究室では、肥満や糖尿病が脳機能をどう変化させるか、逆に脳機能の変化が末梢組織にどのような影響を及ぼすのかなどについての実験を繰り返し、これまでに、多くの新しい知見を見出しています。

また、咳の分野では、風邪や喘息とは違う長引く咳である「アトピー咳嗽(がいそう)」などの慢性咳嗽の研究を続けています。

慢性咳嗽にはその原因が判明していないものが多く、咳止め薬が効きにくいという特徴があります。そのため、その咳の発生のしくみ治療薬の探索なども精力的に行っています。

このように、学生たちも教授たちと一緒に、「慢性の咳」や「糖尿病と高次脳機能障害」といった研究の原因解明や、薬による治療法の確立などを進めています。

 

ファーマシストライフ編集部
(取材・文/三浦天紗子、写真/土佐麻理子)

 

> 次回「専門薬剤師認定団体の増加の不思議とインターン制の義務化を !?」へ続く

 


第1回 (2017/01/30公開)
薬剤師は、患者ファーストの究極のサービス業 !?

第2回 (2017/02/06公開)
薬学の知識だけでなく解読力も、薬剤師に求められる !?

第3回 (2017/02/13公開)
専門薬剤師認定団体の増加の不思議とインターン制の義務化を !?

第4回 (2017/02/20公開)
チーム医療に「協関力」が不可欠 !?

第5回 (2017/02/27公開予定)
知識・経験の豊富な薬剤師が常駐する「健康サポート薬局」の必要性 !?

亀井淳三(かめい・じゅんぞう)
1956年、香川県生まれ。'83年星薬科大学大学院博士後期課程修了。2002年より、星薬科大学教授。厚生労働省医道審議会専門委員、厚生労働省薬剤師試験委員会委員など学外委員も多く歴任。研究テーマとして、1)慢性咳嗽の発症機序および病因の解明2)糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームに伴う中枢および末梢神経系の機能変化とその分子機構の解明 を挙げている。280報以上の原著論文を発表している他、Principle Pharmacotherapy(ネオメディカル)、『治験薬学―治験のプロセスとスタッフの役割と責任』(南江堂)など著書も多数。

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